世界基準のCommunication Style

世界基準のCommunication Style


melting world.jpg「中国人とビジネスをしているんだけど時々何を言っているのかさっぱり分からない。本当に参っちゃうよ。」

最近こういったことをいう欧米人が増えているように感じます。もちろん相手は中国人に限ったことではありません。

先日(11/29)の日経新聞での「主要7カ国(G7)の存在感が低下している。世界のGDPに占めるG7の割合は1980年代の50%超から2010年年以降は30%台半ばに落ち込む。変わって2014年には世界の新興国全体では世界GDPに占める割合が50%を超えるだろうと国際通貨基金(IMF)は予想している。」いう記事を読み、私の中でちょっとした気づきがありました。

英語の性質がここ数年で劇的に変わってきているのではないかと。

今まで「欧米流コミュニケーション術」とか「日本式コミュニケーション方法」などの言葉をよく使ってきましたが、この「欧米流」という表現がどうもいままでしっくりきていませんでした。本当は英語流コミュニケーション術という使い方をしたかったのですが、セミナーで「日本語は日本人独特のコミュニケーション方法で使用されるのと同様、英語は欧米人独特のコミュニケーション方法で使用される」と対比で説明したかったのであえて『欧米人』という言葉を使ってきましたが前出の2つの点が線となり、この説明の仕方がoutdated (時代遅れ)になっていたのではないかと感じ始めました。

英語が国際言語化する過程で、その性質が劇的に変わってきています。アメリカ・EU内の消費が世界を牽引していった時代では、英語を使う際、欧米人の価値観をしっかり理解し、コミュニケーションスタイルやマネージメントスタイルも欧米式に合わせてきていました。しかし、欧米の影響力が低下し、新興国の影響力益々強まる中での「英語という国際言語」を考えるとどうも違った流れが見えてきます。

今後は英語は「欧米流」ではなく、「世界基準」のコミュニケーション方法で使用されてくるようになります。知識、常識や価値観がバラバラの民族同士で英語という国際言語を使うとなると、非常に高いコミュニケーション力が必要になります。「それくらい分かってくれよ」ということが益々通じなくなっていくわけです。いかに裸でオープンなコミュニケーションスタイルを身につけられるか。いかにシンプルに正確に自分の考えを伝えられるか。これが今後は鍵になってくるように思えます。ベースが欧米基準から世界基準に変わっていく過程で欧米人も自分のコミュニケーション方法が国外では通用しなくなる現実を頻繁に体験するでしょう。

困ったことにこの「世界基準のコミュニケーション方法」は「日本式コミュニケーション方法」と正反対のスタイルを取ります。上司部下、先輩後輩の関係、敬語等、日本語という言語は非常にsophisticatedな言語であり、知識や常識も共有化されている世界でも珍しい国かもしれません(あくまでも私の感覚なので違ったら指摘してください)。一言ったら10を知るコミュニケーションスタイルを取り、あえて口に出して説明する必要がないことが多い為、いざ説明しなければならない時、どうやって説明したらいいか困ってしまう。さらに「話し相手を不快にさせてはならない」ことが「話の内容の理解する」ことよりも優先されるコミュニケーションスタイルとるため、空気をものすごく読んでしまう。日本式コミュニケーション方法は世界でもまれに見る高度なスタイルだと私は感じています。

日本人同士で日本語を使用する際はもちろんそれでいいとして、さらに国際化した英語を使用する際、このスタイルではコミュニケーションが図れません。新興国の影響力が強まる中、今後英語を母国語としない人とコミュニケーションを図る機会が益々増えていきます。どうしたら英語を日本式コミュニケーション方法で使用としている大部分の日本人に「世界基準のコミュニケーション方法」を身につけさせるか。どのように教えればよいのか。グローバル人材を育成していく上で今後この「世界基準のCommunication Style」がkey wordになってくると思います。


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Dec 06
    2009

    nao

    英語じゃなくって、コミュニケーションスタイルを学ぶっていう研修がでてきそうですね、きっともうあるかもしれませんが。
    日本語・日本式コミュニケーションは相手を批判するのに向いていないっていうのにショックをうけましたね。だから、日本、日本語ではtwitterやBlogの使われ方が英語圏と違うということがおきるのかしら。先日お勧めした本でも「批判を受け入れられる組織でないと、人間の”限定合理性”(=非合理性といわれているもの)を回避できない」と衝撃の事実。たしかに会社のMTGで、面と向って批判すると「嫌な人」になってしまう、それで陰で「根回し」。ますますFlatになる社会で日本が生き残る道は厳しいとかんじましたよ。

