知識の価値が大暴落する時代
UBERという個人向けハイヤーを提供する会社。2009年設立し、未だ未公開ながら昨年資金調達した際、時価総額5兆円弱($4.1 Billion, 現在のユニクロととほぼ同等)というとてつもない価値が付くも日本では実質的なサービスは行っておらず、凄い凄いとはきいていましたがピンときませんでした。
先月フィリピンに出張に行き、その凄さを感じるとともに知識の価値が一瞬にしてなくなっていくことを実感。ゾッとしました。
フィリピンはタクシーが信用できない。空港でタクシーの勧誘を受け、そのまま乗ったら知らないところに連れて行かれ、殺されたという話(もしかしたら都市伝説かも…)を初めて聞いた時、ゾッとしました。それは極端なケースとして、大抵日本人と思われると足元をみられ、乗る時にメーターに上乗せを要求されたり、道がわからないと思われると、遠回りされる。
過去3回、フィリピン(マニラ)に出張しましたが、その時はある企業のお客さんとしていったのでハイヤー車を手配してもらい、交通手段はお任せ状態でしたが、今回は個人の仕事での出張。ハイヤー車を1日6,000円で雇えるとはいえ、ちょっと街に出たりするくらいでハイヤーを雇うのはバカバカしい。そこで今回前々から使ってみたいと思っていたUBERを、試してみました。UBERの仕組みはこう。
- まずスマホにUBERアプリをダウンロードして、クレジットカードを登録する
- GPSを利用して、拾ってもらいたい場所といきたい場所をピンポイントで指定
- すぐに近くにいるUBER車(普通の自家用車です)とマッチングされ、ドライバーの名前・車の車種・ライセンス番号・そのドライバーの評価が出てくる
- ピンポイントの位置に迎えに来てもらえるよう、UBERのアプリ上から実際にテキストを送ったり電話できるようになっている
- 拾ってもらったらドライバーはUBERが指定したルートに沿って目的地まで運転。運転手がみているスマホも後ろから見えるので安心できます。
- ついたらお金のやり取りは一切発生せず、そのまま車から出て終わり。
- 請求は後から終わったら通ったルートとともに領収証が登録メールアドレスに送られてきて、その後その運転手を評価する。
UBERのドライバーは自家用車を使っているので、ほとんどの車は中がピッカピカ。その上、UBERがルートを指定、評価システム(客は降りたあとに運転手を評価)が機能していることを考えると安心して乗れます。
私のフィリピン人秘書に言わせると金曜日夜にタクシーをマニラ中心街で拾おうとすると2時間以上は軽く待たされるとのこと。UBERは需給でタクシー代が決まるのでこういった時は2倍とかに跳ね上がる。ただ、元がタクシー代が安い(日本の10分の1くらい)ので3時間待つストレスを数百円を買ったという感覚で考えると安い。
以前英エコノミスト誌の記事“Unsafe in The Knowlege”という記事で、ロンドンの黒タクシー(Black Cab)の運転手は”The Knowledge”という25,000以上の道、20,000以上の象徴的な場所・施設、最も効果的な道順を覚えないと合格できない超難解のテストに合格しなければならない。合格者は平均で2−4年勉強するとのこと。狭き門の為、年収1,000万円を稼ぐのも夢ではなく(Source: NYTimes)、黒タクの運転手になれれば一生安泰だった。
そんな中、GPSや渋滞情報がどんどん進化、そしてこのUBERの登場によって、この”The Knowledge”の価値(道を覚える知識の価値)が暴落しまった。
今年の5月末、英運輸省前に1000台以上の黒タクドライバーが集結して、UBERに規制をかけるように圧力をかているという記事を読んで、時代の変化のスピードの速さを改めて感じるとともに、今まで価値のあると思われたことが一瞬にして自動化されてしまう例が、この黒タクだけではなくどんどん出てくるのではないか。ゲームのルールが目まぐるしく変わる中、子供の教育をどうするかがよく論じられていますが、我々大人も他人事ではないと、このUber Experienceを通じて、色々と考えさせられました。
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