Discussionについて考える

Discussionについて考える


discussion.jpg先日、外資系企業に勤める友人より「(会社で)英語のミーティングがあって、久々に参加したが、言っていることがなかなか聞き取れない。どうも気持ち自体が萎縮してしまって、あまりよろしくない。 どうしたら良いか」という相談を受けました。最近、こういう相談をよく受けます。今までいろいろな形で日本語と英語によるコミュニケーション方法の違いについて書いてきましたが、今回はミーティング・Discussion方法の違いについて考えていきたいと思います。

まず第一に感じるのがDiscussionとDebateを混同してしまって考えている方が非常に多いことです。Debateとはお互いあるポジション(立場)を取り、そのポジションを変えることなく戦い、どちらの主張がより説得力があるか聴衆に判断させるもので、政治家などがテレビなどで行います。普通の日本人的感覚では相手の弱点をズバズバと指摘するようなDebateをやりたいと思う人は少ないように感じます。そしてDiscussionもDebateの一種だからと考え、尻込みしてしまう。しかし、私はビジネススクール時代を含め、今日までDebateを一度も行ったことはありませんし、ビジネスの世界に入り英語でDebateが行われている光景を生で目撃したこともありません。

ではDiscussionとは何か。Discussionとはある問題に対してみんなで知恵を出しあい、対話を通じて解決を図ることす。これを見るとなんとなく分かった気になりそうですが、こういった問題解決方法は通常、我々日本人は行ったことがありません。

我々の大部分は何か問題にぶつかった時、インターネットや本等で何か良い解法がないかどうか調べながら、まずは一人で考え解決していこうとします。もちろん親しい友人や同僚には相談するかもしれませんが、大勢の人数で集まって、その場でDiscussionを通じて解決していくという方法は取りません。これは何度もこのブログで書きましたが日本人のコミュニケーション方法のベースとなる「相手の気持ちを大事にする」ことが関係しているように思えます。「ああでもない、こうでもない」とアイディアを出しては消し、その過程で考えをまとめていく作業は個人の頭の中や親しい友人・同僚相手には出来ても、公の場でやってしまうと考えを否定されたと相手の気分を害する可能性が高く、恐くて出来ません。全員でその場で問題解決をする方法は日本語によるコミュニケーション方法には向いていないのです。

これはミーティングを例に考えると分かりやすいと思います。日本人同士によるミーティングは「問題解決の場」ではなく、「合意内容の確認と報告の場」であります。問題意識のある個人がまず一人で考え、少しずつ周りを抱き込みながら合意を取り付けていき、ある程度賛同者が集まった段階で関係者全員を集めその合意内容の確認を行います。これに対し、欧米人によるミーティングはミーティング自体が「問題解決の場」であり、基本的には根回しはせず、関係者が全員集まってその場で意見をぶつけながら議題を解決しく方法を取ります。

日本語でやったことがなく、やったとしたらとてつもなくuncomfortableなやり方を英語でやれといわれたら戸惑って当然です。そう考えると我々日本人にとって英語によるDiscussionに参加すると2重にも3重にも戸惑いを覚える理由が見えてきます。英語力に問題がある上、コミュニケーション方法の違い(相手の気持ちより議題の理解を優先する)や問題解決方法の違い(根回しではなくその場でコミュニケーションを通じた解決)にも対処しなければならない。例え英語力の問題が解決できたとしても、英語力以上に乗り越えなければならない大きな精神的な壁が立ちはだかります。

先日私の「欧米流ミーティング・Discussionでの貢献法」セミナーに参加され、英語による問題解決セッションを初めて体験したある大手総合商社の社員は「欧米では本当にこんな非効率のやり方でミーティングを行っているのか」と「非効率」という言葉で表していたことが大変印象的でした。この感じ方こそ、欧米と日本の価値観の違いを明確に表しています。

Wade Davisという著名な人類学者が「言語というのは単純に語彙や文法の集合体ではない。言語とはそれを使用する民族の精神・文化(・価値観の全て)を表す鏡である」とTED Conferenceで語っていました(意訳ですが・笑)。つまり、英語を使うときは文化・価値観を全て含めた欧米流のマインドセットで使用しなければなりません。もちろん、日本語は日本流のマインドセットで使われるのと全く同じです。この2つを決して混同(英語を日本人のマインドセットをしよう・日本語を欧米人のマインドセットでしよう)してはならないということです。

これは12歳でアメリカから帰国し、「彼は外人だから」といわれるのが嫌で嫌でたまらず、アメリカで培った価値観や振る舞いを封印し、一生懸命日本社会に溶け込もうと努力した実体験からも感じます。28歳でアメリカにMBA留学した時に今度は逆カルチャーショックでうまく切り替えられず、マインドの切り替えの大切さを実感しました。

次回、英語によるDiscussionに参加する際のマインドの切り替え方法について具体的に説明したいと思いますが、How toの前にこういった本質的な違いについて理解することが大切であると思います。


Posted by Masafumi Otsuka

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