世界の共通語 『グロービッシュ』

世界の共通語 『グロービッシュ』


newsweek20100630.jpgかつて正当なイギリス英語から「より民主的な」アメリカ英語に移行した英語は、今度は世界の誰でもが使える新しい道具に変わろうとしている。

冒頭は6月30日付ニュースウィークの記事「英語じゃなくてGlob・ish -簡易型英語が世界の新たな共通語に-」からの引用。リーマン・ショック以降、主戦マーケットがアメリカから新興国に移る中で、国際言語化した英語。「英語の性質が変わっているのではないか」とセミナーやこのブログを通じて問いかけてきたことが、まさに分かりやすく、より深く突っ込んで書かれており、何だかずっと探し続けてきた財宝を掘り当てた気分になりました。

記事では日本IBMの元幹部が「英語が母語ではない人が話す英語の方が欧米人よりずっとうまく韓国人や日本人顧客と意思疎通を図れると気づいた」こと。そ
してこうした人たちは共通してシンプルな単語しか使わない。必要な語彙(英単語数)は1,500語で十分だと分かり、この1,500語で
Communicateする簡易型英語を「グロービッシュ」と命名したと書いてあります。


例えば”Nephew (甥)”という単語。こんな単語は知らなくて良い。”the son of my brother(きょうだいの息子)”と説明すればよい。結局いくら難しい単語、例えば”oath(誓約)”という単語を使っても、非ネイティブ圏では”What does ‘oath’ mean?”と聞かれ、結局は”words of honor(誓いの言葉)”というグロービッシュ(簡易型英語)での説明を余儀なくされる。だったらはじめからシンプルに誰でも分かる簡単な単語を使った方が、より円滑にCommunicaitonが図れる。これには大きく頷かされました。載っていた文章例も面白い。

アメリカ英語
Native English speakers can’t quite hack it when they need to dumb down to the 1,500 key words. The language they have to speak or write is expected to be kosher, if not perfect.

グロービッシュ
Native English speakers have great difficulties when they want to reduce their words down to the 1,500 key ones. On top of that the language they have to speak or write is expected to be correct, if not perfect.

この1,500を例にGlobishを説明するセンスの良さはさすがNewsweekです(笑)。

語彙数が1,500。英検、TOEIC(R)を運営するETSの公式見解ではありませんが、いくつかのウェブサイト*を調べてみたところ英検で合格に必要な語彙力は4級で1,100~1,300 words、3級で2,100~2,500 words必要だとのこと。TOEIC(R)でいえば500点=2500~3000語程度の語彙レベルだといいます。

「英検4級以上と3級未満の語彙力で十分!?」
「TOEIC(R) 500点でoverqualified (必要以上)!?」

既に我々にはグロービッシュを話す語彙力は備わっており、これ以上英単語や英表現を覚える必要はない。シンプルな単語をいかにうまく使うか。既に持りあわせている語彙を「どう操るか」を訓練するほうが余程重要。これがまさに英語力を身につけるのではなく、英語による「コミュニケーションの取り方」を学ぶことの重要性を指します。裏を返せば、相手が分からない単語を使ったらグロービッシュに簡易化させても良いというマインドを持つことがより重要になってきます。

時代が大きく移り変わろうとしているのに周りを見渡すと、英語勉強する者も指導する側も過去のやり方から抜け出せず、未だにネイティブを目指そうとしている。

普通こういった記事が出ると英語業界関係者で話題になりますが、あまり話題になっているような気がしません。私自身、誰かに教えてもらったわけではなく、偶然ある会社の待合室で見つけ、知ったほどです。

この記事、英語業界関係者にとって都合が悪い。これが本当だとすると多くの英会話学校はネイティブを目指させる従来のカリキュラムを大きく変えなければならず、またTOEIC(R)の点数も500点で”overqualify”となるとETSにとっても都合が悪い。ほとんどの大企業が目標にしている730点も意味がなくなってしまいます。

英語じゃなくてGlob・ish。そろそろ現実を直視する時期に来ているかもしれません。

*参照したウェブサイト
http://www.eigokentei.net/
http://www.eigo-eikaiwa.com/0013.html
http://allabout.co.jp/gm/gc/58085/


