日本企業に買収された海外企業・現地社員の悲劇

日本企業に買収された海外企業・現地社員の悲劇


Japanese Corporations日本企業に買収された海外企業の現地社員は日本人、日本企業をどう見ているのか。
M&Aの助言を行うレコフによると2012年度の日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)の件数が515と過去最高を更新したようです。あれだけ超円高が続けば当然です。ただ、買収された側の現地社員の話を聞くと悲しい現実を知ります。
買収された会社は利益の出ている優良企業が多いのでそのまま放っておいても会社自体はまわっています。ただ買収した以上シナジーを出さないと意味がないので本社からいろいろと注文が入る。ここまでは別に日本企業であろうがヨーロッパの会社であろうが変わりません。問題はこの先に起きます。
日本企業は本社が異常なほど権限をもっています。当然買収直後に日本人社長及びスタッフを現地企業に派遣するか、社長をそのまま添えるにしても日本人のお目付役をつける。コントロール意識が強い。
対して欧米のグローバル企業は日本企業と比較して、現地の幹部をうまく活用しようとします。きちんと彼ら、彼女らを抱き込み、対等に扱い、ものごとを決めるときもちゃんとしたDecision makerがミーティングの場に出席し、現地幹部を交えその場でオープンにDiscussionをして決定を行います。当然その場でトップがDecision makeをする以上、そこで決まったことは後で覆しません。ここで決断出来ないと周りがリーダーとして認めてくれません。つまりこうしたミーティングは自分のリーダーとしての力量を見せつける場になります。
しかし日本企業は違う。ほとんどの場合、トップはミーティングに加わらずに、課題を与え、現地の幹部に話し合いをさせ、提案をあげさせる。そしてその提案に自分の意見を添えて、本社に送って決断を仰ぐ。いわゆる上奏方式をとる。そもそも現地に派遣された日本人社長に決定権が持たされていない場合が多い。当然この提案が本社の意にそぐわない場合、本社は覆します。これを現地にいる外国人幹部は嫌います。何の為の話し合いだったのか。どうしてこれだけ決まるのに時間がかかるのか。何故自分はdecision making processに入れてもらえないのか、疎外感を味わう。
最近、”Marunouchi”や”Otemachi”が隠語になっていると聞きます。「結局すでに結論は決まっているんでしょ。Marunouchiは何をいっているのかね。」みたいな会話が買収された外国人幹部間で日常的に使われていると聞きました。
ここ数年、新興国では優秀な人材の獲得戦争が起きています。こうした人々は自分達の能力が発揮出来る、絶えずスキルアップ出来る職場環境にいないとすぐに去っていきます。もちろんうまくやっている日本企業も少なからず聞きますが、圧倒的に少ないように感じます。うまく世界のタレントを活用出来ずに辞められ、買収した企業価値が下がってしまったらそれこそ悲劇です。これには本社機能を弱めるしかないように感じます。
本社機能を弱めるにはどうしたら良いか。私はグローバル展開するほとんどの日本の大企業に外国人役員が一人も入っていないことに問題があるような気がします。以下面白いデータを東洋経済オンラインで見つけました。役員おろか管理職すら少ない。言語の問題なのか。荒らされるのが恐いのか。非常に考えさせられます。皆さんの意見を是非聞きたいです。

