優れた従業員は会社を去るのではなく直属の上司を去っていく

優れた従業員は会社を去るのではなく直属の上司を去っていく


I_Quit優れた従業員はカリスマ経営者や魅力的な福利厚生や職場環境、または世界クラスの研修プログラムに惹きつけられ、入社するかもしれない。しかし、その従業員がどれだけの期間その会社に残るか、そしてその間どれ位功績を残せるかは、直属の上司との関係で決まる。
- Marcus Buckingham

最近、oDesk(現Upwork)等、グローバル・クラウドソーシングサイトを使った人材発掘及び活用スキルが見込まれたのか、現地の優秀な外国人タレントの採用やそのマネージメントに関し、お手伝いする機会が増えてきました。グローバル展開する多くの日本企業は現地法人の優秀な外国人タレントの離職率の高さがに悩まされているように感じます。こういった相談を受けた時、一緒に解決案を考える前に、お願いして読んでもらっている本があります。

First Break all the Rules「まず、ルールを破れーすぐれたマネージャーはここが違う(マーカス・バッキンガム&カート・コフマン著)」という本。一般的に企業価値を測る際、その指標として株価、営業利益率、ROE(株主資本利益率)等、数値化しやすい財務データを用いて計算しますが、著者はこうしたハードのデータではなく、人材力から企業の価値を測定できないか。「優れた人材をどれだけ活かせているか」を測る指標を作れないか、「人的資本(Human Capital)」を数値化しようと試みたもので、グローバル・タレント・マネージメントを行う際に大きなヒントになります。

分析の元になったデータは 米大手調査会社であるギャラップ社が70年代〜90年代に行った壮大な従業員意識調査。何と企業の規模・業界を問わず業績の良いと言われる会社の従業員計100万人、マネージャー6万人を対面形式でインタビューした膨大な記録です。著者はまず、「優秀な従業員は職場に何を期待しているのか」という問いに対する答えに着目。そのデータ分析からスタートします。そこで共通して分かってきたことが冒頭の引用。

どんなに給料が高く、企業文化が魅力的で、経営者が尊敬されても、直属の上司との関係が悪ければ会社を去っていく

と。ユニークなオフィスを作ったり、会社に遊びスペースや無料のシェフ付食堂を作ったとしても直属の上司がダメだったら去っていくというのは興味深い。著者曰く「そういったものが全くなくても直属な上司が優れていれば優秀なタレントは残る」と。

そして、次の質問として「世界で最高峰と呼ばれるマネージャーはどうやって、優れた従業員を探し、高いパフォーマンスを継続的に引き出し、繋ぎ止めているのか?」、その共通項はないかと、ギャラップ社のデータをより踏み込んで分析していきます。そして、優れたマネージャーは「従業員が良い仕事をする為に、絶えず自問自答している、12の質問」に対して気にかけ、きちんと答えてあげているという結論に達します。以下、12 questionsです。

  1. 仕事で自分に何を求められているか明確に理解できているか
  2. 良い仕事を行うために必要なリソース(人・モノ・金)は揃っているか
  3. 毎日最高の仕事ができる機会に恵まれているか
  4. 最近1週間で、仕事の成果を認められたり、褒められたりしたことがあるか
  5. 上司や仕事仲間は自分を一人の人間としてcareしてくれているか
  6. 社内に自分のスキルアップを後押ししてくれる人がいるか
  7. 社内で自分の意見が尊重されているか
  8. 会社のミッション・目的に沿ったインパクトをしっかりと与えていると感じるか
  9. 同僚は責任感が強く、クォリティーの高い仕事をしているか
  10. 職場に良い友達がいるか
  11. 最近半年間で、自分のキャリアの進捗状況についてフィードバックが与えられたか
  12. ここ1年で何か新しいことを学び、成長したと感じたか

実際、著者達はこの12の質問をあるそれぞれ5段階評価で従業員が採点できるシートを作り、大手製造業の全従業員に受けさせ、工場別にその平均点を計算してみたところ、点数と生産性は大きく相関関係があったといいます。

私自身、過去大小を含めますと30以上ものグローバルプロジェクトを指揮してきましたが、特に前半の6つの質問を初めて読んだ時、「そうそう、これこれ!」と色々と痛い経験を思い出しながら妙な納得したのをよく覚えています。

こうした経験については別の記事に改めて書いていきたい(特にQuestion 2と4について!)と思いますが、外国人タレントの離職率に悩んでいる会社もうまくやっている会社も、この12 Questions、実施してみることを強くお勧めします。こうしたアンケートを取るだけでも会社の外国人タレントに対し、”I care”というメッセージが大きく伝わりますし、点数結果を見ると何が問題になっているのかヒントを沢山発見できると思います。

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Posted by Masafumi Otsuka

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