見ているつもりで見えていないもの

見ているつもりで見えていないもの


Picasso私は出来る限り、毎日30分間、時間をとって、絵を描くようにしていますが、きっかけは6年前にこのブログで紹介しました、絵は右脳で描け (Betty Edwards著)という本でした。

Edwards氏曰く:
同じものを見ていてもアーティストは(無意識に)我々一般人とは違う独特な見方でそれを捉えている。その見方さえ身につければ誰にでも絵を描くことが出来る

と。そして、5つのステップに分けて、この「アーティスト独特な見方」を自己学習していくワークブック形式の本になっているのですが、3つ目のステップで躓いてしまい、あえなく挫折。その後すっかりと忘れていました。

絵は右脳で描けピクサー流創造するちから昨年トイ・ストーリーやファインディング・ニモのアニメを制作した、Pixar Animation StudiosのCEOが書いた本、ピクサー流、創造するちから(Ed Catmull著)に

Pixar社では経理担当者を含め全社員にこの絵は右脳で描けの1週間ワークショップを受けさせている

という箇所を発見。調べてみる4月にアメリカのSan Diegoで開催されるワークショップだったら行けそうだと分かり、すぐに申し込み、先日受けてきました。

betty2残念ながらEdwards氏は高齢のため、直接教えを乞うことはできませんでしたが、彼女の確立したメソッドは本当に素晴らしく、たった5日間で、学校教育を通じて学んだ美術の数十倍、絵について学んだような気がします。

絵を描くコツを得るたのはもちろんですが、それ以上に、今後どうしたら自らこのスキルを向上していけるか。こうしたヒントを得たのが大きな収穫だったと思います。

自分が見ているものは本当はちゃんと見えていない。絵を描けないのは「目はここにあるはず」と決めつける左脳と「目だという意識を消し、この不思議な形をしたものの位置は全体のキャンバスの中のどこにあるのか」と問う右脳の戦いに常に左脳が勝つからだと。

例えば目の位置は顔の半分より上だほとんどの人は思っているが、実際に測ってみると(これ、何度もやらされました)、ちょうど頭のてっぺんと顎の中央にある。目の端か鼻の根元までの距離が鼻の根元と顎の距離と同じ(角度と大きさ、位置を測る)。立体感は光と影の調整で出てくるので、光がどれくらい強く、どの角度から入ってきているのかを常に把握しないといけない。等、普段全く考えないようなことを、完全にオフラインの環境の中、月曜日から金曜日、朝9時から夕方5時まで徹底して考えさせる。

それも2時間かけて書いたものでも位置や大きさがおかしければ、再度測定させて、とにかく目の前に見えるものを、観察させられ描き直させられる。自分ではちゃんと測って描いているつもりでも知らない間に左脳が邪魔されて「ここにあるはず」「この大きさであるべき」に惑わされている。これは大きな勉強になりました。

Betty Edwards2この教え方は本当に斬新で、何かに取り入れられるのではないかというヒントを得たような気がします。最終日、Bettyさんが顔を出したので、彼女が本の中で書かれていた、このメソッドの開発秘話:

彼女がちょうど大学で絵を教え始めた頃、生徒が繰り返し描く下手な絵を見て、「どうして**を**の前に描くの?明らかに位置関係は逆でしょ!」とイライラしていたといいます。そして「一層のこと逆さまにして描いてみたら」と言い生徒にピカソの絵を逆さまにして描かせたら、本物のピカソが誕生した(笑)。

「何故正しい向きだと描けなくて逆さだと描けたのか」と生徒に尋ねたところ「逆さにしたら何を描いているのか最後まで分からなかった」と答えたのが彼女のEpiphany(突然のひらめきの瞬間)だった。

の話を突っ込んで聞いてみたところ、ちょうどその時、のちにノーベル賞を受賞する右脳と左脳についての研究論文が発表され、それを読んで、「原因はここにあるのではないか?」という仮説を立て、博士課程の論文をこのUpside Drawing (逆さで絵を描く)について書いた聞き、「その論文と絵を描くスキルを結び付けたことこそ、ノーベル賞クラスの発見だったと思いますよ!」と伝えところ、ニコッと笑っていたのがとても印象的でした。非常に品のある温かい方で、すっかりとファンになってしまいました。

見えているつもりのものも、実はちゃんと見えていない。グローバル・コミュニケーションも同じことがいえるのではないか。何か大きなヒントを得たような気がします。ワークショップはこちらで受講することができます。

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Posted by Masafumi Otsuka

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