何故選択の自由が広がるほど決断力が落ちていくのか
“Decision Fatigue”という言葉をご存知でしょうか。人間は選択の自由が広がれば広がるほど決断力が落ちるという心理学用語で、2000年に2名の心理学者がある実験を通してこれを証明しました。この実験が面白い。
スーパーマーケットにジャムの売り場コーナーを作り、6種類及び24種類のジャムをそれぞれ期間別に(時期が重ならないよう)試食販売します。試食をされた方に対し、その場でクーポン(割引券)を渡す。そして6種類販売した時と24種類販売した時で実際に試食をした人数と売れた数を比較してみる。この結果が本当に面白い。
6種類に比べ、24種類出した時の方が、試食をされた人の数は圧倒的に多かったといいます。しかし、試食された方の内、実際に買っていかれた方は24種類の時はわずか3%。対して、6種類の時は何と30%!10倍の差がついたといいます。もちろんこの実験から
「選択肢が1/4減れば10倍決断しやすくなる」
と解釈するのは飛躍しすぎだと思いますが、この実験。キャリア形成において大きな教訓が含まれているように感じます。私が陥ったDecision Fatigueは
やりたいことが見つからない → とりあえず大学に入る → 何をしたいのかよく分からない → とりあえず銀行に入る → 3年勤めるも銀行にはやりたいことはないので辞める → 1年ニートするもやりたいことが出てこない → MBA留学
結局大学に入ったことも、銀行に入ったことも、MBA留学したことも選択肢(ジャムの数)を増やしただけ。その結果、より混乱してしまう。もちろんその時一番人気のある職種を選ぶという手はありますが、そこは競争が激しいので負けてしまう(悲)。また「本当に自分は何をしたいのか」と考える出すと答えが出ず、だったら「何が出来るか」と考えると選択肢が多過ぎて決められない。
最近読んだエッセンシャル思考という本(この本は面白かった)の中で、経営学者のピーター・ドラッカー氏の以下の言葉が紹介されていて妙に納得しました(ちなみに以下大塚の超意訳です・笑)。
数百年後に歴史家が今日の時代を振り返る時、最も重要なイベントとして挙げるのはテクノロジーの進化でも、インターネットの登場でもないだろう。最も重要なイベントはかつて考えられなかった人間の環境の変化である。我々の多くは選択の自由を手に入れた。人類史上初めて、自分自身で自分をマネージしなければいけなくなったことである。しかし、社会はこの事態に対応する準備が全くできていない。
深い。。。MBAを出て13年。今では「自分が何をしたいのか」や「どんな選択肢があるのだろうか」という問い方はやめて、「いま目の前にある選択肢の中で何が一番面白そうか」という問い方をするようにしています。とりあえず試食して一番美味しかったジャムを買ってみる。そして進んでいく過程で次の選択肢が出てくる。そこで同様に「何が面白そうか」とを繰り返すことにより、最終的にどこか分からない面白い所に辿り着くのではないかと考えるようにしています。
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