セミナー@DHC

セミナー@DHC


DHC Seminar.jpg日曜日にDHCさん主催で「欧米流コミュニケーションを学ぶ」というセミナーを行いました。そう、あの化粧品販売のDHCさんですが、元は翻訳会社で、Daigaku Honyaku Centerの頭文字をとってDHCにされたという事実は意外と知られていません(笑)。いまでもDHCの文化事業部は翻訳者養成(通信教育+セミナー)ではとても有名です。6年位前に一緒に仕事をした関係で今回セミナーをやることになりました。

今回も伝えたいメッセージを「英語力≠コミュニケーション力」の一点に絞り、セミナー構想を練りました。ただ今回は私がいつもやっているセミナーとは大分様相が異なります。いつもは8名限定で、事前課題を与え、より密なDiscussion形式でみっちり3時間かけて身近な問題解決を行い、「英語力≠コミュニケーション力」を体感していただく方式をとっていましたが、今回は人数が20名を超え、しかも事前課題は出さず、2時間と時間も短い。そんな中でどのように伝えていくか、前日ギリギリまで悩みました。その為、e-mailがほとんど放置状態となってしまい、多くの方にご迷惑をおかけしました。ごめんなさい。。。

セミナー設計をよりチャレンジングにしたのが、セミナーのタイトル「欧米流コミュニケーション術を学ぶ」の前に、「中学英語でもこれだけできる!」というフレーズが入れられたこと。これがないとレベルが高いセミナーという印象を与える為、人が集まらないだろうと。このフレーズを入れてしまった為にどのような層がくるか全く読めなく、これが最後まで悩んだ一番の要因となりました。

そういった制約の中、いかにシンプルにメッセージを伝えていくか。今後、50名でも100名でも伝えきれるセミナーを作っていくためにも、とても良い挑戦となりました。

冒頭で「どこを目標に英語を学んでいるのか。」を聞いたところ、

  • 仕事で使う・今後使って仕事をしたいが3割
  • 海外旅行でより現地の人とよりコミュニケーションを取りたいが5割
  • その他2割

と目標はばらばらでしたが、外国人とより深くコミュニケーションが出来るようになりたいという目標は一致していました。

さて実際のセミナーですが、

  1. 冒頭でセミナーの目標・学んでいただきたいことは「英語力≠コミュニケーション力」を感じ取ることの一点のみであること。そしてまず
  2. 先日記事で紹介しましたActive ListeningとPassive Listeningの2種類の実際の会話をテープで聞かせ、その後その会話のScriptを配ることにより耳と目で違いを体感させ、
  3. ペアを組んでもらい、片方に簡単なストーリーを配り、相手に英語で説明させる。相手はActive Listeningにより話を理解するActivityを行う
  4. 聞き手一人を指し、どんな話を聞いたのか、今度は私がActive Listeningによりそれを聞き出す例を見せ
  5. 最後にストーリーを使って全員でDiscussionを行う

という形式で行いました。正直Discussionの時間はあまり残らないだろうと思っていましたが、1~4を1時間15分で終えてしまい、たっぷり45分Discussionを行うことができました。しかもDiscussionでは全員きちんと英語で発言をしていただき、「英語力≠コミュニケーション力」というメッセージと同時に我々が普段意識していない日本語によるコミュニケーション方法:

  • 話の内容の理解より相手の気持ちを大切にする
  • 相手の話は黙って聞く
  • 考えはまとめてから話す
  • 質問のある場合はまず自分で調べてから聞く

を認識していただき、このマインドセットで大部分の日本人は英語を使用している現実を感じ取っていただきました。そして英語を使用する際は英語のマインドセットを使わなければならず、これが日本語とは正反対のものである為、英語力以前にわれわれは戸惑ってしまうこともあわせて体感していただきました。