出典:東洋経済オンライン

■外国人管理職数ランキング上位62社

順位 社名 業種 外国人管理職 外国人管理職比率 女性管理職 男性管理職 外国人部長職 外国人役員 外国人従業員
(人) (%) (人) (人) (人) (人) (人)
1 日本IBM 電気機器 58 0.9 736 5,885 34 11 136
2 三菱重工業 機械 33 0.3 263 10,130 0 0 102
3 あおぞら銀行 銀行業 16 3.0 41 496 5 5 -
4 トヨタ自動車 輸送用機器 15 0.2 65 9,066 7 5 455
5 富士通 電気機器 14 0.3 181 4,936 12 1 191
6 東レ 繊維製品 10 0.3 274 3,724 0 4 15
7 大塚ホールディングス 医薬品 9 0.5 112 1,853 4 1 -
7 東芝 電気機器 9 0.1 259 7,257 2 0 298
9 花王 化学 8 0.4 216 1,889 1 0 42
9 シスメックス 電気機器 8 1.2 35 643 - - -
9 マツダ 輸送用機器 8 0.2 111 3,745 4 4 78
12 三井化学 化学 7 0.3 92 2,136 0 0 31
12 住友重機械工業 機械 7 0.7 10 953 0 1
12 丸紅 卸売業 7 0.3 63 2,337 0 0 48
15 帝人 繊維製品 6 0.4 59 1,487 0 2 20
15 旭硝子 ガラス・土石製品 6 0.3 78 1,816 1 1 18
15 三井物産 卸売業 6 0.2 27 2,818 0 0 33
18 戸田建設 建設業 5 0.4 13 1,280 5 0 6
18 JT 食料品 5 0.4 15 1,137 - 0 20
20 味の素 食料品 4 0.3 70 1,382 0 2 15
20 アイシン精機 輸送用機器 4 0.3 20 1,412 1 0 -
20 住友商事 卸売業 4 0.1 38 2,754 0 0 22
20 アサツー ディ・ケイ サービス業 4 0.4 122 939 0 1 -
24 トヨタ紡織 輸送用機器 3 0.5 6 621 0 0 -
24 積水化成品工業 化学 3 1.2 5 250 0 0 3
24 電通 サービス業 3 0.2 112 1,560 3 1 -
24 日立電線 非鉄金属 3 0.6 3 520 1 0 21
24 ダイキン工業 機械 3 0.3 19 930 1 1 51
24 セイコーエプソン 電気機器 3 0.2 12 1,546 1 1 46
24 フォスター電機 電気機器 3 3.6 2 82 0 1 -
24 山武 電気機器 3 0.3 23 1,063 0 1 23
24 京セラ 電気機器 3 0.1 15 2,048 0 4 72
24 日立ハイテクノロジーズ 卸売業 3 0.3 15 1,126 - - -
24 イオン 小売業 3 0.2 64 1,305 0 0 -
35 前田建設工業 建設業 2 0.1 13 1,854 0 0 -
35 ディー・エヌ・エー サービス業 2 2.3 8 78 0 1 5
35 KFE JAPAN 卸売業 2 20.0 2 8 0 0 3
35 テリロジー 卸売業 2 10.0 0 20 0 0 5
35 王子製紙 パルプ・紙 2 0.2 24 782 - - -
35 信越化学工業 化学 2 0.2 4 933 2 1 5
35 日本ゼオン 化学 2 0.6 6 333 - - 3
35 日立化成工業 化学 2 0.4 6 518 1 0 -
35 構造計画研究所 情報・通信業 2 3.1 3 61 0 0 10
35 エス・ディー・エスバイオテック 化学 2 4.1 1 48 0 0 3
35 日本山村硝子 ガラス・土石製品 2 1.6 1 127 0 0 -
35 太平洋セメント ガラス・土石製品 2 0.3 1 721 0 0 5
35 フジクラ 非鉄金属 2 0.2 9 877 0 0 27
35 サトーホールディングス 機械 2 0.5 20 405 1 1 28
35 日立建機 機械 2 0.4 2 527 1 0 36
35 日機装 精密機器 2 0.4 11 471 1 - 5
35 ダイフク 機械 2 0.3 4 615 1 0 -
35 モリタホールディングス 輸送用機器 2 2.6 1 77 1 0 -
35 堀場製作所 電気機器 2 1.0 6 189 0 0 -
35 ティラド 輸送用機器 2 1.7 1 119 0 0 8
35 KYB 輸送用機器 2 0.4 5 503 1 0 -
35 ケーヒン 輸送用機器 2 0.6 1 350 0 0 13
35 凸版印刷 その他製品 2 0.1 33 1,604 0 0 -
35 アジア・アライアンス・ホールディングス 証券、商品先物取引業 2 25.0 0 8 2 1 2
35 中部電力 電気・ガス業 2 0.0 96 5,727 0 0 2
35 NSW 情報・通信業 2 0.6 9 349 0 0 12
35 富士ゼロックス 電気機器 2 0.1 70 2,055 0 0 82
35 東京スター銀行 銀行業 2 0.5 34 349 1 2 -

