質問が驚くほど出てくるちょっとした意識の持ち方
20代だった頃は、講演や会議に出ても、質問することはまずなかった。そもそも何を聞いたら良いか分からない。大勢の前で何かを聞くのは恥ずかしいし、バカな質問をして後で笑われたくない。
それが30代半ばにある本を読んでから、マインドがガラリと変わり、今では会議や講演を聞きにいった時は、必ず質問するようにしています。
本は「ご冗談でしょう、ファインマンさん」という自伝。著者のリチャード・ファインマンはアメリカの理科系大学の最高峰といわれるカルフォルニア工科大学(Caltech)の教授で、ノーベル物理学賞を受賞者。
私はこの本を「好奇心」という科目があったら教科書にしたい本だと考えていますが、何しろ、この人の変人ぶり半端ない。例えば、
私はストリップクラブに週4−5日通い、そこの隅のテーブルで良く仕事をしていた。飽きたら楽しいショーを見れる。こんな楽しく仕事が出来る場所はない。
ある日、周辺の住民がストリップクラブは風紀を乱すといい、クラブを締めるよう、裁判所に訴えた。裁判をやる以上、証人が必要。そこでオーナーが常連客(サラリーマン、市役所員、政治家、大工などほぼ満遍なく地元の人が来ていた)に証言台に立つよう、お願いする。当然、「私は妻も子供もいて、仕事の立場もある。証言に立てるわけがない」と全て断られたらしい。
何も失うものはないのは私だけか…ストリップクラブがなくなると仕事に影響するので、喜んで証言台に立ったら翌日の地元の新聞の一面で「Caltechの物理学教授、ストリップクラブに通う」と大きな見出しが出て、妻に笑われた。
と他人事のように書いていました(笑)。
話は逸れてしまいましたが、彼は学者の中でも質問魔で有名だったらしい。自伝にこう書いてありました。
私は四六時中、物理学者に囲まれ、その研究内容について良く議論していました。
研究者はまず「こういう問題を解決しようとしている」といい、その後色々な公式を書き出し、その問題をどのように解決しようとしているか説明しようとします。
私は公式に入る前に「ちょっと待って!」と必ず止め、
「その解決したい問題を象徴する一番わかりやすい具体例を教えてください」
と聞きます。そして、その具体例をより鮮明に理解するために、初歩的な質問を沢山する。
「外部回路に電流が流出する電極はプラスかマイナスか?」「イオンの方向はこっちかあっちか」等、あまりにも初歩的な質問をするから、「この人頭が悪いのではないか?」と思われるらしい。
しかし、具体例を鮮明にイメージをした後に、公式を聞いていると、どこかのタイミングで「ちょっと待て!そうなるはずはない。その公式、間違えている。」という場面が出てくる。
すると研究者は、もう一度公式を見直す。そして確かに誤りを見つける。
「はじめに問題すら理解出来なかった人が、どうしてこの超複雑な公式の中で、ピンポイントで誤りを見つけることができたのか?」といつも不思議に思われる。
研究者は私が公式を一つ一つ理解しながら追いかけていると思っているが、私はそんなことはしない。
私は冒頭で出てきた具体例を、その公式を使って、頭の中で解決しようとしている。
しっかりとした具体例さえインプットできれば、過去の経験と勘から、一つ一つの公式が解決に向かっているのか、何となくわかる。そこから少しでも外れると、「ちょっと待って!それ間違っている。」と指摘できる。
と。これはまさに私にとって「目から鱗が落ちる」話でした。
以前、人の話を聞く時、あまり深く考えずに話の内容だけを追いかける受け身(passive)の姿勢で話を聞いていましたが、この本を読んでから、ガラリと変わりました。
私が出る講演会は、何かビジネス上の成功談・失敗談や新しいフレームワーク(問題解決ツール)を紹介するものが多い。
そこで今抱えている問題でトピックに合いそうなものを一つ特定して、話を聞きながら、発表者が使った手法でその問題を頭の中で解決しようとする。
すると「あれれ、ちょっと飛躍したぞ。そこに移る前にこういった問題が出てくるはずだ」とか「いや、そんなうまくいくはずはない。利害関係者の中で、この人が絶対に反対するはずだ」など、問題が出てくる。
そこを質問する。不思議と良い質問をしているか、バカな質問をしているかどうかが、全く気にならない。今自分が抱えている問題を解決する答えがもらえる可能性が高いので得することはあっても損をすることはない。
質問以上に、面白い講演だと、新しい解決案、アイディアが聞いていてどんどん出てくるので、それをノートに書き留めている間にあっという間に終わってしまう。
ちょっとした聞く姿勢の変化ですが、こうして意識を変えることで、具体的な質問が沢山出てくると思います。是非試してみて下さい。
参考記事
「好奇心」という科目があったら教科書にしたい本
参考文献を辿っていく読書術
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