How to 本に足りないモノ

How to 本に足りないモノ


how_to.jpgSuccessful men rarely know the real reasons for their success, even though they always think they know.
–Robert J. Ringer

ちょうど先週、グロービス経営大学院でクリティカル・シンキング(論理的思考法)を教える友人、早津俊秀さんのブログ記事「成功本やノウハウ本に注意」を読み、また前回記事「ArtとCommunicationの関係Part 2」を読み返していて、何気なくノートに書き留めていた冒頭の引用を思い出しました。

これは1973年にアメリカで出版された”Winning Through Intimidation(邦題:型破りで勝つ)”という本からの引用。「成功した人は自分が成功した本当の理由を知らない。ただ(困ったことに)知っていると勘違いしている」と。

私は高校時代から社会人5年目頃まで、自己啓発関連の本が大好きで、数え切れないくらい成功者が書いた成功哲学の本を読んできました。あの何十万円もするナポリオン・ヒル・プログラムも買ってしまったほどです(つい最近引越しと同時に捨てました・笑)。銀行員時代には新規法人営業で全く客が取れず、さらにそうした本に頼りました。しかし全然うまくいかない。ポジティブ・シンキング。言葉では理解できますが、どんなに強い暗示をかけてもそういった習性が身につかない。いつしか「自分の能力が足りないからではないか。」と思うようになり、自然とこういった本を遠ざけるようになっていました。

Ringer氏曰く、「成功者は社会が求める『ポジティブ思考』や『血の滲む努力』等、『成功者としてあるべき姿』に洗脳され、実際はそれを実践していないにも係わらず、無意識に自分もそうしたと思い込んでしまっている。」だから、その成功体験を本にしたり、インタビューを受けたりすると、自然と「ポジティブ思考」「昼夜を問わない努力」など社会受けしやすい言葉を無意識に出してしまう。

前回記事で「同じものを見ていてもアーティストは我々一般人とは違う独特な見方でそれを捉えている。その見方さえ身につければ誰にでも絵を描くことが出来る」というQuoteを紹介しましたがそもそもArtistと呼ばれる人達は自分達が「独特な見方」をしているという認識がない。その「独特な見方」を教えないでアートを教えても本質的なモノ(マインド)が抜けている以上、悲劇を生む。悪意はないだけにより始末が悪いように感じます。

以前紹介しました”The Story Factor (Annette Simmons著)”にも同様のことが書いてありました。「コミュニケーションを教えるコース・本は沢山あるが、そのほとんどはテクニックばかりに走り、その時はうまくCommunicate出来たような気になる。しかし数ヶ月すると元の自分に戻ってしまう。それは『一度言ってしまったことは取り返せない』、『正直に話したらバカに思われる』等普段、無意識に考えている、円滑なコミュニケーションを図る上で最も重要な土台(マインド)を壊さないで身につけたテクニックはすぐに崩れ去る」と。

アートやコミュニケーションを例に書きましたが、どんな分野においてもこの「無意識」というものが存在します。本人すら気づいていないコアな部分を飛ばした成功体験。ほとんどのHow to本を読んでも効果がないのも頷けます。こうした「無意識」を「見える化」出来る人。前回紹介しましたBetty Edwardsのような存在が今後益々重要になってくると改めて感じました。彼女にとってのEpiphany(突然のひらめきの瞬間)、早く私にも訪れますように(って七夕は過ぎてしまいましたけどね・笑)!


Posted by Masafumi Otsuka

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