注)2010年度の外国人管理職人数をランキング。比率は外国人管理職人数を男性管理職と女性管理職の合計人数で割って算出。対象は『CSR企業総覧2012年版』掲載の1117社で2010年度の外国人管理職が2人以上存在する企業。管理職は部下を持つ、または部下を持たなくとも同等の地位にあること。管理職には部長職も含む。外国人部長職は外国人管理職のうち部長職以上。外国人役員には執行役員を含む。外国人の定義は会社によって異なる

(出所)『CSR企業総覧』2012年版


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    Mar 14
    2013

    taro mikuriya

    マサさん
    残念ながら、これが多くの企業では現実ですね。
    こんな記事もありましたね。
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111226/225643/
    海外で事業経営できるグローバル経営者の不在、という問題もありますが、
    それ以上に本社経営陣が問題です。グローバルに展開しているようでも、
    本社経営陣が日本人中心で、そこで決断が下るから、
    世界の優秀な経営人材を採用、活用できない理由になっています。
    もちろんソニーやオリンパス、日産のように非日本人をトップに持って来た伝統会社もあります。ただ、オリンパスに見るような”お飾り”がまだ多いかも知れません。
    私がまさに外国企業を買収して、買収後に現地に張り付いている張本人なので反面教師にさせて頂きます。
    残念ながら、そういう立場なので、私の会社の現地社員が悲劇であるか、ハッピーかは、私がコメントできる立場ではありませんが、社員が子会社根性でなく、モチベーション高く、自分の業務と会社に誇りを持っているようにするのが私の仕事かと自覚しています。

    Reply
      Mar 14
      2013

      Masafumi Otsuka

      太郎さん
      コメントありがとうございます。太郎さんに意見をちょうど聞きたいなーと思いながらこの記事を書いていました(笑)。

      日経ビジネスの記事の紹介ありがとうございます。まさにその通りですね。2年半前に書かれた別の面白い記事も見つけました。
      http://www.suzukinoriko.com/2010/09/blog-post_30.html

      特に(以下抜粋)

      日本の大企業社員の皆様は本当に優秀な方が多いと思いますが、”日本本社採用男子限定選抜チーム” 対 ”国籍性別不問世界選抜チーム” の戦いとなると、結構厳しいものがあります。 

      は今でも続いてそうですね。日本人がグローバル化を考える場合、自分たちを上においたグローバル化を考えているような気がします。本社経営陣強過ぎですね。先日ある日系金融機関でもいまでは一度は海外に出ないと偉くなれないから2年とりあえず出て戻ってくる、いる間は腰掛けで本社にだけ足を向いている→現地職員はすぐに「ああ、またか」と見破るそうです。日本人の本社志向のジョークも多いですね。

      無人島に男2名、女性1名漂着
      アメリカ人は1人の男は美女と結婚して、残った1人は牧師になる。
      スペイン人は2人の男は決闘して、勝った方が美女と結婚する。
      フランス人は1人の男は美女と結婚して、もう1人の男は彼女と不倫する。
      イタリア人は何の気兼ねもなく2人の男は共に1人の美女を愛する
      日本人はどうしたら良いか、本社に問いあわせようとする。

      大体オチは日本人は本社に問い合わせたというもの。やはり太郎さんみたいにちゃんと降りていって現地の人と交わってコミュニケーションを取る経営者の必要性を外国人と話す度に痛感します。。。太郎さんはコメント出来る立場ではないと書いていますが、そもそも降りていって現地の職員と交わる人すら少ない。現地職員と一緒にランチしたという日本人管理職の話すらほとんど聞きません。

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