Posted by Masafumi Otsuka

4

4

comments

    Jul 18
    2010

    Hiro

    おもしろい記事ですね。私の経験でも、ネイティブと英語で話すよりも、ドイツ人、オランダ人、韓国人など非ネイティブの同僚と英語で話す方が簡単でした。彼らもそう感じていたと思います。
    お互いがネイティブじゃないケースだと、シンプルな表現で通じるんですよね。
    極端な話、本来の単語がもつニュアンスの違いを気にしなくよいことも起因しているのではと思います。具体的には、get, obtain, acquire, gainなど類義語を考えた場合、非ネイティブ同士ならば、getで間に合ってしまうのでは?と思います。例として、情報や許可などを得るという際に、obtainを使うべきシーンでも、相手が obtainという単語を知らなければ、そこで What do you mean 〜が入ってしまうので、わかりやすくgetを使った方が伝わりやすいかなと思います。一番怖いことは、相手が質問してくれず、理解しないまま、わかったふりをしてしまうことですよね。この時点で生じた小さなギャップが時間の経過とともに大きな障害となることもよくある話ですよね。アクティブリスナーとの方が断然コミュニケーションとりやすいのですが、全員がアクティブリスナーというわけでもないかもしれないので(アクティブリスナーの割合は、日本人よりも高い印象がありますが、この点については別途)
    特に、ビジネスシーンでは、限られた時間で、確実に言いたいことを伝える必要性があるため、相手に理解してもらいやすい表現をするべきだと痛感しました。
    なので、私の考えとしては、絵、図などを描いたり、映像を見せたりして、ムードまで掴んでもらうことの重要性が増していると思います。シンプルな表現力とこれらがあれば、問題なく乗り切れると思います。
    例えば、異国の交通システム説明するのに、紙と口頭表現だけで説明し、イメージを掴んでもらうのはなかなか難しいと思います。ということで、英語をしゃべりながら、絵を描いて、説明するトレーニングとかもmanabiで用意していただけたら面白いと思います。
    大塚さんのおっしゃるとおり、こういった実践で求められるスキルと現在の英語教育が目指す方向には大きな乖離があると思います。そうなんですよね。多くは未だにネイティブ目指しているんです(苦笑)
    manabiがやっている内容を広く普及させるべきだと思います。例えば、グロービスとかビジネススクールと提携するとかも面白いと思います。受講している方々はホント喜ぶと思いますよ!!
    長々とお邪魔しました。ではまた近日お会いしましょう。

    Reply
    Jul 19
    2010

    Masafumi Otsuka

    > 具体的には、get, obtain, acquire, gainなど類義語
    > を考えた場合、非ネイティブ同士ならば、getで間に
    > 合ってしまうのでは?と思います。
    本当にその通りだと思います。どうせ”What do you mean by **?”と聞かれるんだったら初めからシンプルにgetを使ったほうが良いに決まっている。最近アメリカでベストセラーになっている大部分の本、例えば”Made to Stick”や”presentation zen”なども伝え方は違えども同じメッセージを発しているような気がします。
    そういって意味で最近シンプルな言葉を使って、分かりやすい説明や読みやすい文章を書く人(特に英語)が増えているような気がします。裏を返せば理解しにくい文章を書くと最後まで読んでもらえず、結局損をしてしまう。プレゼンだろうが文章だろうが「分からないのは勉強不足!」から「分からないのは説明・書き方が悪い」の流れが確実にきています。
    実は恥ずかしい話、http://manabi.st/本体がまだネイティブを目指す場となっており、その解決策としてhttp://global.manabi.st/ を出しましたが本体も時代の要請に合わせてガラッとカリキュラムを一本に統一しようと思っています。
    うまくプライベートをトレーニングの場にしてセミナーを実践の場にする。そしてセミナーに外国人ビジネスパーソンも参加させる方向で考えています。とはいってもまだTrial & Errorのプロセスを経ております。
    今回宇都宮大学で職(主婦から現役のビジネスパーソン)、年齢(20代前半から60代)、英語力(TOEICでいえば多分300点台~800点後半)のバラバラの社会人相手に10回の講義を持って、大きな気づきがいくつもありました。このLearningをうまくIncorporateしていきたい。近々是非相談に乗ってください!

    Reply
    Jul 20
    2010

    AK

    Globishは確かに一つの考え方として新鮮ですね!純ドメの私はコッチを支持したいですが、問題は、新興国の知識者層が、実は中学、高校、大学、大学院など様々なレベルで留学などをしていて、かなり英語力があったりする場合が多いこと。

    Reply
    Jul 20
    2010

    Masafumi Otsuka

    > 問題は、新興国の知識者層が、実は中学、
    > 高校、大学、大学院など様々なレベルで
    > 留学などをしていて、かなり英語力が
    > あったりする場合が多い
    そうなんですよね。でも意味の分からない単語を相手が使ったら”What does that mean?”と違和感なく聞ける雰囲気は間違いなく出てきている。以前はなかったこうした流れが確実に出てきています。
    最近ノンネイティブの人と話す機会が多い欧米人が周りに多いせいか、非常にCommunicationが取りやすい。もしかしたら日本語よりも気を遣う必要がない分、楽に感じます。
    とにかく日本語でCommunicationを図る際、「**ってどういう意味ですか?」と聞いてたまに「そんなことも知らないのですか?」みたいな目で見られる心配がない。みんなが同じ知識・常識を共有していると成り立つのですが、最近いろいろとズレが生じてきているようにみえ、英語に比べ、日本語が使いづらい場面を何度か遭遇しています(笑)。
    そういった意味でGlobishというのは英語というよりは世界共通のCommunicationツールという位置づけで考えたほうが正しいかもしれませんね。持っている常識も価値観も受けた教育もバラバラの中での共通言語。分からないことが前提なので何でも聞けるし、コツさえ分かれば使いやすい。日本人はそもそもベースとなる語彙力は持っていることを考えるとかなりのAdvantageにもなると思います。

    Reply

Leave a Reply to Hiro Cancel reply