Creativeな発想を引き出す方法 #4: Brainwalking

Creativeな発想を引き出す方法 #4: Brainwalking


brainwalkingCreativeな発想を引き出す方法の第4弾としてBrainwalkingというテクニックを紹介します。これ、初めて行ったとき、「本当にこんなやり方でうまくいくの?」と、とても不安になったのを覚えています。しかし、今では「Brainwalkingこそ数あるIdeationテクニックの中の王様」と思える位、このテクニックを使うと短時間でQualityの高い、Creativeなアイディアが沢山出てきます。

このテクニック。説明するのが難しい。イメージは山手線かな〜(笑)…例えば新しい筆記用具を考えているとします。そこでどの層をターゲットとした筆記用具なのか、トラックの運転手、ジョギングをする人、赤ちゃん、お医者さん、作家、半身不随の患者、の6つにまず別けます。そして、山手線のように一周出来る形で部屋の壁を使って、6つのIdeation Station(駅)を作り、各駅にターゲット層をタイトルにした巨大なポストイット(A0より少し小さいもの)を貼る。ここで準備は完了。

Post It次に二人一組になり実際に各駅に散らばってもらって、思いつくアイディアを相談しながらどんどん書いていってもらう。そして、ある一定の時間(7分程度)過ぎたら、次の駅に移ってもらう。次の駅に移ると違ったターゲット層に対し、前のグループのアイディアが書いてあるので、そのアイディアを見ながら相談し、それを発展させたり、新しいアイディア追加していく。そして山手線のように駅を一周して、最後に自分のスタートした駅に戻ってきます。すると出発当初とまるで違う光景になっている。

うーん。ちょっと分かりづらいですね。より具体的に昨年ある日本の大企業で行ったIdeation Workshopを通して説明します。この会社は年に一度、アジアのスタッフを一同、東京に集め、いつものテレコンではなく、Face to faceで一緒に仕事をしながら親睦を深めるAsia Weekというイベントを行っていまして、その中の丸一日頂いてIdeation Workshopを行いました。

Ideationはリアルの問題を、利害関係者に集まってもらい、皆で考え、解決していきますので、Creative Challengeを何にするかが非常に大切になります。担当者に聞いた所、「アジア社員の離職率が高さ」を問題に挙げられていたので、そのCreative Challengeを

「どうしたら世界のタレントをより活かせる(やりがいを感じてもらえる)環境を作れるか」

に設定。日本人がいると意見を出し難いかと思い、今回は日本人を閉め出し(!)、4カ国、13名、全て外国人で行いました。

そこでこのBrainwalkingを使ったのですが、まずはこれを設計するにあたって、何を基準(テーマ)にIdeation Station(駅)を設定するかを考えます。そこでワークショップを行う1ヶ月前に、アジアの全スタッフ向けに簡単なウェブアンケートを答えてもらいました。質問内容は以下の3つ。

  • What is one thing about our company you would like to change?
  • What is one thing about our company that you hope would never change?
  • How can our company attract more global talent?

匿名式だったので予想以上に皆さん正直に書いて頂き、これを読んでいるだけでも何が問題になっているのかよく分かります。アンケート結果に伴い、問題を以下の5つ

  1. Ideation StationsCareer Development(キャリア形成)
  2. Communication(社内コミュニケーション)
  3. Work Environment(仕事環境)
  4. Work Process(仕事のプロセス)
  5. One for All, All for One(一体感)

に別け、この5つを各Ideation Station(駅)のテーマに設定。ここで、いきなり2−3名のグループを作ってもらい、各駅に散ってもらい、アイディアを書いてもらってもいいのですが、いきなり「社内コミュニケーションをより円滑にしていく為のCreativeなアイディアを出してください」といわれても何かThought Trigger(新しい発想の引き金になるもの)がないとアイディアは出しづらい。そこで、グループに分かれる前に、

