任天堂世代には従来の教育は通用しない

任天堂世代には従来の教育は通用しない


Morningside Academy米フロリダ州にあるMorningside Academyという学校。創業者のKent Johnson博士曰く、「高校卒業するまでの12年間の学校教育は6年で教える」といい、実際にMorningsideに通う生徒は1年で2.4学年分、学ぶといいます。しかも宿題は一切なし。

そう聞くと、元から頭の良い生徒を取っていると思いきやまるで逆で、ここの生徒はみんなADD(注意疾患)、識字障害、知恵遅れ等、学習障害の為、普通の学校に通えない、または追い出された生徒たちが通うという。いったい何が起きているのか?

ベストを引き出せBringing Out the Best in PEOPLEこれは最近読んだ Bringing Out the Best in PEOPLE(Aubrey Daniels著、邦題:ベストを引き出せ―部下の業績を最大化するリーダーシップ)というと本に紹介されていた話で、大きくinspireされました。Daniels氏曰く、従来の学校教育のモデル:

  1. まず先生が講義を行い、生徒がそれを黙って聞く
  2. 理解できたか確認するために先生はい何名か生徒に質問をし、答えさせる
  3. 練習問題を行う
  4. 宿題が与えられ、家で復習をさせる
  5. 学期末にテストを行い、合格すればその科目は習得されたものとみなされる

には大きな問題があるといいます。いや、学校教育ならずビジネス教育でも変わらないという。このモデルの何がいけないのか。

Daniels氏によると、そのモデルは「どれだけ多くのことを学ぶか、学びの深さ、学ぶスピード」全て大きく非効率であるといいます。そこで冒頭のMorningside Academyという学習障害者が通う学校の例を出し、本来あるべき学びの姿について行動心理学の研究を元に効率的な学びとは何かを解説します。このアプローチ方法が面白い。Daniel氏曰く

任天堂が登場してからそれ以降の世代の学び方は一変した。それ以前は従来の学校教育はうまく機能していたかもしれない。しかし、任天堂のゲーム機が登場してから、生徒が求める学びの質、学ぶスピードが急速に加速し出した。

と。「何じゃそれは?」と思っていたら続けてこう書いてありました(以下大塚のスーパー意訳です)

任天堂のゲームをやっていると平均して1分間に65-85回、自分が果たしてスキルを上げているかを確認する場面(自分の取った行動に対し、的確なフィードバックが戻って来る回数)に遭遇する。そうしたことをクリアしていくと次のステージに行けたり、ミスをしたらゲームが終わってしまうのでそこで、すぐに学び、再チャレンジ出来る。こうしたことを徹底的に繰り返すことによって、どんどんうまくなっていく。この学習スタイルがゆっくりと無意識に身についていってしまった。

と。こうした学習スタイルが生活の一部になっている世代に、従来の学校教育モデルは時代遅れになっているしまった。そして、この任天堂世代(Nintendo Generation, 略してNinGenと同書で表現)に合った教育モデルとして、ゲームの以下の要素を取り入れるべきだといいます。

  1. ピンポイント
    ゲームでは「どの行動」が「好ましいか」、一つ一つが定義(ピンポイント)されていて、明確になっている。
  2. Measurement (測定)
    ゲームはすべて得点が出る。「好ましい行動」を行った回数がしかりと測定され、点数化される。それが得点としてつくことによって、ゲーム性が出てくるので楽しくなる。
  3. Feedback
    ゲームでは「好ましい行動」が取れているか、絶えずリアルタイムでフィードバックを受けることが出来る。
  4. Positive reinforcement (好ましい行動を褒め、同じ行動を繰り返させる)
    詳しい説明は本に譲るとして、Daniels氏曰く、人の行動を変えようとするとき、4つの手法があるという。
    - Positive reinforcement
    好ましい行動を褒め、同じ行動を繰り返させる手法
    - Negative reinforcement
    好ましくない行動を叱り、同じ行動を繰り返させないようにする
    - Punishment
    嫌がることをやらせ、罰する
    - Penalty
    大事にしていること、モノを取り上げる
    そして、長期的に、望む方向に人の行動を変えたい場合、うまくいくのはPositive reinforcementのみであることは行動心理学の研究によって証明されているといいます。ゲームでは「好ましい行動を褒め、同じ行動を繰り返させる」仕組みがシステム上が組み込まれている。さらに周りの人に比べどれだけprogress(進歩)しているのか、見える化されるので、周りから教えてもらったり、良い意味での刺激を受けるので絶えず向上しようという意欲が自然と起きてくる。
  5. Reward
    ゲームはステージを達成するごとに達成感を味わえるように作られている。

こうした要素、特にPositive reinforcementがどれだけ頻繁に味わえるか、その仕組みがあるかどうかによって、人間のパフォーマンスレベルは大きく変わってくるといいます。

冒頭のMorningside Academyでは各科目ごとに10分間の説明、40分間の練習、10分間の休憩のサイクルで授業を行っているらしく、授業中に各生徒、1分間に平均80〜120回ものPositive reinforcementがリアルタイムで得られるように、カリキュラムが詳細に設計されているとのこと(詳しくはこちらの論文を参照ください)。

対して従来の学校教育では一分間ではなく、一授業、いや一週間でひとりの生徒がリアルタイムでPositive reinforcementを何回受け取れるか。学校の現場だけではなく、ビジネスの現場ではどうか。大きく考えさせれました。

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Posted by Masafumi Otsuka

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