英語の会議に参加できない4つの理由
「英語の会議に参加する為に、どのように英語力を上げていけば良いのか?」とよく聞かれます。私は英語力よりも
話の内容が分からなくなった瞬間に話し手を遮り、どこが理解できないのかを具体的に伝え、理解できるまで何度でも確認するスキル
を身につける方が大切だと答えています。すると
「英語力よりもそんな当たり前のことが何故大切なんですか?」
「そもそもそんな当たり前のことをスキルと呼べるのですか?」
と驚かれます。しかしこれは「当たり前」ではないし、「簡単に出来ること」でもありません。今回は何故これが英語力以上に身につけるのに難しいスキルなのかについて書きたいと思います。
そもそもある程度英語力ないと英語の会議になんて呼ばれません。みなさん嫌という程TOEIC®を勉強させられているので、呼ばれる方は少なくても730点以上は持っています。730点以上を持っていればこうしたグローバル会議に参加する為の英語力は十分持っていると考えて間違いない。
英語で行う会議では世界中からネイティブ、非ネイティブ問わず、利害関係者が一同に集まって、その場で意思決定が行われる。呼ばれた以上、より良い意思決定が行われるために、発言が求められますが、いま話されていることを100%理解出来ていないと、意見など出せる訳がありません。
ネイティブ、非ネイティブが集まると、当然同じ単語でも違った意味で使ったり、発音も癖があったりと、こまめに内容を確認しないと、今何について話しているかを理解するのは、ほぼ不可能です。
実際、日本人以外に参加している非ネイティブの話を聞いていると、分からない単語が出てきた瞬間に”Wait, what do you mean by **?”と聞いたり、”So you’re saying…, right?”とか”So you mean…, correct?”と、絶えず内容を確認をしたりしています。ネイティブですら場面場面、ちゃんと確認している。でもほとんどの日本人はやりません。
何故やらないのか。それは、
話の内容が分からなくなった瞬間に話し手を遮り、どこが理解できないのかを具体的に伝え、理解できるまで何度でも確認する
ことは日本人として守るべきコミュニケーションルールを少なくても4つ破っているからです。
ルール1:話の腰を折ってはいけない
日本では誰かが何かを説明している時、「話の腰を折る」ことは相手に対し、極めて失礼になります。子供の頃から「最後まで人の話を聞きなさい!」と何度も注意されてきているので、育つ過程で無意識に人の話を遮ることが出来なくなってしまいます。
ルール2:分からないことがあったらまずは自分で調べてから相手に聞く
子供の頃、分からないことをその場で聞くと「聞く前にちゃんと自分で調べたか?」と誰しも叱られた経験はあると思います。私は帰国子女で12歳の時にアメリカから帰国し、日本の小学校に編入しました。
今でも鮮明に覚えていますが、先生が授業中に「何か質問ありませんか?」といったので、すぐに手を挙げ、分からないことを質問したところ、「そんなことも知らないのか?後で自分で調べなさい。」と教えてもらえない上、恥もかかされました。調べもせずにすぐ聞くのはズルをしている感覚を覚える。
大人になる頃には人に聞く前に、後で調べようと無意識行動してしまう。分からないことをその場で分からないと言えるはずがありません。
ルール3:考えはまとめてから話す
分からなくなった瞬間に遮り、どこが理解できていないのか具体的に聞く。1対1ならまだしも、5人とか10人とかいる場で、一瞬で考えをまとめ、具体的に聞くのは、普段から練習していないと相当ハードルが高い。
英語でこれをthink out-loud (話しながら考えをまとめていく)といいますが、日本ではまずこれをやらない。子供の頃、考えがまとまっていない状態で何かを説明をしようとした時、「結局何が言いたいんだ。考えはまとめてから話しなさい!」と注意される。
注意され続けると大人になるころには、何か質問があってもまずは紙に書き出して、まとめてから聞こうとする習慣が身についてしまいます。
しかし、英語の会議でこれをやろうとすると話が先に進んでいってしまい、聞くタイミングを逸してしまう。
ルール4:何度もしつこく聞かない
理解できるまで何度でも聞くというのも相当ハードルが高い。「頑張って一度は聞けても二度目は聞けない」と良く相談を受けます。説明をしている相手に対してもそうですが、他にいる参加者に対しても「自分だけが分からないために時間を費やす」のは失礼にあたるのではないか。
特に子供の頃から「人に迷惑をかけてはいけません」と口酸っぱく言われ続けると、一度聞いて理解できなかったら、無意識に諦めてしまう。
【日本語】という言語はこういった【日本人のコミュニケーション・ルール】を守りながら使用されています。根回しが日本人にとって何故、最適な意思決定手段かというのも、こうしたルールに制約されていることを考えると良く理解できます。
問題は、自分がそもそもこうしたコミュニケーション・ルールを守っているという意識をほとんどの日本人は持っていない。だから【英語】使う際も、【日本人のコミュニケーション・ルール】で使おうとしてしまう。
ただ【日本人のコミュニケーション・ルール】では、
話の内容が分からなくなった瞬間に話し手を遮り、どこが理解できないのかを具体的に伝え、理解できるまで何度でも確認する
ことが禁止されている為、これが出来ず、英語の会議で、すぐに置いていかれてしまう。意見を出すどころか、一言も発せず終わってしまう。
何十年もやって来たこと、それも無意識でやって来たことの正反対のことをやれと言われても簡単に出来るはずはありません。言語以上に、コミュニケーションの取り方を変える方がはるかに難しい。
私は7年以上、「英語での会議でいかに発言・貢献していくか」の企業研修を行っていますが、トレーニングはまず、ここから入ります。【英語】を【日本人のコミュニケーション・ルール】で使っている現状を参加者に理解してもらった上で、英語より先に【グローバルのコミュニケーション・ルール】のトレーニングからはじめる。今でも試行錯誤していますが。。。
参考記事
分からないことをその場で「分からない」というスキル
日本人のグローバル化を阻む3大マインドセット
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