何故日本人はブレストを嫌うのか

何故日本人はブレストを嫌うのか


何故日本人はブレストを嫌うのか欧米人が何故ブレストが好きなのか理解出来ない。全く役に立たないアイディアをひたすら出し続ける。時間の無駄以外の何物でもない。

日本人はブレストが嫌いな人が多い。ブレストは日本人のビジネス文化に合っていない。だからといって日本人は新しいアイディアを出し、それを具体化する行為をやっていないというわけではない。欧米人と全く違うやり方でやっています。

この記事は「何故日本人とのブレストがうまくいかないのか。何故多くの日本人はブレストの場に出て発言をしないのか。」と不思議に思っている欧米人向けにLinkedInというサイトで書いた英語記事Why Japanese Hate Brainstormingの日本語訳です。

はじめにブレストを日本人の視点から見ていき、何故それが合っていないのかを説明します。

日本人は以下のように考えがちです。

アイディアはワインのように熟成期間が必要
その場で思いつきのアイディアは薄っぺらいし、うまくいくわけがない。本当に良いアイディアは熟成する期間が必要だと日本人は考えます。

日本人はアイディアを単体で考えるのではなく、そのアイディアを実現するためにどのような利害関係者を説得しなければいけないかと同時に考えます。

こうした利害関係者に対する根回しをしっかりとしないと、アイディアは実現できる訳がないと。もし利害関係者の意見を取り入れないで意思決定してしまったら、利害関係者は裏切られたと感じ、実現不可能になるのではないかと恐れます。

武士に二言なし
日本人は半熟したアイディアを公の場で出すことはごく稀で、熟考してからアイディアを出します。それは一度言ったことを後になって取り消す人は信用できないと考えるからです。

このマインドを持ったまま一切フィルターを通さずに半煮えどころかほぼナマ状態のアイディアをどんどん出して聞くことが求められるブレストに参加するのは不可能です。正反対のことをやれと言っている訳ですから。このマインドセットを変えるのは難しい。

日本的ではない考え方を出すのはご法度
ほぼ単一民族である日本は皆似たような考え方を持っているか、何かアイディアを出すとき「このアイディアは日本人の価値観に沿っているのか」と自ら問いた後に出します。しかし良いブレストを行うには、全く異なる考え方や価値観が違う人たちの参加が求められる。

そもそも日本人は日本人同士、日本語を使って話していてもブレストはやりません。そのためブレストの成功体験、「すごい!そんな発想どこから来たのか?」とexciteするようなブレストを経験したことがない。

序列は常に尊重されるべき
日本のビジネス社会には対等な人間関係というものがなく、会議の場に出ると出席者の序列は決まっています。

そしてその序列はどんな場合でも尊重されなければならず、公の場で自分の上司の意見に意義を唱えることは、その上司に恥をかかせる可能性があるので決してしません。

良いブレストはこうしたヒエラルキーがないところで起きます。

会議は意思決定を確認する場である
日本では会議が行われるのは根回しが終わった後です。そしてこの根回しという行為自体にブレスト的な要素が含まれています。日本人には何故根回しが必要なのかについてはこちらの記事を参照ください。

会議は全て台本に沿って行われます。よって欧米流のブレストはこのやり方にあっていません。

そもそも会議が行うと決まった瞬間に、日本人は以下のことを想定します。

  • すでに結論が決まっている
  • 会議中にサプライズはない
  • 会議は台本に沿って行われる

ある日本人の気づき
私は日本人に対してグローバル・ディスカッションを学ぶ研修を行っていますが、その中の欧米流ブレストを学ぶセッションを受講した参加者は以下のことを言っていました。

私は何か問題にぶつかった時、いままで以下のような思考パターンで解決していたことに気づきました。

Linear Thinking

これを自分一人でやって解決案を出していく分析的思考法が最も効率的なやり方だと思っていました。しかし、今回のトレーニングを通じてブレストは全く違う問題解決のやり方であることに気づきました。

これはとても不確実なやり方で、会議が終わるまでどんな解決案が出てくるか全くわからない。絶えずアイディアを推し進めていく(push forward)していくこのブレストというやり方。一人で考えていてもまず思いつかない複雑な問題解決に適したユニークなやり方だと感じました。

何故彼はそう思ったのか
欧米人も日本人も自分達のやり方が当たり前で、最も効率的なやり方だと無意識に思っていることをまず認識しないといけない。

私が行うグローバル・ディスカッション研修では「何故ブレストのやり方を学ぶのが大事かと、どのようにブレストに積極的に参加していくか」を伝えるだけのために2時間の時間を設けるようにしています。

先ほど説明した日本人独特のマインドという制約があるため、多くの参加者はそもそもブレストをやったことがないか、正しいブレストのやり方を学んだことがありません。

日本人の思考パターンは分析思考(linear thinking)であり、多様な視点から物事を見ることで直感的な発想を生み出す水平思考(lateral thinking)という思考パターンを持ち合わせていない人が多い。だから日本人をブレストに参加させるのは難しい。

欧米人はまずこのブレストという日本人から見ると極めてユニークな問題解決方法が、グローバルで認知された誰もが知っていて実践しているやり方であることは思い込みであることを理解しないといけない。これを理解しないと「だから日本人はダメなんだ」という誤った結論を下し、変な誤解を生み、著しく信頼関係を失いかねない。

私の研修ではまずこの「ブレストとは何か」について以下のように解説します。

ブレストは無秩序(ぐっちゃぐちゃ)のように見える
日本人にとってブレストが秩序がないように見えてしまうのが、そもそもその全体像とブレストをやることによって何を達成しようとしているのか、そのプロセスが理解できないからです。

私はまずブレストの全体像とそのプロセスを以下の図を見せて解説します。

そして誰しもが感情移入できるような複雑な問題を提起して、この図を使いながらゆっくりとブレストを行い、どのように全員である結論に達したか、そのプロセスを見える化するようにします。

欧米人もまずはこの図を使って、アイディアが発展していくプロセスを日本人に見せてあげるべきだと思います。実際に上手く行ったブレストを、こうした図を通して見える化してあげると、日本人はこの無秩序(水平思考)のプロセスがブレストには不可欠であることが理解できるでしょう。

こうした全体像とプロセスをきちんと理解でき、一人で考えても絶対に出てこないような創造的なアイディアを全員で出していくブレスト体験を積んでいけば、日本人のブレスト嫌いも少しずつ和らいでいくはずです。

日本人と一緒に仕事をする欧米人の大部分は何故日本人が会議やブレストの場で発言しないのか、参加しないのか不思議に思っているのではないでしょうか。

今回の記事で日本人のパフォーマンスを引き出すために、どんなことが出来るか、分かったいただいたのであればとても嬉しいです。

日本人もブレストをするスキルを学ぶことが出来ます。しかし、ブレストは出来て当たり前という先入観を捨て、それが開発してあげなければいけないスキルであることに気づかないとダメです。

一度このやり方を受け入れ、ブレストのスキルを磨きはじめれば、日本人はとてもユニークな視点やアイディアを出し、より高い価値をブレストにもたらせてくれることでしょう。

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Posted by Masafumi Otsuka

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