個性を殺してはならない

個性を殺してはならない


「トム・ソーヤーの冒険」の著者、Mark Twain氏は「最も偉大な将軍」を探す旅に出たある男の話を好んで語ったと言います。男はあちこち聞いている内にその人物は既に死んでいることを知る。そこで天国の番人、聖ピーターのところに行き、「最も偉大な将軍」は誰なのかと尋ねる。すると聖ピーターはある平凡な名前が刻まれた墓に案内する。「そんなはずはない」とその男は怒る。「私はその男が生きていた頃を知っている。彼はただの靴磨きだった」と。すると聖ピーターは「その通りです」といった後に「ただ、もし彼が将軍になっていたとしたら間違いなく最も偉大な将軍になっていた」と答えたと言います。
この話、つい先日読み終えたSusan Cain氏が書いた“Quiet”という本に出て来た話で、大きく引き込まれました。
Cain氏曰く
「現代は内向的な人間でもそれを隠し、外交的に振るわざるを得ないほど、外交的な性格が理想とされる社会になっている。それが内向的な人間の個性を殺し、社会全体をダメにしている」と。
そして内向的で繊細的な人の方が(外交的な人に比べ)独特な個性を持った人が多いといい、そうした個性が殺されていく過程を以下のように説明します。
「学校教育の本来の目的は社会人として生きていく術を教えることであるはずなのに、学校生活自体を生き延びることが目的になっている子供達が非常に多い。特に内向的で繊細な子供にとって、学校は最悪な環境である。こうした子供達は一つの分野に異常な興味や好奇心を示したり、友人も少ない。その為、周囲に変わり者扱いされ、イジメに合う。そしていつの間にか個性が殺されてしまう。」
私は帰国子女で日本での記憶がほとんどなく、小学校6年生の終わりに帰国しました。日本での小学校教育がすっぽりと抜けている為にことあるごとに「こいつは本当にバカで大阪の場所すら分からないんだよ」「稚内を漢字でかけないんだよ」等、大勢の人の前で恥をかかされ、嫌な思いを沢山して来たのでこのプロセスが本当によく分かります。
現在、私は社会人のグローバル化教育に携わっていますが、Cain氏の言う通り、面白い独自の視点を出せる人に内向的で繊細な人が多い。ただこういった人達には発言しやすい環境・状況をうまく作ってあげないと絶対に自らアイディアを出さない。だからこそそうしたアイディアが出て来た時、すぐにその発言のどこが良かったのか、本人が納得出来るような形で伝えてあげないといけない。すると回を重ねるうちに、自信を持って自ら入って来れるようになる。
ただ人によってそのスイートスポットが違うのでその伝え方が本当に難しい。うまく引き出してあげられずに終わってしまった研修も正直少なくありません。そういった意味でこの“Quiet”という本。その伝え方のヒントが沢山書いてあり、読んでいて試してみたいアイディアが沢山湧いてきました。
それにしても「偉大な将軍」と「靴磨き」の差はほんの紙一重というのは考えるだけでも恐ろしくなります。少なくても自分の言動が「その人の個性を殺していないか」、これだけは絶えず意識していきたいと思います。

Posted by Masafumi Otsuka

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