「ここにアラジンの魔法のランプがあるとします。そこでジーニーが出て来て、どんな願い(Wish)でも3つ叶えられると言われたら、例えば『社内コミュニケーション』においては何を願いますか?」

と聞く。すると

  • 日本人全て英語が話せるようになって欲しい
  • e-mailではなく、もっとface to faceでコミュニケーションを取りたい

など、色々と出てきます。皆さん問題なく英語を話している中、「英語によるコミュニケーション力をもっと上げたい」が出て来たのにはビックリしました。こうしたWishesを巨大ポストイットに箇条書きで書いていきます。

この”Wish”を出しているとき、出て来たものに対し、”Not big enough!”と思いっきり参加者をプッシュすることも大事です。例えば「e-mailではなく、もっとface to faceを」の所、「そうそう。確かにe-mailの数が多過ぎ!」と誰かがフォローしたとします。そこで”Then how about wishing to cut e-mails in half?”と逆にこちらから提案してみる。こうして5つのIdeation Station、それぞれ、大きなWishを5−6個出してもらう。

書き終えたらそれぞれのIdeation Stationにポストイットを貼っていく。ここで準備が完了。その後、国籍、職種、性別がバラバラになるよう(これ非常に大事!)に2-3名一組のグループを作ってもらい、各駅に散らばってもらう。そしてそれぞれの駅に書いてあるWishesを実現するアイディアを相談しながら、その隣に貼った白紙のポストイットシートにどんどん書いていってもらう。こうやって7分考えてもらってから次の駅に移ってもらいます。

SNS大体、3駅回り終えたところで、アイディアが煮詰まってきます。そこで4駅目で事前に準備をしたイラストを配り、それをThought Triggerとして使ってもらう。例えばCommunicationの所ですとSNSの絵を配り、「このSNSのコンセプトを借りてより今でているアイディアをより発展させられないか?」と参加者をチャレンジする。5駅目は、逆に一人が動き、一人をそのまま残ってもらい、ペアを変えてみる。こうした小さな仕掛けを用意しながら一周回ってもらいます。

何故、こんなやり方で、面白いアイディアが沢山出てくるのか。

  • 2−3名と少ない人数でやっているので内向的な人でも意見を出しやすい
  • そもそも国籍の違う人と回ると(Diversityが一番大事)価値観が違うので新しい発想が出てきやすい
  • 前に止まった駅で見たアイディアがTriggerになって、目の前のアイディアと繋がり、新しい発想が出てくる可能性が高い
  • 立って動いている方が発想が出てきやすい

等、色々あると思います。例えば「もっと英語でのコミュニケーション力を上げたい」というWishに対して出て来た案が”English lessons for everyone”だったとする。これだと別に大したアイディアではないが、”One for All, All for One”のステーションに書いてあった「日本人ばかりではなく、もっと欧米のスタッフと親交を深めたい」とうWishがこの”English lessons for everyoneが繋がり、

アジア2カ国(1名ずつ)、日本から2名、アメリカ1名、ヨーロッパ1名の計6名でStudy groupを作れないか

Brainwalking Facilitationという発想が生まれたりします。 自分の出発駅に戻ったら気に入ったアイディアを2−3個選んでもらって、全員の前で発表してもらいます。そこで私(ファシリテーター)が間に入り、この選ばれたアイディアを全員参加の元、さらに具体化していきます。こうすると最低10個は具体化されたCreativeなアイディアが出てきます。

このBrainwalkingというテクニック。以前紹介した3つのテクニックに比べて設計するのが難しい。また私もそうでしたが、初めてやる時、「本当にこんなやり方で面白いアイディアがでてくるのか」と不安になると思います。でもやればやるほど感じるのが、数あるIdeationテクニックの中でも最も短時間でQualityの高い、Creativeなアイディアを沢山出てくる。

これは是非試して欲しいです。試してみたいが不安と思われている方は、設計の手伝いをさせていただきますでご連絡ください。

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Posted by Masafumi Otsuka

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