大人が幼稚園児に必ず負ける知的ゲーム
The Marshmallow Challengeというゲームをご存知でしょうか。20本のスパゲッティー、テープ(長さ1メートル)、糸(長さ1メートル)そして1つの大きなマシュマロを使ってチーム毎に競う単純なゲームで、ルールは簡単。制限時間18分以内にスパゲッティー等3つのツールを使って土台を作り、最後に一番上にマシュマロを乗せる。倒れたらアウト。競うのは各チームのマシュマロ・タワー(!?)の高さです。
ちょうど2週間前にサンフランシスコでビジネスモデルをデザインするワークショップに出た時にやりまして、大きなEye openerでしたので今回はこれを紹介したいと思います。これ、やばいです(笑)。
1グループ5名、15グループくらいに別れたでしょうか。必死に皆で考えてマシュマロを乗せても倒れない土台を作り励みました。あっという間に18分が経ち、各チーム一斉に完成したマシュマロ・タワーから手を離す。するとバタ、バタと倒れる音が。。。
結局ほとんどのチーム、最後にマシュマロを乗せた瞬間、土台がその重みに負けてしまい、倒れてしまい、手を離してもきちんとマシュマロ・タワーが立っていたのは4チームのみ。幸い私のチームは25センチくらいの高さで3位。まあ、そんなことはどうでも良いのですが、終了後に何故こんなことになってしまったのか皆でDiscussionしました。
するとほとんどのチームは”So how do you want to do this?”みたいな感じから入り、みんなでどうやって強く、高い土台を作るか考えに考え、紙に書き出す。ここまで10分以上費やす。そこから大急ぎで設計通り作る。そして終了のベルがなる直前にマシュマロを乗せ、結果を神に委ねる。こういうやり方でやっている。
私のチームも同じようにやり、立っていたのはラッキーだっただけでしたが、Discussion直後に見せられたビデオにびっくり。これはPeter Skillmanという人が発案したゲームで、「これは面白い!」と思ったTom Wujecという人がこのゲームを色々な国々、職種、年齢層で実施。その結果を後にTEDでプレゼン(最後に埋め込みます・日本語字幕付きですので是非御覧下さい)したもので、そのデータを見て衝撃を受けました。
Wujec氏によると、このマシュマロ・チャレンジの職種毎のランキング(平均の高さ)は
MBAの学生 < 弁護士 < CEO < 幼稚園児 < 建築家
だという。あれれ、幼稚園児!?幼稚園児がMBAの学生、現役の弁護士、CEO集団に勝つって。。。
どうしてこんなことが起きるのか?Wujec氏曰く、
「幼稚園児は相談以前に誰かがいきなりシンプルな土台を作りはじめ、マシュマロを乗っけてしまう。うまく安定して乗ることを確認してから、次はもっと高いものが出来ないかと、常に手を動かし、作ってみては、マシュマロを乗せ、失敗したら、弱い部分を補強しながら次々に高さを上げていく。だから制限時間が来て、はじめてマシュマロを乗せる大人のやり方と違い、既に実証されたものが残るので、ほぼ全チームマシュマロタワーは崩れず立っている。」
と。うーん。何だか考えられます。
どうしても新規商品・サービスを考えるとき、やりがちなのが、
- じっくり時間をかけて穴のないビジネスプランを作る。
- 投資家を見つけ(大企業の場合承認が降りたら)、予算を一気に注ぎ込んで、プラン通りに商品・サービス化する。
- そして市場に出して勝負する(顧客はここではじめて商品・サービスを見る)。
でもこれでは最後にマシュマロを乗せて後は神に委ねる方法とあまり変わらず十中八九失敗してしまう。
「アントレプレナーの教科書」の著者で起業家教育の旗手スティーブ・ブランク氏曰く:
“No business plan survives first contact with a customer.”
と。1987年にモトローラ社が当時の円換算で6千億円以上注ぎ込んで作った衛星携帯電話イリジウムを例に語っています。
今までprototypingというコンセプトは本とかで読んだりして分かって気になっていましたが、今回このマシュマロ・チャレンジを体験し、「なるほど!」と深く落ちました。まず作ってはテストしてみては捨て、また作り直してはテストをしていく。
今回シリコンバレーに行き、色々な起業家と話すと皆この感覚でいる。それも自分とは全く違うスピード感で繰り返している。このスピード感が圧倒的に足りていない自分を痛感しました。
幼稚園児にだけは負けないよう、おじさん頑張ります!The Marshmallow Challengeについて詳しく知りたい方はこちらを御覧下さい。
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