今回使った簡単なストーリーは以下の通りです。

1964年にニューヨークである殺人事件が起きました。ある若い女性がアパートが立ち並ぶ空き地で38人の目撃者に見守られながら殺されたという事件です。38人は女性が35分にわたって3回もナイフで刺されたのを見ていたにも係わらず、誰も警察に連絡しなかった。この事実を知った記者は「なんて社会は冷たくなったのだ」と嘆きました。

ワイドショーネタで日本語で言ってしまえばなんてことのない話ですが、英語で実際に伝えようとすると難しく感じます。これがコミュニケーションなんですよね。しかしどうしても伝えたいことがあればどんな英語力であれ、必ず伝えることができます。そしてコミュニケーションは双方向なので聞き手も話し手と同じくらい責任がある。日本語はPassive Listening手法で使用される言語ですので話し手が内容を伝えられたかどうかの責任を一手に引き受けているのと全く違います。だからこそActive Listeningが大事になり、その為、以下の表現集を聞き手に渡しておきました。

  1. What do you mean by “x?”
  2. Wait! Can you please go over that last point again?
  3. This is what I understand…. but I got lost from there. What am I missing?
  4. This is what I hear you saying…am I correct?

これを使いながら100%内容を理解できるように努めなければならないと何度も実演しました。そしてDiscussionでは

  • 1964年のニューヨークではなく現在の東京でも同じ事件は起こりうるのか
  • 本当に社会が冷たくなっただけが理由か

について考えました。「東京のOBACHANは冷たいが大阪のOBACHANだったら絶対助けたはずだ」と「オバちゃん」を”OBACHAN”とそのまま日本語で話していたツワモノもいらっしゃいました。これには私も大笑いしてしました。

今までは8名限定であったことと、ビジネスパーソンが中心だったので、全員私を見ていて大体誰が何を考えているか想像できるのですが、20名を超えると大分様相が異なります。目が合うと当てられてしまうと思ったのか、私とのEye contactをずっと避けていた人が6名程度(しっかりと数えていましたよ・笑)いました。これは初体験で少し戸惑いました。何か改善の余地がありそうです。

反省点として、前半に私の緊張が伝わったのか、少し参加者の雰囲気が硬かった事。あとはペアのActivity(ワイドショーネタ)は一つしか用意していなかった為、役割を交代は行えず、Active Speaking、Active Listeningの一方しか体験させられなかったこと。セミナー設計がギリギリまで固まらなかった為にスムーズに話せなかった箇所がいくつかあったこと。Discussion中、数名うまく意見を引き出してあげられなかったこと。最後にQ&Aの時間と取れなかったこと。改善の余地が沢山ありそうです。でも見えたものが非常に多く、次に向けて光が見えました。次回はもっと良いものが出来そうです。今回は全てビデオに撮りましたので後で一人反省会をやりたいと思います(笑)。

私のセミナーの前にカリスマ英会話講師の川本佐奈恵さんが「中学英語でもこれだけ出来る!やり直し英語」というセミナーを行い、大変和気藹々の雰囲気の中で行われていました。そんな中、しっかりと川本流英会話勉強法をしっかり伝えていたやり方が非常に参考になりました。本当に川本さんは天使のような女性で見ているだけで元気が出てしまうんですね。私もいつも元気付けられています。今後もう少し彼女とカリキュラムをすり合わせ、彼女のセッションで英語を勉強する楽しさ、勉強法を学ぶと同時に、Warm upをしてもらい、私のところでDiscussionを行うというお互いの良いところをうまく使いながらさらに良いものが作れないか考えてみたいです。彼女も今回のセミナーについてブログに書いたようです。是非ご覧ください。


