心理的安全性のない職場ではイノベーションは起きない

心理的安全性のない職場ではイノベーションは起きない


psychological_safety「社内での学び、イノベーション、成長を促す環境を作るには、リーダーはまず、fear (恐怖心)を従業員から取り除くことからはじめなければいけない。」
- Amy C. Edmondson (ハーバード・ビジネス・スクール教授)

もう20年以上も前の話になりますが、銀行員としてキャリアを始めた頃、教育の意味であえてやられていたんでしょうけど、鬼軍曹みたいな先輩がいて、何をしても、とにかく怒る。「何故出来ないのか?」と詰められても、目の前で威圧されては考えなど出てくるわけはない。結局黙って申し訳なさそうなオーラを出し、嵐が過ぎ去るのを待っていました。

冒頭の引用、昨年読んでいた”The Fearless Organization”という本からの引用で、これを読んだ時に昔の苦い経験を思い出しました。著者のEdmondson氏は以下のように続けます。

Fear (恐怖心)は新しいことを学ぶことに対して悪い影響を及ぼす。ある神経科学の研究によると恐怖心は、心理的なリソースを大きく奪い、脳のワーキングメモリー(短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力)や新しい情報を処理するところが機能しにくくなる。その結果、論理的に考える、クリエイティブな発想を出す、問題解決しようとする力、全てに悪影響を及ぼす。

といいます。そして常に高いパフォーマンスを出すチーム・組織が共通して持っている特徴の中でも最も重要なものとして心理的安全性(Psychological Safety)があるかどうかを挙げます。

心理的安全性。これを言ったら恥をかくとか上司に罰せられるという恐れを感じずに、発言したり、アイディアを出したり、質問したりできる職場環境が企業、少なくても自分が所属する部署にあるかどうか。Edmondson氏曰く、

達成可能なゴールで、その進捗状況を直接観察でき、個人で完結できる仕事である場合は、部下を脅して達成させるマネージメントスタイルがうまくいくかもしれない。しかし、ビジネス環境の変化が激しく、顧客ニーズが複雑且つ掴みづらい時代(VUCA※の時代)、このマネージメントスタイルは、うまくいくどころか、企業を破滅へと導く。

と。その具体例として、3年前に起きたボルクスワーゲン(VW)のディーゼル車データ改ざん問題(神戸製鋼も同じような問題ありましたね)を挙げていました。その謝罪会見時に社長が「私が直接指示したわけではない」といいましたが、Edmondson教授によると「何を指示したかどうかの問題ではなく、心理的安全性を作らずに高い目標を強制した事実こそ、社長の責任である」と厳しく指摘。これには激しく同意します。

私は、企業のグローバル化研修を中心に行なっていますが、昨年は特にこの心理的安全性を学習環境の中に取り入れ、学びの質を高めることを強く意識しました。

例えばある会社で8週間(週1回、1回2時間)に渡って行ったGlobal Discussion研修では、参加者の顔、名前を覚えるのは当然として、過去の発言からその人の家族構成、趣味、その人の強み、弱みまで覚える。さらにどうしたら研修中にその人らしい発言を引き出せるか、開催中はこればかり考えていました。

また参加者にも自分さえパフォームしていれば良いのではなく、周りのパフォーマンスを上げるためにどんなことが出来るか。特にパフォーマンスの高い人にはここを意識してもらいました。

こうやって心理的安全性を作ろうと意識しましたが、大きく効果を実感。まず気づいたのが参加者同士の一体感が過去とは比較にならないくらい、非常に強く出たこと。お互いをより深く知り合えると発言するプレッシャーが軽くなる。自らjump inする発言回数及び発言の質も大きく上がりました。

昨年もGlobal Communication, Global Collaborationに関し沢山本を読みましたが、多くの本に、このPsychological safetyという言葉が出ていたところを見ると、ビジネス環境の変化の激しいVUCA※の時代の最重要キーワードの一つなのではないかと感じます。

皆さんはご自分の所属する組織又は部署で心理的安全性を感じていますか?

※ VUCAとはVolatility(変化のブレ幅の大きさ)、Uncertainty(不確実性) 、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で現代のビジネス環境を表す時に使われます。

参考記事
若い人から意見が出てこない」と思った時、自ら問うべき大切なこと
チームビルディングは遊びではない


Posted by Masafumi Otsuka

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