相手を抱き込んで説明する

相手を抱き込んで説明する


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以前「日本人のグローバル化を阻む3大マインドセット」という記事で、我々日本人は「考えはまとめてから話しなさい」と幼い頃から言われ続け、こうしたコミュニケーションの取り方を無意識で行っている。そしてこれが「考えは相手を抱き込みながら一緒になって考え、まとめていく」というグローバルスタンダードなコミュニケーションの取り方と逆行しているため、英語力の高い人でも外国人とのコミュニケーションに苦労していることを書きました。
このグローバルスタンダードのコミュニケーションの取り方を身につけていただこうと現在3ヶ月(全12回)に渡りセミナーを行っているのですが、昨年末にその最終回を終え、改めてこのコミュニケーションの取り方を身につける難しさを感じました。

最終回では今までの総括として過去11回行った各discussion topicをその内容を全く知らない外国人ビジネスパーソンに対して説明してもらう会にしました。「3ヶ月もトレーニングを積んできたのでスムーズに出来ていることを体感してもらおう」と思っての企画でしたが、なかなかうまく説明出来ない。
例えば第6回目のセッション。この回は「子育てにおいて体罰は有効かどうか?」をmain issueにみんなでDiscussionを行いました。まず「自分が学者だったとして『子育てにおいて体罰が有効かどうかを証明する実験を設計しなさい』と言われたらどういう風に実験を設計するか」をみんなで考える。そして何らかの実験をみんなで作り上げ、その難しさを実感した後に、一方は「体罰は有効でない」、もう一方は「体罰は有効である」と結論づけた2つの有名な学術論文を持ち出し、それぞれの実験方法を説明し、どちらの方がmake senseするかについて議論しましたが、これを3分で説明しようとするとどこから始めたらいいのか分からない。
普通に
“We discussed whether physical punishment is effective or not when bringing up a child.”
とまず大枠から入り、
“We first talked about how we would design an experiment to prove either of this if we were a researcher. Then we looked into two research papers conducted by famous professors, one concluding that physical….”
みたいな説明が出来ればいいのですが、いきなり説明しろと言われても事前準備出来るスピーチではあるまいし、困ってしまう。まず何について議論したか思い出すのに精一杯で、どこから説明したらいいか分からない。そして「ああでもない、こうでもない」と説明していくうちにうまく伝え切れず3分が経ってしまう。
どうも説明の仕方を見ていると「何か質問があったらきっと止めて聞いてくれるはずだ」というマインドで話し続けている。また相手を見るどころか、ほとんどengageしていない。何を言っているのか分からなくなり間が出来ると耐え切れなくなった相手が”So what you’re saying is that…”とどう捉えているか教えてくれる時もありましたが、ほとんどの場合、外国人も黙って聞いている。
そして終了後に私が
“So did you understand what we did in that session?”
と聞いてみると
“I was trying to figure that out.”
いう。「じゃーなんで聞かなかったのか。」と聞くと「よく分からないけどそんな雰囲気がしなかった」という。
やっぱりpassiveにengageを待つのではなく積極的にengageしていかないとダメだということに気付きました。積極的なengageとは何か。ずばり直で聞いてしまうことです。例えば普通に
“We discussed whether physical punishment is effective or not when bringing up a child.”
と入ったとする。その後そのまま説明を続けるのではなくて
“Which do you think is more effecitve?”
といきなり聞いてしまうか
“OK. If you were a researcher and were asked to design an experiment whether physical punishment is effective or not, how would you do this?”
と聞いてしまう。多分突然聞かれた相手はすぐに出てこない。そこで
“See how difficult this is?”
みたいにさらに抱き込む。もし何か面白いアイディアを出しても恐らく半煮えのアイディアなので
“That’s a good idea. But what if…”
とちょっと突っ込んだ質問してみたりする。2つの論文を持ち出すか持ち出さないかは流れで決めれば言い訳で、大事なのは「体罰が子育てにおいて効果的かどうか」について話したということが伝われば良い。
例え冒頭で「体罰が子育てに置いて有効かどうかについて話した」と思いつかないで、いきなり
“I think we talked about how to bring up a child and looked into two experiments. One was…”
と大枠から入れず途中から具体的なことを言い出しても全く問題ない。すると当然相手は混乱した表情をするのでここで
“Wait. That wasn’t what I wanted to say. I’m not telling you the big picture. Umm. Am I making any sense so far?”
みたいな抱き込み方をすれば相手は
“Well, you’re talking about two experiments which is child related?”
みたいな感じで聞いてくれるので
“Oh, yes child related but the experiment measures whether physical punishment is effective or not when bringing up a child.”
といってあげれば
“Oh, I see. So you discussed whether physical punishment is effective or not in child rearing. And why are you bringing up two experiments?”
みたいな感じで自然とMain issueにたどり着く。
今回のセッション、何度もビデオで見直し感じたのは相手の表情をちゃんと確認しながらconversationalなtoneで話すことがいかに重要であるかということ。大体相手の表情を見ていれば理解出来ているか分かります。そして「〜じゃないですか」とか「〜ですよね」みたいなconversational調に話せば、相手も「え、どうして?」と挟みやすい。また普通に説明していて「ちょっと空回りが始まったな」とか相手が「ん!?」という表情をしたら
“Wait. Am I confusing you?”
“Am I making any sense here?”
と間髪入れずengageしてみる。すると相手がどう捉えているか教えてくれるのでそれに乗っかって説明していけばいい。コツさえ掴んでしまえばはじめから終わりまでまとめて説明しないといけない日本式のやり方の方が遥かに難しいことに気付きます。
でもこのコミュニケーションの取り方、見ていると皆さん相当抵抗を感じる。何故か。日本語はどちらかというと説明する側が責任を負い、聞く側は黙って聞くように設計された言語(またはそうするように無意識に育って来ているので)なので「ちょっと待って。ひょっとして混乱させている?」「私のいっていること理解出来てる?」なんて絶対に途中で挟まない。
「ひょっとして混乱させている?」と聞かれて「はい」と答えるものなら暗に「あなたの説明は下手です」という言っているようなもんでしょうし、「私の言っていること理解出来ている?」なんて聞いたら「相手をバカにしているのではないか」という感覚になってしまう。
つくづくコミュニケーションの取り方を英語と日本語で使い分けないとダメなんだと感じると同時にそれを伝える難しさを感じました。とにかく英語で話す時は早い段階で相手を抱き込む。どうしたらこの感覚を体得してもらうか。引き続き色々と試していきたいと思っています。

Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Jan 09
    2012

    eiko

    Masaさんのブログからも多くを学ばせていただいております。「相手を抱き込んで説明する」マインド、日々の仕事からもその大切さをヒシヒシ実感じております。後半の授業も、どうぞよろしくお願いします!

    Reply
    Jan 10
    2012

    Masafumi Otsuka

    簡単そうでよほど意識しないと習得するのが難しい。是非後半は意識して挑戦し続けてくださいね。

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