Writingについて考える

Writingについて考える


writing.jpg今、“If You Want to Write (Brenda Ueland著)”という1934年に書かれた本を読んでおり、いきなり序章の:

“Everybody is original, if he tells the truth, if he speaks from himself. But it must be from his true self and not from the self he thinks he should be.”

という言葉に大きなInspirationを受けています。

これまでプレゼンやコミュニケーションを中心にブログ記事を書いてきましたが今回はWritingについて考えてみたいと思います。私には正式にWritingについて習った記憶がありません。小学校はアメリカの現地校に通っていた為に分かりませんが、中学・高校・大学と日本で教育を受けてきて、作文や読書感想文を提出した記憶はあっても、出した文章について指導を受けた記憶がありません。社会人(私の場合は銀行員)になってからも書いたものといえば前任者の書いた稟議書をそのまま写したくらい(本当です・笑)。そもそもWritingに相当する日本語が思いつきません。

Writingについて初めて考えさせられたのがMBA出願の時です。MBAに出願するには所信表明のエッセイを数本書かなければなりません。例えば:

「当校は多様でユニークな生徒コミュニティーを求めています。あなたのuniquenessがどのように当校の学習環境の質を高め、さらにあなたのマネージャーとしての成功を高めるのかについて述べなさい」

というお題が出されます。

日本語でもエッセイを書いたことがないのにいきなり英語で書けといわれ、大いに困るわけです。幸い、私の場合は素晴らしいエッセイ・カウンセラーに出会い、彼に私の良さを引き出してもらうとともに、Writingについて大きく学ばせていただきました。

とにかくこの人は超スパルタ。人が徹夜して一生懸命書いたエッセイの冒頭3行だけ読み、”Boring!”と大きなあくびをして、「こんなの捨ててしまえ」と以降読んでくれない。こんなことが何回か続き、「こいつ絞め殺してやろうか」とメラメラと殺意が芽生えたのを良く覚えています(笑)。「頼むから最後まで読んでくれよ」と。しかし、彼曰く、

「入学選考委員は数千ものエッセイを読むので、基本的に疲れている。つまらないと思った瞬間にゴミ箱に入る。最後まで読んでくれない。一度読み始めたら最後まで目を離させないよう工夫して書くこと。そうでなければ合格できるわけがない。」

と。そして具体的にWritingのルールとして:

  1. オープニングが非常に大切。相手に「えっ、何?」と好奇心を刺激するようなものからスタートしなければならない。
  2. 抽象的な言葉・受身動詞(abstract words・passive verb)は使わない。読んでいて光景が思い浮かぶような具体性のある言葉・動作動詞(concrete words・active verbs)を使うこと。
  3. 伝えたいことをただ書くのではなく、感情移入を促すストーリーにして書くこと。
  4. 文章のリズムは非常に大切。相手の読みやすいリズムで書くべき。
  5. クロージングもオープニング同様に大切。読み手をinspireさせる、Positiveな広がりを感じさせるように締めるべき。

例えば先程の「あなたのuniquenessが我々の学習環境にどのように貢献し。。。」の設問。私の場合は「人を動機付ける、モチベーションを与える」ことで学習環境の質を高めることに貢献するというメッセージを伝えようとしました。そして5つのルールに従ってオープニングを小さい頃のアトピー性皮膚炎でいじめられた話からはじめました。

普通ですと「私は生まれた頃からアトピー性皮膚炎という肌が荒れる病気を抱えていた為、いろいろなところで嫌な思いをしました」と書き始めますが、それでは読み手が感情移入できません。そこで「何で腕にカビが生えているの?」と実際に言われた言葉からいきなりエッセイを始めます。すると読み手が「えっ、何それ。そんなことを言われたら私だったらどう思うだろう」と一気にストーリーに引き込まれます。そこから何故「人を動機付ける、モチベーションを与える」ことに幸せを感じるようになったのかとストーリーを書いていきました。同じメッセージでも書き方によって伝わり方が全く違うことは、プレゼンや対面のコミュニケーションと変わりません。

最も勉強になったのが4番目の「文章のリズム」を大切にするということです。「そこまで読み手を意識するのか。」とこれにはびっくりしました。日本的に(私だけかもしれませんが)いって、プレゼンもそうですが、「書く人(プレゼンをする人)=偉い人」なので「ありがたく読ませて(聴かせて)頂く」というイメージを持っていました。だからこそ、どんなに読みにくい文章でも「理解できないの自分が悪い」と思い、辛抱強く何度も読み直して理解しようとしていたような気がします。

「読ませる」のではなく「読んでいただく」と考えると発想がガラリと変わります。このエッセイカウンセラー曰く「何度も何度も音読して読み直せ。ちょっとでもリズムが悪いところがあったら書き直せ。」といい、「こういうリズムがいいんだ」と「タタタタタ・タタタタタタタ・タタ(忘れてしまったので適当に書いています・笑)」と実際にそのリズムを音で聞かせてくれました(これは本当です)。

そして冒頭のUeland氏の言葉ではありませんが、正直に書くことの大切さも教わりました。こう見られたいと思っている自分ではなく、ありのままの自分を書くこと。「別に自分はスーパーマンでもなんでもない。どこにでもいる普通の人間ですが、***を大切だと考えていて、***というコンプレックスを持ちつつも、****したことで世の中に貢献していきたいと思う」と生身の人間を感じさせることに読み手が最も感情移入するといいます。結局エッセイを書き上げるのに半年かかってしまいましたが、この半年間が私にとって唯一Writingについて勉強した時期です。

エッセイは英語で書きましたが、このルールは英語に限らず日本語でも全く同じだと思います。このブログもこうしたことを意識だけはするようにして書いています。でも最後の「正直にありのままの自分」を書くというのは非常に難しい。ある程度は出せてもどうしても、自分を良く見せたいとどこかで思ってしまいます。いつかはこの壁を乗り越えたいものです。


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Jan 13
    2010

    Yasue

    すごい嫌なカウンセラーですね(笑)
    「読ませる」んじゃなくて「読んで頂く」っていう風にシフトすると、なるほど、見えてくるものが違いますね。
    昨日、スピーチを英語でしましたが、改めて本当に自分が伝えたい事を自分の言葉で伝えることの強さを考えさせられました。たった5、6分のスピーチだけど、英語がネイティブであるとかは全く関係なく、スピーカーが自分の言葉で自分のTrue selfから話していると、本当に引き込まれます。

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    Jan 14
    2010

    Masafumi Otsuka

    いやいやあれくらいのことをしてもらはなかったら一生懸命書いたダメなエッセイは捨てられなかったでしょう。捨てると何もなくなってしまうので当初抵抗しますが、いったんリセットしないと新しい発想が出てきません。あの人には私の個性を無理やり(!?)引き出されました。
    True Selfは本当に大切ですね。人間、完璧ではないのでそういった弱い部分を含め人間性を感じさせると相手は一気に感情移入してしますね。でもやっぱり格好良く見せたい。そういったスケベ根性と無意識に戦ってしまいます(笑)。

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