良い謝り方、悪い謝り方
謝罪学というのはご存知でしょうか。いるんですね。こういった面白いことを研究している人が。先日読み終わった、Why Won’t You Apologize?: Healing Big Betrayals and Everyday Hurts という精神科医であるHarriet Lerner氏が書いた本が面白い。
Lerner氏はまずよくありがちなダメな謝り方について具体的に解説します。その代表例を3つあげると、
- 謝った直後に「しかし(but)」を入れる
例えば、「大声で怒鳴ってしまってごめんなさい。ただ、あの時のあなたの行動がどうしても許せなかった。そこは分かって欲しい。」は謝罪っぽく見えて、謝罪ではないとLerner氏は言います。何故か。謝罪を受け取った側からすると「ごめんなさい」の後の部分。受け手からすると「あなたの行動は許せない。そこを反省して欲しい。」と反省を促されるように聞こえてしまい、謝罪どころか、追い打ちをかけて責められていると感じてしまう。 - 「もし〜としたらごめんなさい(I’m sorry if…)」
「この間の会議であなたの発言をみんなの前で正し、恥をかかせてしまったとしたらごめんなさい」もダメ。謝り手が責任をとっていない。謝り手はこう伝えることで、「謝った」という責任を果たし、良い気持ちになっているかもしれないが、受け手からすると「一応ごめんなさいと言っておきますね。もし恥をかかしたのであれば。。。」と上から目線に感じて謝罪自体を帳消しにしてしまう。 - 謝った直後に「許し」を乞う
謝った直後に許しを乞うと、怒りの感情を整理できない中で、「許してあげられない罪悪感」を相手に与えてしまい、その罪悪感から「分かった」というプレッシャーをかけてしまう。謝罪にはそれを受け手が吸収する時間と空間が必要。
本の中で出てくる、10年前に行った離婚が娘を相当傷つけたと知った母親が娘にした直接した謝罪した例がとても分かり易い。母親は
Deeちゃん(娘の名前)。私たちの離婚であなたが大きく傷ついたことを謝ります。あなたを傷つけるつもりは全くありませんでした。私はあの時出来ることは全ったつもりです。だから私が行ったことであなたを傷ついた行動全てに対して、謝ります。許してください。
と伝えたと言います。Deeちゃんはこう言われて以降、母とのコミュニケーション手段を一切絶ったと言います。何故か。Lerner氏はこれを娘の視点から聞くとこう(下線部分)聞こえると解説します。
- Deeちゃん(娘の名前)。私たちの離婚であなたが大きく傷ついたことを謝ります。
→離婚に対するあなたの反応が問題だと思う。 - あなたを傷つけるつもりは全くありませんでした。
→私は悪い人間ではありません。何も悪いことはしていません。 - 私はあの時出来ることは全ったつもりです。
→これ以上何をやれというの? - だから私が行ったことであなたを傷ついた行動全てに対して、謝ります。
→それが何だか私には何だかわかりませんが、悪いことをした全てについて謝ります。 - 許してください。
→過去は水に流して先に進もう。
つまりこれは謝罪に全くなっていない。では良い謝り方とは何か。Lerner氏は以下のように解説します(かなりシンプルにまとめています)。
- 「もし〜だったとしたら(if)」や「しかし(but)」などその直前の「ごめんなさい」を帳消しするリスクのある説明が入っていなく、端的で短い。
- 謝罪するあなた(謝り手)が主役ではない。あくまでも相手の気持ち(痛みや怒り)が主役である。相手が何故、あなたのとった行動により、怒ったり傷ついてたりしているのか。まずはそのwhyを自分の感情を一切挟まず、それだけに興味を持って聞いてあげ(これすごく難しそう←私の感想)、agreeするかどうかは別にしてそのwhyを正確に理解し、それが相手に伝わっていないとダメ。あなた自身の感情はここではなく別の機会にすべき。
- 自分が取った行きすぎた行動に対し責任をとり、それをもう二度とやらないという約束をその人(受け手)が理解しやすいダイレクトな表現で伝える。
ことだと言います。先程の母親に対し、Lerner氏はこうしたアドバイスをし、以下の手紙を書かせ、娘に送らせたと言います。
Deeちゃん
いま赤いソファの上に座ってあなたがどうしているか考えています。前回会ってからずっとあの時のやりとりについて考えています。感情的になってしまいごめんなさい。あなたから何も連絡がないということはもっと時間と空間が欲しいのではと勝手に捉えています。私に対し、気持ちをダイレクトにぶつけてくれて感謝しています。私はこういうオープンに物事を言える親子関係を築きたい。何故なら私自身母親とこういう関係を築くことができなかったからです。母親に対しイライラした時、一度も本人にそれを伝える勇気を私は出せませんでした。私があなたとの対立に対処できなかった理由の一つはそれかも知れません。
これは私の母から聞いた話ですが、彼女も自分の母親と常に喧嘩していて、最後は会話すらお互いしなくなったと言います。だから私と母はその逆で喧嘩こそしなかったが、そのせいで表面的な関係しか築けなかった。
親子の関係がどうあるべきか。ずっと考えています。あなたとは今までと違った関係を築きたい。私とあなたの間でこれ以上痛みを分かち合うのはもう想像したくありません。だからあなたがもう一度私と話す心の準備ができたらやり直しましょう。あなたの話を一生懸命聞く努力をします。
母より
ほーんと、この本を読んでていて、「何度も謝っているのに何で許してくれないんだ。心の狭い奴め。」と思った事件の数々を思い出し、猛反省。。。
謝罪の場はその後の両者の関係性に大きく影響を与える重要なコミュニケーションの場。しっかりと伝わる良い謝り方が出来るよう、意識してこうした学びを取り入れていきたいと思います。
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