Japan Timesの紙面座談会
先日英字新聞The Japan Times主催の紙面座談会「理工系英語教育をめぐる諸問題」のモデレーターを務めてきました。産業界(現在英語教育に携わる元大企業のエンジニア)から2名、教育界(大学教授)から2名の計4名で理工系英語の現状とその問題点について議論しましたが、本質的な問題点はビジネスもエンジニアリングの世界もほとんど変わらないという印象を持ちました。
今回の議論を簡単にまとめてしまいますとその問題点は以下のようになります。
- 産業界と教育界の交流がほとんどない為、技術の現場で求められている英語力・コミュニケーション力のニーズがうまく吸い上げられていない
- そのニーズに沿った、(継続的に)測定可能な指標がない
- 指標がないのでカリキュラムが作れない
- カリキュラムがないので教える側は自分が好きなようにやらざるを得ない
- 教える側が自分が好きなように教える為、教える内容がバラバラになり教え方等の蓄積が起きない
こんなところでしょうか。もちろん例えカリキュラムを作ってもきちんと教えられる人材がいるのか等の細かい問題点はありますが、まずはきちんと必要とされる人材像のニーズを把握することがこの負の連鎖を解く鍵になるという内容でした。
またTOEIC等のテストについては、TOEICは語彙力を測る指標として考えられるべきであり、それが英語の全ての中心に添えられていること自体が問題である。テストでもっとも大切なのが、取った点数でどの程度のコミュニケーション力を担保出来るのか(これを”Can Do Statement”と呼ぶ)であり、TOEICにも”Can Do Statement”はあるが、これは全くリンクしていない。例えば730-860点の人は:
どんな状況でも適切なコミュニケーションが出来る素地を備えている
通常会話は完全に理解でき、応答も速い。話題が特定分野にわたっても、対応できる力を持っている。業務上も大きな支障はない。際格差と流暢さに個人差があり、文法・構文上の誤りが見受けられる場合もあるが、意思疎通も妨げるほどではない。
とあるが、これがまったく当てにならないということが問題とのことでした。TOEICのCan Do Statementにつきましてはこちらをご覧ください。
興味深かったのはビジネスパーソンよりもエンジニアの方がより英語の問題は切実であるということ。日本人ビジネスパーソンが転勤で海外に赴任し、現地のトップに立ったとしても基本的なオペレーションは現地人任せの場合が多く、リーダーシップを取って現地の人間と深く溶け込むようなことはしません。現地社員を本格的にマネージする大変さについては以前「英語仕事人に聞く」という対談企画でサンリオのアメリカ・ヨーロッパ法人COOの鳩山玲人さんの話が大変印象的でした。そういったビジネスパーソンに比べ近年のグローバル化・現地化の影響で最近のエンジニアは設計・開発段階から外国人とやり取りすることが多く、顧客との交渉を含めて求められる英語力・コミュニケーション力がかつてないほど高まっているといいます。このままの状態でいくと国力低下の問題になりかねないというのが4人の一致したご意見でした。
この座談会の内容は9月下旬(恐らく連休明け)にThe Japan Timesの紙面上に見開き2ページで掲載されます。記事はこれから私が書きます。5時間以上の討論をどう2ページ以内にまとめるか、頭が痛いです。
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