ガラパゴス化する英語業界

ガラパゴス化する英語業界


英語教育業界、正直ここ10年間、進歩している気がしません。ビジネス英語とかいいながら出てくるのは「本当にそんな表現使うの?」と疑いたくなるような単語や表現ばかり。これだけリーマン・ショック以降、世界が猛スピードで変化し、それに合わせて英語自体も劇的に変わっているのに気付いていないのか、見て見ぬ振りをしているのか。アカデミック過ぎて全然実践的ではない。
例えば「ビジネス英語のバイブル」と言われているNHKラジオの【実践ビジネス英語】。今週のテキストを読んでみるとシチュエーションがニューヨーク在住の日本人ビジネスマンが出張帰りの飛行機の中で腰を痛め、入院した話をアメリカ人の同僚としている。そして病院食の善し悪しについて話している。この会話が何とも洒落ててアメリカ人、それもウォールストリートで働いている白人同士がsmall talkに使うようなおしゃれな表現のコレクションになっている。”be laid up (寝込んでいる)”とか”be in agony (苦しみもだえている)”など私でも絶対に使わない表現を覚えさせる。私だったら”resting”とか”be in pain”とシンプルな言葉を使う。もちろんsmall talkも重要ですが、そこが本質ではないし、実践的ではない。
いま本当に困っている人達はグローバルミーティングやカンファレンスコールで5-10分も経たないうちに置いていかれ、何が何だか分からないまま終わってしまう。貢献どころか一言も発せない、Decision making processに参加出来てないことに苦しんでいます。
分からない単語・表現が出て来た瞬間に”Wait, what do you mean by **?”と聞いたり、”…, you know, what was that word…”といいながら出てこない単語を相手から引き出したり、一度に全て説明するのではなく、相手の表情を見ながら”…, right?”とか”Am I making sense?”など確認しがら話を進めていく。
主戦消費マーケットが凄まじいスピードで欧米から新興国に移り変わっていく中、世界の共通言語としてシンプルなコミュニケーションツールとして生まれ変わった英語はこういったコミュニケーションの取り方をします。
でも大部分の英会話学校や語学本をみていると10年前と内容がほとんど変わっていない。一発で聞き取る力をつける、単語・表現をとにかく沢山覚えさせる。
私はグローバルコミュニケーションを教えています。カウンセリングで受講生と一緒に外国人講師とその受講生が行ったレッスン音声を聞きながら、「ここで”you know”とか”…, right?”などを入れ、もっと相手を抱き込んだ方がいいですよ。」とかよくアドバイスをするのですが、「何だか汚い英語を話しているようで抵抗がある」といわれる。
汚い英語!?
いま本当に面白いことが起きていてアメリカ人が顧客のインドネシア人や中国人ビジネスパーソンに”What? I have no idea what you’re saying!”みたいに「何いってんの?もっと簡単に説明してよ。」とはっきりといわれ、自分達の言語である英語を使いづらそうにしている現象が世界中あちこちで起きています。そんな中、日本人は一発で聞き取ろうとしている。
同じ単語でも国によっては違う意味で使ったり、発音の仕方も全然違う。一発で聞き取れるはずがありませんし、そもそもその必要がない。きれいとか汚いとかの問題ではなく、「この人とはちゃんとミスコミュニケーションなく話せる」という安心感を与える。「この人と話していると新しい発想が出てきて楽しい」と思われる。そうでないと次は呼ばれません。
でも大部分の英会話スクールや英語本はそうした時代の変化に全く気付いていないのか、興味がないのか、ネイティブを目指す勉強法を続けている。英語という言語ばかり磨かせ、コミュニケーションツールとして英語をどう使うかはお構いなし。
実践ビジネス英語というならば同僚とのおしゃれなsmall talkではなくリアルなconference callの状況設定にして、その会話の中に
  • わからない単語・表現が出て来た時にその瞬間に止める
  • 置いていかれないように絶えず確認作業をする
  • 相手の発言に乗っかっていく
  • 何か聞かれて何か答えたら常に”What do you think?”と返す(Statementで終わらせない)
  • 何か思いついたら半煮えの考えでもとにかく出して賛同してくれそうな人を見回してその人に振ってみる
こうした要素を入れ、何故これが大切なのかを一つ一つ解説する。こうしたコミュニケーションの取り方を教えてあげないと【通用しない】→【自分の英語力のなさを責める】→【単語・表現をさらに覚え、リスニングを鍛える】→【再度テレコンに出る】→【すぐわからない単語が出てまた置いていかれる】→【自分の英語力のなさを責める】という負のスパイラルから抜け出せない。
面白いことにそうした過程で不思議とTOEICが800点、900点とあがっていく。でもTOEICは一発で聞き取れる能力を測る試験なのである一定の点数(600~700点くらい)を持っていればそれ以上必要ない。車で例えればポルシェ、フェラリーを持っていてもそれを運転(使いこなせなければ)出来なければ買った意味がない。
現場の最前線で戦って苦労している方々をみていると英語力も仕事力も十分備わっているのに世界を舞台に実力を発揮出来きていない方が多く歯がゆいです。ビジネスの現場は凄まじい競争の中必死にinnovateしようとしています。それをサポートしなければいけない我々英語業界が高いお金を出してもらっているのに役に立っていないなんて本当に申し訳が立たない。。
世界で求められる人材像が激しく変わる中、我々も一度過去のやり方を捨て、どうしたら世界の最前線で戦っているビジネスパーソンのお役に立てるか、必死に研究をし、考え、実践していかないといけません。私もまだまだ試行錯誤ですが、正解のない問題を授業冒頭で発表して、外国人ビジネスパーソンもいる中で2時間、みんなで知恵を出し合って考える。そしてそれをビデオ取りしてスクリプトまで起こして、どこでミスコミュニケーションが起きていたのか、何が良かったのかを書き込んだり、一人一人に「ここがあなたの個性です」みたいな感じでフィードバックしたり、必死に考えています。同じ志を持つ方々には私が過去3年間いろいろと実験して来た結果を喜んでシェアさせていただきます。一緒にムーブメントを起こしましょう。
※なお友人の宗像淳氏とこの話で盛り上がり今回記事にしましたが同氏も「英語ビジネスに騙されてはいけない」というブログ記事を書いています。またそれを読み私のビジネスパートナーの鈴木眞二さんも英語教育業界の一会社の経営者として。という記事を書いています。こうしてお互いの記事に乗っかってブログを書くというのは面白いですね。

Posted by Masafumi Otsuka

Leave a Reply