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Sep 30
    2009

    kumoga

    先日のセミナーに参加しました。その節は有難うございましたkumogaです。
    私はとても楽しみました。最後はもう少しこのままみんなで話して居たいなと思うほど。
    レベルとしてはどうでしょう、大体の話は分かります。皆さんの意見を聞くのはとても刺激になり参考になりました。けれど自分が話すとなると、緊張とBeginnerな英語で
    しどろもどろ。ここが悲しいですが。対象を絞っていないこういうDiscussionの場合一人でもNativeな方がいらっしゃるとなかなか自分の意見を話すのは慣れるまで大変だとおもわれます。こういう機会は英語がかなり話せるレベルにならないと普通は参加出来ないと思うので、今回の様に初心者にも参加できた事は貴重だと思います。そして英語に対する構え方を学ぶのにとても大きいと思いました。全て理解して考えをまとめてからでないと話せない日本人気質を壊すには初心者のうちにこうした形の経験をするのは大切なのではと思うからです。DebateとDiscussionの違いを体感するのは英語を学び始める時にはなかなか出来ない経験です。上級者の先生でいらっしゃるので参考にならないかもしれませんが、きっと先生が思ってられる以上に今回参加した方は刺激を受けていると思います。

    Reply
    Oct 01
    2009

    Masafumi Otsuka

    kumogaさん
    コメント、ありがとうございます。また、kumogaさんのブログにもセミナー詳細と感想を書いていただき、とても感謝しています。本当に今回に限っては全く感触が掴めなかったので、響くものがあったと聞き、とてもうれしく思います。
    私はDiscussionにBeginnerもAdvancedもないと思うんですよ。誰でも感情移入できる問題であれば言いたいことは必ずあると思いますし、言いたい事があれば必死に伝えようとすれば必ず伝わると思います。ビジネスパーソンはビジネスに関連したトピックを選んでいるだけで、いつも英語力はバラバラです。実際にDiscussionがヒートアップしてくると英語がうまい下手が重要ではなく、伝えたい内容のほうが遥かに重要になります。そうすると英語をツールとして使っている感が出てきます。結局どんなレベルであれ、こうしたトレーニングを積んでいかないとコミュニケーション力は上がっていかないと思います。
    kumogaさんが仰るとおり、初心者こそ英語力に特に頼ろうとし、ここまで覚えなければ次のステップにいけないと勝手に決めてしまう。単語・表現をある程度覚える→英会話を習う→ビジネス英語を学ぶ→Discussionを体験するという誤ったステップを踏もうとするのです。Discussionをやりながらレベルをあげていこうとする発想が我々英語教育者にはない為、本当にみんな損をしていると思います。Discussionこそ初心者は体験すべきだと私は思っており、それには誤ったmind-setを壊していかなければならない。どうシンプルに英語力に頼ろうとする抵抗感を取り除き、英語を話していることを忘れさせるくらい話題にのめりこむ雰囲気を作っていくかを私は常々考えています。よく夜中の3時にパッといいアイディアが思いついて、メモとして残したつもりが朝おきたら全く読めなかったということがしょっちゅうあります(笑)。
    今回は本当に私自身やって良かったと心から思っています。kumogaさんのブログと今回のコメントを読んで大変勇気付けられました。ありがとうございました。