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    Dec 08
    2009

    Masafumi Otsuka

    仰るとおりでTwitterやBlogも日本語と英語では全く使われ方が違うな気がします。英語だといろいろなアイディアを出し合って問題解決している感があるのですが、日本語だと感想で終わってしまっているんですね。でもこれはいい悪いという問題ではなく、日本語という言語はそういう言語であるということだと思います。人類学者のWade DavisさんがTed Conferenceで「言語はそれを使用する民族の精神・文化(・価値観の全て)を表す鏡である」といっていましたが、日本語には日本人が気持ちよく共同生活する過程でこういったコミュニケーション方法が出来上がってきたと考えられこれはこれでいいし、そう大きく変える必要もないと感じています。
    ただ、英語はまったく別の言語なので違ったスタイルをとって運用しなければならない。そしてそのマインド、本当にちょっとした気づきがあると、一気にグローバル化できる人は多く、今までそういった日本人を何人も見てきました。使い分けが必要であって、日本式を世界舞台で知らずに持ち込んでいる現状が危険だと思います。

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    Dec 11
    2009

    nao

    結局「脳みそ」のアウトプットは「ことば」なんですよ。大学で言語学を学んでいた時のことを急に思い出しました。なので、言語の操り方で、脳を知ることができるということを学びました。脳科学は脳を実際に開いてみるけれど、言語学はそれをせずして、人間の脳の働きを知ることができるという学問なんです。それを、いま思い出しました。中国語や英語はだいたい同じ文法なので同じ脳みその動き、日本語と韓国はだいたい同じである・・・なんて話を思い出しました。
    大塚さん指摘事項はじわじわ広がってますよね。新しい英語研修スタイルはこの2-3年で一気に広がりそうな予感。(大前研一も。http://www.ohmae.ac.jp/ex/english/seminar/200912/index.html)

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    Dec 14
    2009

    Masafumi Otsuka

    結局いきつくところはマインドなんですね。大前さんはずっと前からいっていました。時代の要請が一番だと思いますが、待ったなしのグローバル化、今後英語研修ではなくマインドを含めたグローバル化教育に急速にシフトしていくことは間違いありません。我々教育者がそういったニーズにこたえる体制を準備できるかどうかが勝負になってくると思います。

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    Dec 22
    2009

    deziz

    初めまして。
     私はアメリカの小都市のコミュニティーカレッジで、語学に関する仕事を不定期でさせてもらっています。
     部門のディレクターからスタッフ宛一斉メールが届いた時、自分の立場がとても中途半端なので、応答するのは必要ないと持っていた件があったのですが、他のアメリカ人を初めとするスタッフは何らかの応答をしていることを知って、少し遅くはなったものの、急いで応答しました。
     その際、一部のスタッフは、感情的に文句を言う内容であっても、オープンに上司にそういったメールを出していることを聞いて驚きました。
     また、管理職間、それも下の職のスタッフから上の職のスタッフに大声でまくしたてて外まで聞こえる議論をしていた、というようなことも聞きました。
     これらは大塚さんの意図されている内容と関係ないことなのかもしれませんが、議論をオープンにしている、という意味では、私達があまり慣れていないことではないかなと思いましたので、投稿しています。
     逆の経験で、こちらに赴任してきたある日本人夫婦に、あることを止めておいた方がいい、とどうしても伝えなければいけない場面があったのですが、その後態度が変わられたようでした。自分が対日本人用コミュニケーションを踏まえていなかったために相手の方のプライドを傷つけてしまったのだろうと後になって後悔してしまいました。とても残念でした。
     私自身もアメリカ人その他の人たちの言動で傷つくことはあるのですが(公私両面で)、自分側さえ一歩踏み出して、又その人とのコミュニケーションに戻っていければ、大抵の場合、以前のようにコミュニケートできるような、少し楽天的な考えをしています。いつも簡単にいくわけではありませんが・・・。

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    Dec 23
    2009

    Masafumi Otsuka

    dezizさん はじめまして!コメントありがとうございました。私自身30名弱のアメリカ人・カナダ人をマネージしていますが、「そこまでいうか」と時には思うくらい、感情的に文句を言われるときがあります。はじめはびっくりして戸惑っていましたが、何か不満があった場合、きちんと相手の伝えたいことを理解した上で、こちらの立場をきちんと伝える。そして一緒になって解決策を見出していくというのがコミュニケーションのやり方なのではないかと最近やっと分かってきました。そして、話を聞き、きちんと議論した上で、上司は最終判断を下す。下す過程はオープンな議論をするも一度決断したらこれはorderであると従わせる。
    こんなことは日本人同士ではやりません。dezizさんの話を聞き、ますます使い分けの重要性に気づかされます。どちらがいいとか悪いとかではなく違うということ。それを日本式しか知らない日本人に世界基準を抵抗なく自然体で出来るようにさせるにはどのように教育すればよいのか。最近常に考えています。また是非こういった実際に現場でおきている話を聞かせてください。とても参考になります。

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