ダメ出しではなく「良い出し」のススメ

ダメ出しではなく「良い出し」のススメ


positive reinforcement「良い出し(positive reinforcement)」という言葉はご存知でしょうか。「ダメ出し(negative reinforcement)」は部下や生徒などが望ましくない行動を取った瞬間にそれを指摘し、改めさせるために行うものに対して、「良い出し」は望ましい行動を取った瞬間にそれを指摘し、継続的にその望ましい行動を促すために行うもの。

ちょっとイメージしづらいと思うので具体的に書くと、「ダメ出し」は「ほら、そうやったらダメでしょう。こうしなさい!」と注意をするのに対し、「良い出し」は「今の**(具体的な行動)、とてもいいね!その調子で続けてね。」という伝える行為。

共に望ましい行動を促す目的で行うという意味では、同じコインの表裏みたいなものでしょうか。

しかしこの「良い出し」。「ダメ出し」より遥かに効果があるという科学的な調査結果が出ているのにも関わらず、学校や会社でほとんど実践されていないと行動分析学の専門家であるAubrey Daniels氏はいいます。

ほとんどの先生・マネージャーは「ダメ出し」ばかりに時間を費やし、「良い出し」を行わない。その為、望ましい行動が促されないばかりか、無視され続ける。結果、望ましい行動は消滅してしまう。

「昔に比べ、最近の若者(生徒)の仕事(勉強)に対するパッション(work ethic)が低下した」と多くのマネージャー(先生)がいうの共通して嘆く現状をDaniels氏は

これはマネージャーや先生と呼ばれる人たちは、長い間、良いパフォーマンスを無視し続けた結果そうなった。何をしたのかではなく、何をしなかったのか。それが原因で「望ましい行動」を消滅させてしまったことに気づかないといけない。

といいます。

「良い出し」と「ダメ出し」の比率をアメリカの学校で調査したところ、平均的に1:2だったと言います。しかし高くperformしている学校に限定すると、4:1の割合だったらしい。

母国語を学ぶ幼児を持つ家庭で「良い出し」と「ダメ出し」比率を6:1まで高めるように指導したところ、幼児の学ぶスピードが驚異的に加速したという調査結果もあるらしい。

これは試さない手はない!そこで私も昨年から企業研修でこの「良い出し」を積極的に取り入れはじめました。

Aubrey氏曰く、「良い出し」を行う際、大事なポイントは3つ。タイミング、具体的な指摘、回数であると。

1. タイミング
これが最も大事らしい。授業・就業時間が終わってから伝えるのではなく、望ましい行動が行われた直後に指摘してあげる。後になっての指摘だと、望ましかった具体的な行動がなんだったのかが見えにくくなってしまい、「良し出し」効果は激減すると。

2. 具体的な指摘
何が良かったか。どこの部分が望ましい行動だったか。具体的に指摘してあげること。大げさに伝える必要はない。あくまでもシンプルかつ具体的に伝えること。

3. 回数
例え同じ行動だったとしても、「望ましい行動」だったら何度でも繰り返し「良い出し」をやり続けないといけない。伝え続けないと定着しない。

このブログで良く書いているactive listeningのトレーニング。企業研修では、必ず冒頭で「わからない単語や表現が出てきた瞬間に議論を止めて聞かなければダメ!」と口酸っぱく伝えています。

そこで”Excuse me, I don’t understand what that means…”と誰か単語がわからず議論を止め、確認した人が出てきたとする。その瞬間、日本語で「今のタイミング、確認の仕方、本当に素晴らしい」と伝え、それがいかに貢献になっているか

「自分だけがわからないと思っているでしょ?多分ここにいる半分以上の日本人はわかっていないと思う。聞いてみましょうか?」と

実際に周りに聞いてみる。すると本当に半分以上わかっていない。本人自信がつくので、次回からはもっと堂々とできるようになる。また、周りも「本当にやってもいいんだ。」と思い、やり出す。

逆に明らかに誰も分かっていなさそうな単語が出てきた時に、誰かを当て、”Did you know really what ** means?”と当て、”I don’t know…”と言った瞬間に「やらなければダメではないか!」と叱ると言われた人は恥をかかされ萎縮するばかりか、それが周りに伝染し、逆にスキルが開発されない。

取り入れれば取り入れるほど、失敗を恐れずに楽しく学べる学習環境を作るのにこの「良い出し」の威力を実感します。

しかしこの「良い出し」。実際にやろうとすると難しい。

「出来て当たり前のことをわざわざ指摘する必要があるのか?」とか「調子に乗られたら困る!」と考えたり、そもそもダメなところばかりを探す習慣がすっかり身についてしまっているので、良い行動を探すアンテナ自体、立っていない人が多い。

そういう人には是非Daniels氏の著書、「ベストを引き出せー部下の業績を最大化するリーダーシップ」をまず読んで欲しい。そして、試して欲しいです。私が過去読んだマネージメント本の中でもTOP 3に入る本で、本当に勉強になります。

特に外国人部下を持つ人。「ダメ出し」しかしていないと優秀な人材はすぐ去っていきます。「良い出し」のやり方、早急に学んで取り入れることをオススメします。

参考記事
優れた従業員は会社を去るのではなく直属の上司を去っていく
分からないことをその場で「分からない」というスキル
任天堂世代には従来の教育は通用しない


Posted by Masafumi Otsuka

1

1

comments

Leave a Reply