米トップMBA教授が考える「才能より大切なもの」

米トップMBA教授が考える「才能より大切なもの」


Nurturing Talentピグマリオン効果をご存知でしょうか。1960年代後半にハーバード大学の心理学者、ローザンタール氏が行った面白い実験で、「才能」について非常に考えさせられます。

この実験。まずカリフォルニア州のある小学校入っていき、ハーバード大学で開発されたIQテストを1年生から5年生まで、生徒全員に受けさせます。そして各学年上位20%の生徒達(intellectually blooming students)が誰かを先生に伝える。その後、毎年このIQテストを全生徒に受けさせ、この「特別な生徒達」が他の80%をどれだけoutperformするかをtrackingする。

1年後、特別な生徒は他の生徒に比べ約15ポイント、2年後でも約10ポイント高いIQ点数を出したといいます。これ自体別に驚くべきことではありません。しかし、その後ローザンタール氏は驚くべき事実を発表します。

「実はIQテストの上位者といって伝えた20%の生徒は、テストの点数ではなく、全くのランダム(無作為)で選んだ」

と。そうして実験の目的が:

先生が「この生徒は特別」と信じた時、他の生徒に比べ果たして接し方を変えるか。そして、その結果その生徒のパフォーマンスにどのような影響を与えるか調べることだった。

と。何しろハーバード大学のIQテストでお墨付きをもらっている生徒達。当然先生たちはこうした生徒を特別扱いしたといいます。

  • より頻繁にコミュニケーションを図り
  • よりチャレンジングた宿題をあたえ
  • 絶えずモチベートをするよう、フィードバックを与え続けた

こうしたことが生徒に自信を与え、学習を楽しくさせ、成績を向上させるという好循環を生む。

give&takeこの話、つい最近読んだThe Wharton Schoolの最年少教授、Adam Grant氏が書いた「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」という本に出ていて大きく考えさせられました。Grant氏曰く、

ビジネス界、スポーツ・芸術界問わず、優秀な人材を育てるコツは、「まずは才能(raw talent)の発掘し、次にいかにやる気(motivation)をださせるか」とずっと信じられて来た。しかし、どうも最近の調査でこれは逆だということが分かって来た。Motivationこそ才能を創り出す源であると。

そして続けてさらに面白い実験を持ち出します。

1980年代にある学者が21名の国際大会で決勝まで残ったピアニストをインタビューし、どのような環境で才能を伸ばしていったかを調べたと言います。そこで分かったことが面白い。ほぼ全員、特に若くして目立った才能を見せなかったという。町の小さいコンクールですら勝っていない。さらに深く調査してみると誰一人として一番始めのレッスンを著名な指導者から学んでいない。近くに住んでいる先生から学んだと。ただ、この21名が共通していったことはこのピアノの先生が非常にやさしく、忍耐強かったこと。音楽の楽しさを教え、ピアノを弾くのをワクワクさせたということ。

これはピアノに限りません。テニスの世界ランキングでトップ10に入った18名のアメリカ人テニス選手に同じ調査をした所、全く同じ結果が出たといいます。

Motivationこそ才能を創り出す源。出来ないのは「生徒が悪い」のではなく「生徒をうまくMotivate出来ない指導者が悪い」のではないか。ピグマリオン効果。指導者の質が問われているように感じました。


Posted by Masafumi Otsuka

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