メールの処理から仕事を始めない方が良い

メールの処理から仕事を始めない方が良い


no_emailsIt would probably be best if managers went to the IT department and asked that e-mail not be distributed between eight and eleven every morning.
- Dan Ariely, Duke University, 行動経済学部教授

ここ数年、雑誌や本の中で「仕事ができる人=メールの返事が早い」というのが定着してきて、ずっとそれが出来ていない自分に負い目を感じていました。最近はメールよりさらにすぐにレスポンスが要求されるLINE、Facebook Messenger等、インスタントメッセージが主流になってきて、さらに強い負い目を感じています。

manage-your-day-to-day周りからはすでに「 仕事できない人」の烙印を押されていますが、1年くらい前に、MANAGE YOUR DAY-TO-DAY: BUILD YOUR ROUTINE, FIND YOUR FOCUS & SHARPEN YOUR CREATIVE MIND (99U著)という本を読んで、「まあ、いいか…」と、この負い目をLet go出来るようになりました。

Creative系の仕事に着く人達向けにいかに高いアウトプットをコンスタントに出す方法はないかについて研究したこの本。アート界、ビジネス界、学会等各界を代表する方々による共著で、特に近年スマホの爆発的な普及やテクノロジーの進化により、より高い効率的に高いアウトプットを出せると思われがちだが、逆にこれらがDistraction (邪魔されること)を生む原因となり、アウトプットの量のみならず質まで下げていると問題提起。その一例としてあげていたCentral Connecticut州立大学の研究チームが行った実験が面白い。

学生を2グループに分け、両グループに同じ本を読ませるタスクを与えた。片方の学生にはスマホの電源を切らせ、本を読むことに集中させる。もう一方の学生にはスマホの電源をオンにしてインスタントメッセージ(Facebook Messenger等)のやり取りを許可する。そして本を読み終えるのにどれくらい時間がかかるかを測る。結果、インスタントメッセージのやり取りをしていた学生の方が25%以上、本を読むのに時間がかかったと言います(インスタントメッセージでやり取りしていた時間を除く)。さらに本の内容を両グループにテストしたところ、インスタントメッセージのやり取りをしていたグループの方が圧倒的に理解度も低かった。

つまり生産性が落ちるばかりか、その質も落ちる。そしてその理由についてこう説明します。

一つのタスクに集中力を持っていくのにはある一定の時間がかかる。それをたった一本の電話、メールに対してレスポンスをするために中断。終わったら元のタスクに戻れば良いと考えがちですが、また一から集中力を作り直さなければいけない。逆に時間がかかってしまう。

brain_rulesと。Brain Rules(John Medina著)という我々文系の人間でも分かりやすく脳の仕組みを解説した本(これオススメです)にも、似たようなことが書いてあったのを思い出しました。Medina氏曰く

歩きながら話すこと(クラシック音楽をバックグラウンドに本を読むこと)をマルチタスクと呼ぶのであれば人間はマルチタスクができるかもしれない。ただ「集中すること」に関していえば、脳は二つのことを同時に集中することができない。つまりマルチ集中は出来ない。ある研究によると「人はある一つのタスク(例えば報告書作成等)に集中している間に邪魔が入る(メールや電話が入る)と、そのタスクを終わらせるのに、邪魔が入らなかった時に比べ50%以上時間がかかってしまう。時間だけではなく、50%以上多く間違いを犯してしまう。」

と。ではメール等、入っても無視して今与えられたタスクに集中すれば良いのかといえばどうもそんな簡単なことではないらしい。MANAGE YOUR DAY-TO-DAYの本にもう一つ面白い実験が書いてありました。

2011年にコペンハーゲン大学の心理学者が学生たちを2グループに分け、パソコンでできるあるタスクを与えた。始める前に両グループに終わった後、そのご褒美として、funny video(面白いビデオ)を見えると約束。一方のグループにはパソコン上にタスクの画面だけを表示し、もう一方のグループにはタスクとそのビデオの再生ボタンが見える状態で作業をさせる。すると後者の方が圧倒的にパフォーマンスが低かった。

と。つまり電話、メール、インスタントメッセージ等、邪魔が入っても無視するという強い意志を持ってタスクに集中するのもダメらしい。全くDistraction(邪魔)が入らない環境(全ての機器の電源を切るなど)を自ら作らないと生産性・質ともにあがっていかない。

最近のテクノロジーの進化が生んだ新たな現代病が発生したと考えると面白い。冒頭の引用。こうした現代病を解決する一つの方法としてSuggestされていたのが:

会社の生産性を上げたかったら社長は午前8時〜11時まで社員にメールが届かないようなルールを作るべき。人は朝がもっとも脳がactiveな状態である。出社して一番にメールを開き、それらを片付ける為に、そのエネルギーを費やしてしまうほど勿体ないことはない。脳が疲れてしまい本来やらなければいけない仕事に対する意欲が湧いてこず、「明日にしよう!」と先延ばしにする。そしてその明日も結局は同じことになる。朝にメールの処理から1日をスタートするほど悪い習慣はない。

と。ということで弊社、といっても私一人しかいませんが(笑)、午前中はメール・SNS・インスタントメッセンジャー等は基本的にみませんのでご了承ください。お陰でブログの更新頻度が上がってきました。


Posted by Masafumi Otsuka

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