新しい学び方

新しい学び方


Grange Elementary.jpgTED Conferenceの記事内で紹介しましたCreativity教育の第一人者であるKen Robinson氏が書きました“The Element”を読み、その中で大変刺激を受けた話がありましたので今回はそれを紹介したいと思います。私は常に知的好奇心を満たしてくれるものに飢えており、こういった話をヒントに今の自分の状況に応用することが出来ないかと発想を膨らませています。今回の話はグローバル人材育成のカリキュラムを作る際の大きなヒントになりました。これはある小学校に導入されたInnovativeなカリキュラムの話です。

イギリスの中部に位置するノッティンガムシャー(Nottinghamshire)にグランジ(Grange)小学校というとてもユニークな取り組みをしている学校があります。なんと学校の中にグランジトン(Grangeton)という町を作ってしまったのです。6年生から町長を選出し、学校に食堂、スーパー、お土産店、新聞社、テレビ局、ラジオ局、美術館や語学学校まで作ってしまい、その運営は全て生徒に任されています。

町長は学校運営(町運営)の決定権を一部担います。学校(町)は全て地域住民にも解放されているので、実世界の緊張感が出て、運営する側の真剣さが助長されます。例えばスーパーを担当している生徒は暗算や商品の在庫管理のために高度な計算が求められます。番組制作においては、脚本を作ったりする際の国語力、テレビ放送する際の技術力を実際の製作体験を通じて学びます。もちろん企画やマーケティング戦略についても考えなければなりません。テレビ局はBBC(英国放送業界)や大手スーパーのASDA等、民間企業のサポートの元、きちんと教育が施されます。

そもそもこの学校は俳優から1992年に教師に転身し、5年後に英国で最も素晴らしい教師の一人として表彰されたRichard Gerverが2002年に校長として赴任したところからスタートします。赴任当初、グランジ小学校は学区内最低のEランクに格付けされ、彼はその建て直しの為に派遣されました。「卒業するまでにどのような人材を育てたいか」というゴール作りから始まり、子供たちに毎朝学校に来るのを待ちきれない、しかも実社会に直結するカリキュラムを作れないか。この問題に自由な、Creativeな発想で挑戦したようです。学校内の科目はコミュニケーション(国語を含む)、企業(算数を含む)、文化(理科を含む)、態度(生活態度と体育を含む)の4つのみにしたといいます。

驚くべきことに2004年に実施された学力調査によるとこのプログラムが始まる前年比で、国語で91%(前年比+30%)、算数で87%(前年比+14%)、理科で100%(前年比+20%)の生徒が学力が向上したという結果が出たといいます。つまりこの仕組みの中でしっかりと学力向上が達成できたのです。今では学区内トップのAランクに格付けされているようです。

「とにかく生徒が学校が大好きで、校内(町内)で起こっていることについて熱く話します。何でも熱意を持って一生懸命ワクワクしながら取り組み、そして(その経験からくる)自信が(見ていて)伝わってきます。」と管轄の教育委員がコメントしています。

グランジ小学校の学習の仕組みを見ているとグローバル人材育成にも応用できるヒントが沢山あります。今回の話のように「すごい!」と思えるような話を既存の問題解決に何か応用できないか。これをActive Listening、Active Speaking双方習得を目的としたカリキュラムで出来ないか。いろいろな面白い話に触れ、議論していたらいつの間にか世界でも通用するコミュニケーション力がついていたと思えるようなカリキュラムを作れないか。楽をして達成するのではなく、一生懸命、ワクワク感を持って取り組んでいる内に目標が達成されてしまったというカリキュラム。これをずっと半年考えてきました。教材の試作品は出来つつありますので近いうちに公開し、皆さんの意見をお聞きしたいと思います。

ちなみにグランジ小学校のエッセンスをYou tubeで見ることができます。全て英語ですが興味のある方はご覧ください。

参考文献

The Element (Ken Robinson with Lou Aronica) page 244-246
http://www.alite.co.uk/about_us/trainers/richardgerver.html
http://www.futurelab.org.uk/projects/teachers-as-innovators/stories-of-practice/grangeton
http://www.innovation-unit.co.uk/images/stories/files/pdf/grangeprimary.pdf


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Sep 26
    2009

    Nao

    TED、まだ見れてないのですが(WEBはみた)早くチェックしたいです。大塚さんお勧めの「アイデアのつくり方」、すっごく良かったです。脳味噌が刺激されまくりで、この1-2年でおもしろかった本ベスト3に入ること間違いなしです。
    Creativityが今後は一番問われてきそうですね。うちの子供たちにもどうそういう能力を植え付けさせるか・・・。グラジントン、キッザニアみたいですね。キッザニアはそういえば2か月先まで予約いっぱいだというし、脳みそを刺激するんでしょうね。

    Reply
    Sep 28
    2009

    Masafumi Otsuka

    「アイディアの力」いいですよね。あれ、完全にタイトル負けですね。著者のChip Heathに「何であんなひどいタイトルにしたの?勿体ない・・・」とメールしたところ「私もあのタイトルには反対だったが出版社が『これでないとダメだ』といったのでしぶしぶ認めた」といっていました。私に翻訳させておけばよかったのに(笑)。。。
    TED絶対にお薦めですよ。私がお薦めした3本は見てくださいね。
    私は1982年にメキシコにあるキッザニアに遠足でいったことあるんですよ。あの時TVキャスターをやりました。何故か今でも覚えています。結構センスあったと思うのですが、ぜんぜん違う仕事をしています(笑)。あのテープ、残っていないかな~。

    Reply
    Oct 17
    2009

    新良幸太郎

    キッザニアは面白いですね。
    キッザニアの第一号をメキシコに訪ね、創業者にお会いしたことがあります。
    すごい遊び心を持った人を期待していたのですが、実際は元経営コンサルタント。
    家族や子供のニーズを緻密に考えて考えて、必ず成功するとの結論に基づいて、キッザニアは誕生するに至ったとの由。
    何か世の中に新しいものを送り出すのに大事なのは、創造性という言葉から連想される芸術的センス以上に、とことん考える力、かも。仮説検証中です。

    Reply
    Oct 19
    2009

    Masafumi Otsuka

    確かにそうですね。この2つのバランスが大切だと思います。起業するには相当エネルギーが必要でそれにはどうしても自分のアイディアを惚れ抜くメンタリティーが必要です。それと同時に客観的に見る目も必要で、恐らくその創業者以外に遊び心が強いパートナーがいたのではと勝手に予想しています。違っていますか?

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