根回しが何故日本人に必要なのか、ちゃんと説明しよう

根回しが何故日本人に必要なのか、ちゃんと説明しよう


nemawashi2“Nemawashi is cheating!”

根回し。これが何故必要なのか特に欧米人には分かりづらい。先日ある日本企業の東京本社にいる外国人駐在員と話していたら

「一部の人達(日本人同士)だけで事前に物事を決め、それをオープンにせず、決まっていないように装い、ミーティングを行う。これは明らかにcheatingだ!」

と怒っていました。よく起こる事例として

アメリカ・ヨーロッパ、日本の3拠点で行ったグローバルミーティングで、長時間かけて議論し決まったと思ったことが3日後に日本側から長いメールが届き、覆えされる。だったらあのミーティングは何だったのか?

と。外資系企業ではほとんど聞かない話ですが、日本の大企業では必ず聞く話。先日ある日本企業で行なった日本人社員と外国人社員を交えたワークショップで、円滑なグローバル・コラボレーションを妨げる要因の一つとして、この「根回し」が議題に上がっていました。

とても良い議論が出来ており、外国人に根回しを説明するヒントになればと思い、紹介したいと思います。

何故根回しが必要なのか
日本人はオープンの場でのdisagreementを特に嫌う。特に上司に対しオープンの場で異論を唱えるのはご法度。その上司に恥をかかせるだけでなく、disagreementが起きた瞬間、出席者全員uncomfortableになる。だから事前にそうならないように根回しする。

こういった説明は一般的だと思いますが、外国人社員が特に驚いていたのが、

日本人同士で行うミーティングで仮にdisagreementが起きた場合、その部分は議事録から削除される

ということでした。「そこまでするのか!?」とびっくりとしていました。ここまでしっかりと説明した方がよりWhy?が伝わるかもしれません。

決まったことを3日後に覆そうとする理由
そもそもmeetingに出席している日本人に決定権が与えられていないケースが多い。だからミーティングが終わってから上司に報告する。そこで上司から許可が下りない。そこで長いメールを書き、覆そうとする。

欧米では逆で、ミーティングに出た社員は上司から全権委任を受けている。難しい議案であれば意思決定する上司が直接ミーティングに出て来ます。だから仮にミーティングで決まったことに対し、上司がunhappyだったしても、全権委任した以上、それは尊重する。

逆にそれを後で覆そうとすると、部下に対するdisrespectとなり、優秀な人材ほどそういう上司の下につこうとせず、辞めて行く。

これには逆に日本人社員が驚いていました。

ここは日本と欧米のマネージメントスタイルの大きな違いで、どちらが良いとか悪いとかではなく、お互いちゃんと知っておくことが大事。ここも伝えて起きたい。

日本側が開催を呼びかけたミーティングは事前に根回しが行われ、ある程度結論が決まっている
どうも欧米人的な感覚からして、ミーティングが招集されている以上、まだ結論が決まっていない。だからより良い意思決定を行うためにどんな貢献ができるか、その場で必死に考え、アイディアを出していく。

事前に決まっているのであれば、ミーティングではなく、「こう決まった」という通知で済むはずと思い込んでいる。例え賛同しなくても上が決めたことであれば従うと。

日本人的感覚でいえば「こう決まった」と通知することは、相手を根回しのプロセスに入れていないので、「何だか申し訳ない」という気持ちが働く。だからミーティングという場をあえて持ち、形式だけでもそう決めたプロセスを伝えたい。

ただ、「こう決まった」と結論から伝え、議論の余地がないように感じられると申し訳ないし、起承転結スタイルの方が日本人的には説明しやすい。

だから議題から説明し始め、うまく事前に決めた着地点に持っていこうとする。しかし実際にミーティングが始まると、欧米人からどんどん質問や新しいアイディアが出てくるので、思い描いた結論にたどり着かない。

「事前に決まっているのであればミーティンブの冒頭で教えて欲しい」という欧米人に対し、日本人が「そう言われたら嫌な気が起きないか?」と聞いていたシーンが大変印象的でした。これに対し、あるアメリカ人が

「嫌な気はもちろん起きるが『少なくても正直に話してくれていることが大事で、それを申し訳ないと思っているのであれば、次からお互いがどう歩み寄れるかの議論が出来る。このtrustがベースにあるかどうか。これが一番大事。』」

といっており、「なるほど!」と納得してしまいました。

  • 根回しのプロセスに我々欧米人もいれて欲しい。
  • 入れてあげたいが、日本語でやるから根回しはやりやすい。
  • 我々が英語を学ぶのと同じく、あなた方も日本語を学んで欲しい
  • せめてミーティングの冒頭でまず根回しが行われたか、何が決まっていて、何が議論の余地があるのかを伝えて欲しい。

などその他、色々な議論をしていましたが、こういったオープンで正直な議論が日本の大企業に勤める日本人と外国人社員の間で圧倒的に不足している。これがないといつまで経っても日本企業に優秀な外国人社員が来てくれない、残ってくれないように感じます。

参考記事
日本企業に買収された海外企業・現地社員の悲劇
何故日本の金融機関は外国人をうまく活用できないのか
優れた日本人であるほど世界が遠のいていくワケ


Posted by Masafumi Otsuka

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