ベストな事業計画ではなく、情報共有システムが勝つ

ベストな事業計画ではなく、情報共有システムが勝つ


Best Intelligence Wins2003年のイラク戦争。当時米統合特殊作戦コマンド司令官として着任したマククリスタル中将は当初、敵のテロ組織、アルカイダの動きを全く把握できなかったらしい。

PDCAのサイクル(現場や情報機関から情報を吸い上げる → 情報を分析、ターゲットを選定 → 計画を策定 → 計画の実行 → 実行後のレビュー)をどんなに早く回しても、敵の動きは常に一歩先をいっており、突入しても敵は既にいない。逆に奇襲攻撃をかけられたりする。

そこで、マククリスタル中将はこのやり方を変える決意をする。

毎日、午前9時(ワシントンDC時間)= 午後4時(イラク時間)から2時間のオペレーション&インテリジェンス(O&I) という情報共有ミーティングを持つ。

このO&Iミーティング。現場の一兵卒でも誰でも参加できる。何か情報を持っている人は1分間、それを共有する時間が与えられる。そして、その後4分間の質疑応答に答える。

情報は整理されていない、粗いもので良い。情報鮮度はすぐに落ちる。早くシェアすることが優先されるため、粗い、整理されていない情報が求められた。

さらに、本部がプランを考え、現場に実行させるという従来のやり方をやめ、本部は鮮度が高い生情報だけをそのまま現場に共有。計画の制定から実行までを現場に一任するという方式に変えたとのこと。

結果どうなったか。

マククリスタル中将がイラクに着任した時、敵の襲撃に成功する月間平均回数は10回程度だったらしい。それがこのO&Iが導入してから300回以上に増加したとのこと。

Nine Lies About Workこの話、最近読んだNine lies about workという本に書いてあり、大変刺激を受けました。

著者のBuckingham氏とGoodall氏曰く、

これは何も軍に限った話ではなく、ビジネス世界でも全く同じ。特に最近、顧客のニーズなど、変化のスピードがあまりにも早く、9月に作った事業計画が11月には既に時代遅れになっている可能性が高い。

さらに、計画を立てている経営者やマネージャーが、現場からあまりに遠く離れているため、事業計画(プラン)を立てるための生情報を持っていないケースが多い。

と。実態に合っていない事業計画だけが上から降ってくる、現場の悲鳴が聞こえてきそうです。

ではどうすれば良いか。変化の激しい業界にいる経営陣はマククリスタル中将の取った戦略を応用すれば良いと。つまり、

  1. 誰もがリアルタイムで自由に共有・閲覧できるシステムを作る。情報は加工しない。正確な生情報が常に出ているようにする。
  2. 現場にいる人たちがどの情報に着目し、実際に使っているのかを注意深く観察する。
  3. 現場にいる人たちがその情報をうまく活用し、良い計画を立て実行するとを信用する。

計画を立てること自体が悪いといっているわけではない。ただ変化の激しい業界では経営陣が考えるベストの計画(plan)が上手くいくという発想が間違っていると。

ベストのプランが勝つのではなく、情報共有システムが勝つ。心に留めておきたいと思います。


Posted by Masafumi Otsuka

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