Malcolm Gladwellの世界

Malcolm Gladwellの世界


What the dog saw.jpg
The Tipping Point.jpg伝えたいメッセージをどのようにシンプルで効果的に伝えるか。一対一、プレゼン、e-mail等の文章と手段は違えど、コミュニケーションを図る上でいつも悩んでしまいます。

今、Malcolm Gladwell氏の先日出たばかりの本、What the Dog Sawを読んでいますが、この人の書くStoryは本当に面白く、メッセージのシンプルで効果的な伝え方を考える上で非常に参考になります。Malcolm Gladwell氏はビジネス系ノンフィクションの分野ではGuru(教祖)といわれている人で現在週刊誌The New Yorkerの記者をしています。Gladwell氏が2000年に出しましたThe Tipping Point(邦題:急に売れ始めるにはワケがある)は日本ではあまり売れていませんが、アメリカでは200万部売れた大ベストセラーで、そのストーリーの書き方・思考法は多くのビジネスパーソンに影響を与えています。以前ブログで紹介しました“Made to Stick (邦題:アイディアの力)”The Tipping Pointで紹介された口コミを起こすのに必要な”The Stickiness Factor(一度聞いたら忘れられないストーリー構成)”を深く追求した本です。このコンセプトは、先日ブログで紹介しました“presentation zen”の著者、Garr Raynolds氏にも大きな影響を与えています。Gladwell氏のメッセージの伝え方のすごいところは以下の3点:

  1. 「そんな考え方・モノの見方があったのか」と誰しもが感情移入できる、知的好奇心が刺激されるコンセプトをまず紹介
  2. 「そんな面白い話があったのか」とそのコンセプトを、読んでいてワクワクするようなストーリーを通じて伝え
  3. 「そう来たか!」と思わせるような異なる角度で伝えたいコンセプトに別の光をあて、さらに発展させる

そしてそのコンセプトを何か自分の日常で利用できないか読み手の発想を膨らませながら話を終えます。このWhat the Dog SawはGladwell氏がThe Newyorkerという雑誌で過去に書いたストーリをまとめたもので、19もの短編集が収録されています。誰もが日常的に接しているが問題にスポットライトを与え「そう来たか!」と思わせる彼独特な世界を展開させます。

例えば人とCommunicationを図る際のBody Languageの重要性を説明する為に、まずは犬の訓練士の話からはじめます。この訓練士(Cesar Millan氏)は犬のしつけのLast resort(最後の砦)と呼ばれている人で、どんな獰猛犬でも彼にかかれば、大人しい犬に変身してしまいます。彼はNational Geographic TelevisionでDog Whispererというテレビ番組を持っており、誰にも手なづけられなかった獰猛犬をカメラの前で一瞬で大人しくさせてしまう技を披露します。それだけではなくその場で、飼い主を教育し、手なづけ方法も教えることにより彼独特の「犬のしつけ」理論を展開します。

Millan氏曰く、犬は人間が好きで好きでたまらない。だからこそ、犬は人間の緊張感に特に敏感に反応する。顔の筋肉が少しでも引きつったり体が前かがみだったり腕を組んだり、少しでも緊張感を察知すると犬はそれを嫌い、大きく刃向かう。リラックスした姿勢で犬と接しながらも、(彼独特のやり方で)誰がボスかきちんと示してあげれば犬は素直に従う。

この話を読み、どうしても実際に映像を見たいと思い、You tubeで検索したところ、本の中で例として出てくるエピソードを発見。実際に見て本当に興味深かったです(ビデオはこの記事の最後にアップしました)。

Malcolm Gladwell氏の面白いところはこのビデオをメリーランド大学の芸術大学院の教授(ダンス専門)に見てもらい、表現力の観点から解説してもらっているところです。その教授はMillan氏本人の解説とは違った角度で、Millan氏の行っていることの解説を始めます。音声を一切消し、この映像をみると(実際に行ってみてください)彼の表現力(Body Languageを通じた)は芸術の域まで達するほど高いとのこと。それを細かく解説し、これを犬ではなく人間界でも通用すると指摘。クリントンやレーガン元大統領とブッシュ前大統領の違いを引き合いにCommunicationにおけるBody Languageの大切さを解説します。人の好き嫌いを判断する時、その55%をBody Language、38%を超えのトーン、7%を言葉で判断するという「メラビアンの法則」もこのようなストーリーを聞くと深く納得します。

人とコミュニケーションを図る際、緊張感や戦闘体制のマインドで臨むと逆効果であることを犬の訓練士を例に伝えようとしているのです。そして、コミュニケーションを図る際、落ち着き、自然体で臨む重要性について考えさせながら、話を終えています。まずGladwell氏独特のメッセージの伝え方に「なるほど!」と感じると共に、より効果的なコミュニケーションを図るにはどうしたらよいかのヒントが見えてきます。以前書きました「異色な日本人」という記事内で川井拓良さんに「世界とコミュニケートする秘訣」を訊ねたところ「笑顔」と即答していたのも何か通じるものを感じてしまいます。

わずか20ページにも満たないストーリーでこれだけのメッセージを発信出来るジャーナリストはそうはいません。いかに伝えたいメッセージをシンプルで効果的に伝えるか。コミュニケーション手段は何であれ、ヒントにしていきたいものです。

 

Dog Whisperer Part 1

 

Dog Whisperer Part 2

 


Posted by Masafumi Otsuka

Leave a Reply