どん底の先にあるもの

どん底の先にあるもの


fringe_benefits.jpgIt is impossible to live without failing at something, unless you live so cautiously that you might as well not have lived at all–in which case, you fail by default.
–J.K. Rowling
2005年Steve Jobs氏がスタンフォード大学の卒業式で行った”Stay hungry, stay foolish”で締めくくられた伝説のスピーチは日本でも有名ですが、ハリー・ポッターの作者、J.K. Rowling氏が2008年にハーバード大学の卒業式で行ったスピーチはあまり知られていません。
Rowling氏は今では知らない人はいない大作家ですが、そのスピーチの中で、若い頃、「小説家になりたい」と思う自分と「そんなの夢物語を語ってないで現実を見なさい」という両親の希望の間でひどく悩んだといいます。共に大学を出てなく、裕福ではなかった両親は大学で英文学を専攻することを許さなかったといいます。そしてドイツ語を専攻するということで妥協する。しかし授業に出ても面白くない。そこで両親に内緒で学部を英文学に勝手に変えてしまう。

その後就職しながらちょくちょくと小説を書くも、なかなかうまくいかない。結婚、出産を経て離婚。娘と共に家を追い出され、職もなくホームレス一歩手前の生活に20代後半、突然転落したといいます。両親の懸念が現実のものとなったのです。しかし逆にどん底に落ちたお陰で「(プライドを含め)自分にとって不必要なものを全て捨て去り、裸一貫となり自分にとって大事なモノが見え、それに全エネルギーを費やす。自分の中でこれ以上失敗することのないと思えるくらい大きな失敗をしたが、それでも残っているもの。愛する娘と小さなタイプライターと壮大なImagination。」この価値に気づき、一気にハリー・ポッターを書き上げたといいます。
そこで冒頭の言葉を言います。いつも通りスーパー意訳しますと、「失敗を避けて生きるのは不可能です。もし、失敗を恐れるあまり細心の注意を払い失敗をしない生き方をしたとしたら、それ自体が人生の失敗となる」と。大変にこころに刺りました。
私も昨年、倒産一歩手前まで追い込まれ、7年間一緒に頑張った唯一の社員に辞めてもらうというどん底を体験。そこで自分にとって何が大切なのか、自分が本当は何がしたいのか、ようやく気づいたような気がします。
もちろんまだまだ成功の尻尾も見えてきませんし、お金もほとんど底をついています。しかし、いま過去38年間生きてきた中で一番楽しい。本当にやりたいこと、自分にとって大切に思うことだけをやる。みんなにいい顔するのではなく、自分にとって大切と思える人とだけお付き合いする。こうした重要さに気づかされました。
そういった意味で今の自分をラッキーに思えます。自ら進んでそんな状況に突っ込んでいくことはまず出来ません。貧乏は嫌ですし、失敗して恥をかきたくない。でもいざどん底に落ちた時に何を感じるか。JK Rowlingさんのスピーチ、何度見ても大きくinspireされます。スピーチは以下より是非ご覧ください。字幕はありませんが、Scriptはこちらよりご覧いただけます。

J.K. Rowling Speaks at Harvard Commencement from Harvard Magazine on Vimeo.


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Nov 28
    2010

    Pocoruco

    大塚さん 今回のブログは大塚さんのBreak throughを感じさせてくれる素晴らしい内容ですね。言葉の重みを感じます。「自分の中でこれ以上失敗することのないと思えるくらい大きな失敗をしたが、それでも残っているもの」という言葉は刺さります。私の場合、自分のプライドなどくだらんと思いながらも、いつもプライドに縛られている自分がいます。先日会社の役員からフロアー一面に響く声で怒られ、馬鹿扱いされて初めて、妙にすっきりしました。今まで自分が恐れていたものは何だったのか?先週の金曜日の英語の会議でも能力の無さを露呈しへこむ。でも、振り返ってみれば、大した話ではないです。大切なのは自分らしさに気付き、自分の求めることを実現することです。自分が実現するのだというコミットメントを持つことこそがリーダーシップだと自分なりに整理できました。自分のコアのValueに気付き、それを実現させようとコミットする。そのコミットメントを持ち続けられるかどうか。そう気がついたら、世の中の見え方が少し変わってきました。トライ&エラーの重要性もいつも身を持って示して下さり、ありがとうございます。僕もこれで一歩進めそうです。

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    Nov 29
    2010

    Masafumi Otsuka

    Pocorucoさん コメントありがとうございます!そういっていただけると書いてよかったと心から思えます。
    > 役員からフロアー一面に響く声で怒られ、馬鹿扱いされて
    Don’t take it too seriously! トライするから怒られる。怒られていなかったら何もトライしていない証拠と大きく割り切って、思いっきりトライしてみる。私も心がけなければいけません。先日読んでいた本で出ていた”You either succeed or learn!”という言葉を思い出しました(笑)。

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    Dec 03
    2010

    高木芳紀

    大塚さん、昨日はどうもご馳走様でした。お店まで指定しておいて何だか恐縮です。
    昨日はわたくしの名刺作りについて「可能性がある!」とお言葉いただきましたが、わたくしも逆に大塚さんのお話を聞くうちに、思いがすごく共感できました。
    まさにglobish(綴り自信ありません)の時代、求められるのは、というか本当に必要なのは、高度なビジネス英語の点数ではなく、国際社会でのコミュニケーション能力であると。そしてそれで苦しんでいる(ディスカッションに付いていけない!)日本人はどれほど多いことか!
    もう、大塚さんが先頭を切ってムーブメントを起こすべきときは近いと思いました。名刺で少しでもお手伝いできれば光栄です!

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    Dec 03
    2010

    Masafumi Otsuka

    こちらこそ楽しい時間をありがとうございます。ムーブメント起こしていきますよ!高木さんが作ってくれる名刺を武器に(笑)!
    名刺がグローバルコミュニケーションツールになる(もちろんグローバルに限りませんが)とは本当に盲点でした。目から鱗です。
    ほ~んと、楽しみにしています。

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    Dec 04
    2010

    平戸良周

    お久しぶりです。非常に心に刺さる内容でした。
    今はリスクの少ない生活ですが、このまま人生を終えて自分に何が残るのだろうか、と最近考えることが多いです。自分が本当にやりたいことは何なのか、それが見つかるかどうかで人生は大きく変わるのでしょうね。
    「今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま繰り返してもかまわないという生き方をしてみよ。」(『ツァラトゥストラはかく語りき』)
    まだ八丁堀におりますので、またランチでもいきましょう。

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    Dec 05
    2010

    Masafumi Otsuka

    平戸さん、ご無沙汰しております!
    > 「今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま
    > 繰り返してもかまわないという生き方をしてみよ。」
    う~ん。深い言葉ですね!「明日死ぬと分かっていて、いまと同じように一日を過ごすか?」とジョブス氏がいった、スタンフォードのスピーチを思い出します。
    ランチ行きましょう!またメールしますね。コメントを頂き、ありがとうございます。やっぱりこうして反応をいただけると非常にうれしい!

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