何故説明がうまく伝わらないのか

何故説明がうまく伝わらないのか


Explanation is the art of not just packaging facts but presenting them in a way that answers the question “why?”–as in, why should I care?
-Lee Lefever
講演を聞きにいったが、話が難し過ぎてうまく伝わってこず、「あれれ?」と消化不良を起こして帰ったことはありませんか。私は良くありますし、自分が話す時、そうなっているのではないかといつも心配しています。何故こうなってしまうのか。
ちょうど先日読んでいた”The Art of Explanation“という本の中に、「なるほど!」と思うストーリーを発見。これはある心理学者が行った実験で、まず「机をたたく人」とそれを「聴く人」の2グループに別け、「机をたたく人」に誰でも知っている簡単な曲(例えばハッピー・バースデーやアメリカ国歌など)を頭の中で歌いながら机をリズム良くタップしてもらい、「聴く人」はその曲名を当てる。単純なゲームをやらせたようです。
合計で120曲「机をたたく人」にタップさせたといいます。実験を始める前に「机をたたく人」にどれくらいの確率で正しく「聴く人」が当てられると思うかと聞いた所、50%と答えたそうです。しかし結果はびっくり。「聴く人」は120曲中、たった3曲しか当てられなかったといいます。正解率たった2.5%!
この心理学者はこの現象を「知識の呪い(The curse of knowledge)」と命名したそうです。
The Art of Explanation何故こういったことが起きるのか。たたく人は自分の頭の中で曲を歌いながらタップしているので、「こんな簡単な曲、伝わってに違いない」という感覚でいますが、聴く方はたたき手と違い、頭の中で曲が聞こえないので、いくらリズムよくタップされた音でも何かの暗号にしか聞こえない。これ、私も何人かに実験してみたのですが、タップしながら相手の首を傾げている表情をみていると「何でこれが分からないのか」と不思議な気分になります。是非やってみてください。
説明する方は自分の頭の中では全て情報が整理されているのでいいが、相手は全く整理されていない中で、初めて聴かされるので、理解出来ない。このギャップ、「一度自分の中で分かってしまうと、分からない状態がどういう状態なのかが分からなくなってしまう」。説明する側は持ってしまった「知識」に呪われてしまうのです。
ではどうしたらこの呪縛から解放出来るのか。そこで冒頭の引用。いつも通りスーパー意訳をすると
「本当に人に伝わる説明をする為には単に知識やデータをパッケージ化し、淡々と話すのではなく、『何故聴き手があなたの話を聞き続けなければならないのか』という問いを絶えず答え続ける感覚でいなければならない。」
そうして次回、誰かに「どんなお仕事をされていますか」と聞かれた時、そのまま額面通りに捉え答えるのではなく、質問内容を「何故私があなたの仕事に興味を持たなければいけないのか」に置き換えて答えべきと「なるほど!」と思いました。これが「知識の呪い」から解放される方法だと。
深い!この視点、今後強くを意識していきたいと思います。ちなみにこの本、「どんなビジネスでもサイトのトップページで『何をやっている会社か』や『どんな商品をつくっているのか』を2分程度動画で紹介するビデオを作るべきだ」とその本当に伝わるノウハウが詰まった本で超面白いです。いまのMANABI.stのサイトがいけてないので早速私も作ってみようと思い、著者にどんな機材を使えばいいのか等メールしてみたところ、何の惜しみなくすぐ教えてくれました。「説明の美学」というタイトルだけに非常に分かりやすい英語で説明しているので是非読んでみてくださいね。

Posted by Masafumi Otsuka

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