アルクT-SSTを受ける
昨年冬にTOEFL(R)を受験して以来、もう二度とテストは受けまいと固く誓ったはずが、ある企業の研修プログラムを作成する課程で「研修前と研修後の成果を図る最適なテストも探して欲しい」との依頼があり、その候補としてアルク社が運営するT-SST(Telephone Standard Speaking Test)を実際に受けてみました。
以前Phone Passという同じように電話で受ける試験を受け、人工知能で採点する技術力に感心しましたが(電話越しのコンピューターに向かって話し、終了と同時に点数が出ます)、今回は電話での受け答えが録音され、採点官3名が後日採点するようです。
ほとんどの企業はTOEIC(R)の点数を英語力の参考とし利用していますが、TOEIC(R)はどれだけ単語・表現を知っているか、一回でどれだけの英語を聞き取れるかを測ることが出来ますが会話力は測ることが出来ません。実際、私の周りでも900点以上の高得点者でも会話がダメな人もいますし、600点未満でも堂々としている人もいます。
T-SSTはその会話力を測るために特化した試験であり、試験時間も10分から15分と短く、自宅の電話で深夜でも受験できる為、気軽に受験できます。
「一人で仕事をするのとチームで仕事をするのとどちらがいいですか?」「あなたは節約かですか?その理由も述べてください」等T-SSTでは1,000問を超えるデータベースからランダムに10問が出題されます。各設問ごと日本語と英語で質問が交互に流れ、考える時間なしに45秒間で答えます。発音、語彙だけでなく、説明、理由付けなどについても評価され、結果は9段階で評価されます。9段階の評価につきましてはこちらをご覧下さい。
このテスト、TOEFL(R)iBTテストのSpeaking Sectionの1・2問目(Independent Section)とほぼ同じであるという印象を受けました。MANABI.stでもTOEFL(R)iBT Speakingコースを受講されている方は多く、このセクションで苦労されている方が多いと思います。「日本人にとってどうしてこういう問題に答えるのが難しいのか?」前置きが長くなってしまいましたが今回はそれについて考えたいと思います。
T-SSTを受験後、「これらの質問、もしかしたら英語の問題ではなく、日本語で出題しても答えに詰まってしまうのではないか?」と素朴な疑問を持ちました。試しにうちの技術責任者のTakaにいくつかの例題を出し、日本語に答えてもらいました。まずはじめに「一人で仕事をするのとチームで仕事をするのとどちらがいいですか?」と聞くと「一人の方がいい!理由は楽だから・・・。・・・・。。。以上!」。第2問、「10億円が突然あたったら、何に使いますか?」答え「まず数億円の家を買う。ずっと家が欲しいと思っていたから。後は。。。欲しいものないな~。う~ん。。。・・・以上!」
Takaの考えている姿をみてあることに気づきました。自分自身の問題(Personal Matter)として処理しようとしてしまった為、深みにはまってしまっていたことです。Personal Matterとして質問を処理しようと思うと、考えるプロセスの中で「あれはどうか?いや、違うな。これはどうか、う~んちょっと違うな」とどんどん深みにはまってしまい、時間が経過。その為プレッシャーに耐え切れず、諦めてしまうという負のスパイラルにはまってしまってしまいます。
西洋人にこのような質問をテストとして(場合によってはテストでない場合も)出題した場合、その大部分はPersonal Matterとしては扱いません。個人とは切り離し、いかに説得力のあるスピーチを作るかに神経を注ぎます。これは中学・高校のディベート授業で自分は本当にどう思うかは関係なく、相反するトピックに関し勝手に立場を決められ、演じきる訓練を受けていることでも分かります。
例えば「一人で仕事をするのとチームで仕事をするのとどちらがいいですか?」と聞いた場合、まず自分にとってどちらがいいのかではなく、どちらの方が答えやすそうかという観点に立ってポジションを選びます。「一人で仕事をするほうがよい」と選んだ場合、一般的なそのメリットについて考えます。誰しもメリットの一つや二つは思いつくでしょう。例えばメリットとして瞬間的に思いつくのは「時間に束縛されない、自分のペースで仕事が出来る。」等です。
仮に一つしか思いつかなかったとしましょう。そうしたら次に一般的なデメリットについて考えます。これも一つや二つは思いつくでしょう。例えば
- 役割分担が出来ない
- 精神的に孤独である
等が考えられます。このデメリットを逆に利用して、「そう言う人はいるかと思いますが、自分はなんでも自分でやらなければ気のすまない性格」「逆に人が絡むと変に気を使ってしまい疲れる」等こじづけて、「結局一人の方が楽であり、。。。」と結論付ければいいのです。
「自分はなんでも自分でやらなければ気のすまない性格」「逆に人が絡むと変に気を使ってしまい疲れる」等日本人としてはそう思っていても言いづらいことだと思います。ただこれはあくまでも個人的にどう思っているのかではなく、説得力のあるスピーチを作ると割り切ってしまえば言った者が勝ちです。
これをTakaに説明したところ、「結局やつらは嘘つきじゃん!信用できん!!」とのことでした(笑)。この割りきりが出来るかどうかも日本と欧米人のマインドセットの違いの一つかもしれません。
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