相手をengageしながら考える

相手をengageしながら考える


scent_marketing.jpg途中までいってからいい淀んだり、一度言っておいてから、「何か違う」と撤回してみたり、同じことをちょっとづつ言葉を変えてぐるぐる回したり・・・そういう語り方は「本当の自分が思っていることを言おうとじたばたしている人の特徴です。すらすらと立て板に水を流すように語られる意見は、まず「他人の受け売り」と判じて過ちません。断定的であるということの困った点は、「おとしどころ」を探って対話することができないということです。主張するだけで妥協できないのは、それが自分の意見ではないからです。
–日本辺境論(内田 樹著)

「日本人には意見がない」という人が結構います。しかし私はそうは思わない。日本語という言語がそういうスタイルに適していないのではないか、そういったコミュニケーション方法を取らない、求められない言語なのではないかとずっと思い、このブログを通して問いかけてきました。

冒頭の引用、最近数人の友人から勧められ読んだ本からの抜粋。まさに「我が意を得たり!」と感じました。これはまだオフィシャルにリリースしていませんが、最近弊社で行っているSkype、電話によるプライベートレッスンを先生側で録音し、終了後にそれを私が聞き、直接「英語によるコミュニケーションの取り方」を後日コーチングすることを実験的に行っています。

はじめて1ヶ月程度経ちますが、いろいろな方の実際のレッスンを聞かせていただき、面白いことに気づきました。「ああでもないこうでもない」と口に出しながら考えていく「コミュニケーションの取り方」を全くやっていない。そこでもしかして、こういったコミュニケーションの取り方は「頭が悪い人がやること」だと無意識に思ってしまっているのではないか感じました。

レッスンは全く準備なしでその場で与えられたビジネス上の興味深いトピックが与えられ、意見を求められます。いきなり聞かれても余程その分野に詳しかったり、頭の回転が速くない限りすぐにまとまった意見など出てくるはずがない。そんなの私も出来ない。しかし日本人マインドセットとして、それをきちんと出来なければならないと無意識に思ってしまう。そして固まってしまう。

日本語はそういった言語かもしれませんが、英語は違います。まるで正反対でその場で「ああでもないこうでもない」と声に出して、相手にも質問、Engageしながら考えをまとめていく”Communicationの取り方”で行う言語です。ある程度語彙力、リスニング力(TOEIC 500点・英検準2級で十分)をつけたあとはこちらのスキルをつけなければなりません。そしてこちらのスキルのほうが努力でカバーできる前者に比べ遥かに難しい。

例えばScent Marketingというトピックでのレッスン。これは企業が匂いを使って商売に結び付けている事例について話すレッスンで、冒頭に
“What do you think is the most popular scent in the world?”と聞かれます。

こんなのいきなり聞かれても困ってしまう。まともに答えようとすると固まってしまいます。そこで
“Can I change the question to which scent I like the most and start from there?”みたいな質問に摩り替えて
“I love the smell of fresh coffee in the morning”とか”I sometimes step into a bakery because of the yummy scent I smell when I pass-by.”等からはじめ、
“What is your favorite scent?”と相手を抱きこんで話を進めていきます。すると
“Freshly baked chocolate chip cookie. The ones just came out of the oven.”みたいな答えが出てきて。”I like that too!”と盛り上がります。

そこから「日本にはうなぎや焼肉をわざと匂いを出すように作るショーケースみたいのがお店の入り口にあるという話」も展開できます。しかし大部分の人がこうしたことを思いついても英語が出てこない。完璧な文で答えなければいけないという日本式マインドセットが入ってくるからです。そして結局流してしまう。

以前記事で書きましたが、時代はGlo-bishです。シンプルに、”I have another one!”とか”Same here in Japan!”といって、”Do you like eel / yakitori?”から入っていけば良いのです。すべてを一度に説明するのはCommunicationではなく、ただの主張です。

今回、こういったスタイルのレッスンを取り入れて非常に勉強になるとともに、Active listeningに合わせて、会話の展開力、質問の仕方など、より本質的な意味でCommunicationの取り方を伝えていきたい、いかなければならないと心から思いました。

ちなみに「世界で最も人気のある匂いは何か?」これについてはレッスンを受けていただかないと教えられません(笑)。簡単にインターネットで検索できそうですけどね!


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Sep 05
    2010

    新良 幸太郎

    大塚さん
    海外と電話会議をやるときに良く陥る罠です。
    「英語でやるのに、そんな準備で良いのか。120%の準備が必要だろう。」
    いや、いいんです。というかそのやや入り口レベルでわいわいやって方向性を探していくのが、大事なんです。
    そういうことですよね。

    Reply
    Sep 06
    2010

    Masafumi Otsuka

    仰るとおり!会議を通してものごとを決めていくのに120%の準備というのはおかしい。変な話、決めなければいけないことは分かっているのだからその場で意見をぶつけ合いながら解決していったほうが余程自然ですよね。データが必要なら次回までにそろえればよいことだし、どうせ準備した内容など使われないケースが多い。「答えられない質問がないように準備をする」とはいかにも日本人特有のマインドセットで、もちろん素晴らしいと思いますが、時間が勿体ない。、あた「こういう風に説得しようという120%の準備」であればそれは会議ではなく主張であり、その場で決めるFlexibilityを失わせ、相手にしてみれば「事前に決まっているんだったらe-mailで送ってよ」ということになります。
    何について話し合う会議なのか。自分がそこにいる意義は何か。それさえ分かっていれば準備などほとんどいらないと思います!

    Reply
    Sep 08
    2010

    nao

    アメリカ式のワイガヤ、100%事前用意しないを、つい日本人ともやってしまおうとするときがあって、それはそれで非常にヒンシュクを買います・・・。TPO難しいわ。
    ***
    ところで宇都宮のキセキ、ボリュームあるのでまだ少ししか読んでませんが、お疲れ様でした!参加した方の「ためになった!」がよく伝わってきました。大塚さんのやろうとされていることがかなり具体化されてきましたね。今後がますます楽しみです。
    辺境論ほか、内田樹にすっかりはまってます。アメリカ論も面白かったですよ。

    Reply
    Sep 09
    2010

    Masafumi Otsuka

    ちょっと例が悪かったですが、その場でいきなり問題解決セッションを始めてしまうやりかたと、ある程度方向性ややることを決まってながらもきちんと事前に用意しないといけないやり方。お勧めいただいた「日本辺境論」に書いてあった「日本式コミュニケーションの特徴はメッセージのコンテンツの当否よりもどちらが『上位者』かの決定をあらゆる優先させる」ことや「『何が正しいのか』というといよりも『正しいことを言いそうな人間』とそうでない人間の違いはどうやって見分けるかについて客観的基準がない。だから結局は『不自然なほどに態度の大きい人間の』の言うことに傾聴される」とかいてあったのが非常に面白かったです。宇都宮は楽しかったですよ!ビジネスパーソン相手の効果測定をほとんどビジネスパーソンのいない受講者で行った無理はありましたが、それでも見事に応えてくれました(笑)。日本人のマインドの部分のグローバル化でどこのスイッチを押せばよいのか分かった気がします。

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