    Reply
    Oct 01
    2009

    さとか

    大塚先生
    先日のセミナー参加させて頂きましたさとかです。
    本当にありがとうございました。
    とても楽しくかつ苦しく ← もちろん良い意味で
    (笑 (^^ゞ )刺激的なセミナーでした。
    セミナーの感触がつかめないとの記事を読み
    とても恥ずかしいのですが
    自分の感想を伝えさせて頂いた方がいいのかと思い
    投稿させて頂いています。
    初心者の私にとっては
    大塚先生が話された内容と最初に聞いた二人の電話でのやりとりは
    かなりレベルの高いものでした。
    まずマザーテレサのテレサが聞き取れずお母さんがどうしたって???
    っていう状態からの聞き取りで断片的な理解でした。
    セミナーが先へ進んでも聞き取れない・理解出来ない部分も色々ありました。
    分からないことは分からないと言わなくてはと思いながらも
    口を挟む勇気がなかなか出せませんでした。
    ただただ必死で会話の内容についていこうとしていました。
    英語で会話するときにcomfortableでいられる時は
    日本語のコミュニケーションスタイルでやっている時。
    自分がuncomfortableであると感じた時に初めて
    英語圏のコミュニケーションスタイルでの参加が出来ているということ。
    そしてdiscussionは変なことを言った人を責める為にあるのではなく
    一つひとつ小さな意見を出し合い修正し合いながら
    最終目標にに向かってみんなで作りあげていくもの。
    そんな風に理解しやっと最後にfireとだけ言うことが出来ました。
    今までとは違う視点からみた
    英語を使ったコミュニケーションのとり方でした。
    英語力を上げようとばかり考え自分がいかに初心者の罠に
    ひっかかっていたかもわかりました。
    kumogaさんが仰っているように
    初心者が普通は参加できないようなdiscussionに
    参加でき感激でした。
    ありがとうございました。
    せっかく色々教えて頂いたのに
    大塚先生の参考になるようなことをfeedback出来ないことが
    とても心苦しいのですが
    とりあえず感想とお礼をと思いました。
    またいつか
    佐奈恵先生とお二人でセミナーを開催して下さい。
    是非是非 参加させて頂きたいです。
     

    Reply
    Oct 01
    2009

    Masafumi Otsuka

    さとかさん
    “fire!”覚えていますよ!火事だと叫べば住人が出てきて助かったのではないかと。非常にCreativeな発言でとても良かったです。きちんと議題に沿った発言でしたし、最後のほうで自分から入るのは、その前の内容を全て理解できていることが前提となるので相当勇気が必要だったと思います。Discussionを初体験する人は誰しも自分の発言は場違いなものと思ってしまうんですよね。でもこれが全くの勘違い。さとかさんが聞いていて場違いと思った発言ありましたでしょうか。なかったと思います。話題に喰らいついていっている以上、絶対にきちんと議題に沿った発言を皆さんしているんですよね。uncomfortableを楽しんでいただいたのであれば、私の目的は達成しました(笑)。
    Mother Teresaですが試験を受けた私の母はMother Lisaと聞こえたらしく、たまたま試験管の名前がLisaだったので、「どうして自分のお母さんについて話しているんだろう」と思ったらしいです。アメリカに10年も住んでみても実は変わりません(笑)。
    こうしてきちんとFeedbackをいただけると本当にうれしいです。実はビデオを見ながら一人反省会をしていまして、皆様の意見を合わせるといろいろなことが分かってきました。次回も同様チャレンジングbut楽しいテーマを用意して待っていますので、是非uncomfortableを楽しみにいらしてくださいね。
    英語力をつけるためだけに英語を勉強しないで、こういった実践の中で身につく英語力のほうが遥かに役に立つと個人的に思っています。そういった罠に気づいていただけただけでもやって良かったと心から思います。頑張って!

    Reply
    Oct 02
    2009

    川本佐奈恵

    大塚さん、大塚さんのメッセージはきちんと皆さんのところに届いていましたね。反応が見てとれなかったのは日本人のシャイさと、今までにはない視点から英語へアプローチすることの戸惑いでしょう。うちのスクールへも来てくださいましたが、ネイティヴのレッスンよりもおもしろい!と絶賛でしたよ。
    反省会、付き合いますよ~。そのうちオフィスにお邪魔します。あの録音された声、お母さんだったのですか???お若い!!ま、もっとも大塚氏が若いからお母さんもお若くて当然か!

    Reply
    Oct 02
    2009

    Masafumi Otsuka

    佐奈恵さん ありがとうございます。いつもはその場で反応が分かるので、今回はいろいろな意味で発見が沢山ありました。恥ずかしくてビデオは人には見せられませんので一人反省会をやります。テープは母のものではないですよ。母のものは適度にClarifying questionsを聞いているのですが、聞いていながら理解できていないパターンでして、次のステップで使おうと思います。内緒でお願いします(笑)。是非近いうちにランチしましょう!

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