これぞ究極のグローバル OJT!

これぞ究極のグローバル OJT!


 Global on the job training「どんな難しい仕事でもきちんと全体の絵さえ思い描ければ、あとはジグソーパズルのように世界中のタレントをうまく組み合わせ、完成させられるのではないか?」

以前「oDeskを使った夢のプロジェクト」という記事を書きましたが、実際にそのoDeskを使ったコンサルティングに挑戦してみて、最近そう感じるようになりました。 今回お手伝いさせていただいたのはe-Janネットワークス㈱さん。CACHATTO®という携帯電話・スマートフォン・タブレット型PC・パソコンから社内メールやスケジュール、グループウェアを万全なセキュリティー環境下で利用できるリモートアクセスサービスを提供しています。

簡単に言えば社外から自分のパソコン、スマホを利用して会社のサーバーにアクセスして仕事をしても、端末には情報履歴を一切残こさない。安心して仕事が出来るサービスです。国内シェアはNo.1で大手商社、メーカー、電力、鉄道など大企業の営業部門で採用されています。

クライアント企業は近年のグローバル化に伴い、中国、タイ、インドとどんどん海外に出て行っている。しかし、CACHATTO® は日本語と開発版英語メニューとでしか対応していない。各国語に対応して欲しいという要望はあったようなのですが、現状は国内需要に応えるだけで精一杯で、対応出来ていない。

そこで「社内でプロジェクトチームを作るので大塚さんがよく使っているoDeskを使い、外部リソースをうまく活用してCACHATTO®を各国語対応させて欲しい。そして、その後自分達でも他言語化出来るように全体のプロセスをマニュアル化して欲しい」と依頼を受けました。 まずは英語を正規版に、そして中国語。英語は何とかなると思いましたが、中国語をどうやってやるのか、全く見当がつきませんでした。でもいつもの「走りながら考えればなんとかなるだろう精神(笑)」で引き受けました。

こういったシステムの言語翻訳。「誰か一人いい翻訳家を探して、やってもらえばいいじゃん!」と思っている方。そんな一筋縄ではいきません(笑)。

今回e-Janネットワークスさんからは技術、顧客サポート、営業の各部門から若手を一人ずつ出してもらい、どういう風に作業を分解し、どういったスキルを持つ人に、何を、どのような形で依頼するかを議論し、一連の作業の流れを設計しました。

そして【単純作業をしてくれる作業者】×2名、【翻訳者】×1名、【英語・現地語を話すITリテラシーがある程度ある現役のビジネスパーソン】×2名を雇いました。

  1. まずは作業者にCACHATTO® サイトに入ってもらい、全てのリンクを辿ってもらい、それぞれ画面をスクリーンショットしてもらう。そしてパワーポイントに張り付け、さらに一つ一つ言語をExcelに書き出してもらう。
  2. そしてパワーポイントを翻訳者に送ってもらう。翻訳者は、該当箇所の横に訳を直接テキストで書き込んでもらい、作業者に戻す。
  3. 作業者はそれぞれの翻訳をエクセルに転記する。
  4. そしてそれをシステムに落とし込み、現役のビジネスパーソンに翻訳サイトを実際に使ってもらい不自然な表現等を直し、作業者に戻す。

実際にやり出してみるといろいろな問題が発覚する。日本語ページは翻訳を前提として作って来ていなかったので例えばメール、アドレス帳登録、予定表も全て同じ「新規作成」という項目で統一。しかし英語にすると”Compose e-mail,” “Create new,” “Create event”など変わってくる。するとシステムを直さないといけない。

全てのリンクを辿って全画面カバーしたつもりが、翻訳しなければならない項目の4割弱しかカバーされていないことが発覚。言葉だけエクセルに取り出し、翻訳させるも画面を見ないと(例えば何に対するエラーメッセージか分からない)、正確に翻訳出来ない。カバーされない6割もどのページに出てくるのか、特定出来ない上に、そのページが果たして今でも生きているかどうかも分からない。

こうして、3歩進んでは2歩後退みたいに日本側で問題が起きる度に対策を考え、再発注する。再発注直後により良いアイディアが思いついたら作業を中断させ、全てやり直してもらう。募集をかけてもいい人材が集まらず、応募要項を皆で考え直し、再募集をかけたことも何度かありました。

途中でチームの皆さん、不安に思ったのか「大塚さん、こんな(コロコロ変わる)仕事のやり方でいいんですか?」と聞かれたので「いや、誰もやったことのないことをやっているんだから計画通りいくはずがない。走りながら考えるこのやり方が普通です」といったのを良く覚えています。

結果的にCACHATTO®の正規な英語版、中国語版が完成できましたが、それよりもこうしたプロセスの過程で

  • 優秀な人材が集まるような募集要項の書き方(ライティングスキル)
  • 優秀な人材かどうか。逃げずにちゃんと仕事をやる人材かどうかの目利き(インタビュースキル)
  • 一つのプロジェクトの中で世界中の人材の活用方法(プロジェクトマネージメントスキル)
  • 英語で何度もビデオスカイプで打ち合わせをする(グロバールコミュニケーションスキル)
  • やり方が確立していない問題をどう解決していくか(問題解決スキル)

cachattoなど私を含め、若手社員にこうしたスキルが身に付いているのがよく分かり、とてもやりがいがありました。

私も20代の頃にこんな経験をさせていただきたかった。かかった費用はわずか15万円程度(英語10万円、中国語5万円)。英語でノウハウが蓄積した分中国語はその分効率化が出来、安く出来ました。社長の坂本史郎さん(ブログ是非読んでください!)曰く、まずは20カ国語まで持っていくとのこと。

世界で十分勝負出来る素晴らしい製品、サービスがあるが、社内のリソース不足の為、世界に出ていけない中小企業は沢山あると思います。その手助けを、その会社の方々と一緒に絵を描き、その絵を世界中のタレント達と一緒になって完成させていく。その過程で世界を舞台に活躍する際求められるスキルが自然と身に付く。こういったワクワクするような仕事をもっともっと増やしていきたいと思います。


Posted by Masafumi Otsuka

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