人材育成のプロがいない日本企業

人材育成のプロがいない日本企業


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私は仕事柄、外資系企業と日本企業の人事(研修担当)の方と話す機会が多く、話す度にいつも大きな違いを感じます。それは社員をお客さんとして見ているかです。

外資系企業の人材育成担当者(といってもほとんどが日本人)はいま現場の最前線で活躍している社員の動向、彼ら彼女らが何に困っているのか。日頃から対話しつつ、世界の流れ、それに伴って求められているスキルの変化等、高いアンテナを立てて追っているのが話していてよく伝わってきます。社員を「お客さん」と考えている。

対して日本企業。特に大企業の人材育成担当者。私も以前、都銀に勤めていましたが、とにかく人事部(特に非製造業)は将来の幹部候補、エリートが社内人脈作りのためのワンストップでいる場合が多く社内での立場が異常に高い。社内では社員よりも人事部の方がお客さんになっているケースが多い。

どちらをお客とみるか。この視点で見ると研修が決まるまでのプロセスから終了後の効果の測り方がまるで変わってきます。ここが面白い。

外資系企業の場合、予算も決裁権も担当マネージャーが大体持っていますので、良いと思えば、事前の打ち合わせと一枚の提案書ですぐに導入してくれます。「では来月からお願いします」という例も少なくありません。

研修が良かったかどうかは受けた社員(お客さん)の評価で決まります。この評価がそのまま人事担当者の評価に直結します。評価方法は研修後に取るアンケートのみ。そのアンケートも「期待していたものとズレがなかったか」、「今日学んだことがすぐに業務に活用出来るか」等、非常にシンプルで書きやすく作っています。社員はお客さん感覚でいるので厳しいことを正直に書きます。

またアンケートは必ずシェアしてくれます。これは本当にありがたい。何が良かったか悪かったかが分かるのでプログラム内容を改良出来ます。ただ、悪いアンケート結果が出ると絶対に次は呼ばれません。5年位前に行った研修でアンケートにひどくに書かれ、担当者にどなられ、以降呼ばれなくなった苦い経験があります。それだけアンケートを重視します。

対して日本の大企業の人事担当者。社員から評価を受けるというよりも自分たちが社員、研修プログラムを評価する。でもそれを客観的に評価する指標が社内にないから外部のテストに頼ろうとする。

TOEIC®や最近ではBULATSの点数の伸びで効果を測ろうとします。終了後のアンケートも取ったり取らなかったり。そもそもアンケートをとってもお客さんが人事なので社員は正直な感想を書くことが少ない。

研修の決め方も人事担当者が決裁権を持っていないケースが多いので、とにかく導入まで時間がかかる。稟議書を書く為なのか、とにかく資料を沢山求められます。以前ある日本の大企業に60枚位の提案書を書きました。ある研修会社は100ページにもわたる書類を提出し、会計事務所までも変えさせられたという話も聞きました。ただ一度採用されると余程ヘマをしない限りはずっと続く。

私は日本企業で良く講演に呼ばれますが、長期研修はいままでほとんど入れさせてもらったことはありません。大部分が外資系企業です。「Discussionの行い方」等研修の提案には行くのですが、開発するスキルがテストで測れない以上、「効果測定は?」聞かれ、いつも困ってしまいます。効果測定できればいいのですが、開発しているGlobal Communication Skillが最近急に求められ出した英語力とは違うスキルなので測りようがない。変に入れてしまうとその対策をやらざるを得ず、本末転倒になってしまうので気が進みません。

もちろん英語によるコミュニケーション力が取れずに困っているのは圧倒的に外資系企業に勤めている日本人が多い(逆に日本企業の場合は現地法人や買収された企業の外国人社員が本社とうまくコミュニケーションが取れずに困っています)というのもあります。

ただ、最近大手日本企業に「効果測定は一番始めに撮るビデオと最後のビデオの比較でも良い」と言っていただき、はじめて長期研修を入れてもらった所をみると、ちょっと変わって来ているのかもしれません。担当窓口は人事部ではなく事業部でしたが。。。


Posted by Masafumi Otsuka

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