Happyに失敗出来る学習環境を作る
もしあなたが舞台の上で何もアイディアが出てこず苦しみ嫌な気分になったら、それはその場で助けてあげられなかった私がいけなかったということ。失敗は全て私のせいにしなさい。
- Keith Johnstone
「新しいワクワクすることを学びたい!」と先月、カナダで行われる即興芝居(インプロ)の10日間合宿にいく決心をした経緯について前回のブログ記事で書きました。冒頭の言葉、初日にJohnstone氏(以下Keithと呼び捨てにします)がいったことで、全く演技経験のない私にとって大変勇気づけられました。とはいいながら「きっと舞台に上がってもアイディアが出てこなく苦しみ、嫌な気分なるんだろうなー」と思っていました。
しかし実際にはじまって、びっくり。なんと、この即興芝居というのは舞台上で行ってしまった失敗も聴衆をenjoyさせる仕掛けになっている。ちょっと分かりづらいので、初日に私が初めて出たシーンと通して説明しますと、まずKeithが「男女一人ずつ下手なImprovisor (即興役者)に舞台に出てきて欲しい」というので、当然経験のない私は「これはチャンス!」と一緒に参加している女性とともに舞台にあがる。するとKeithは「女性が初めて男性(私)を家に連れて帰ってくるシーンをやってください」という。なんだかよく分からないが、とにかくこんな感じ(↓)でやってみる。
女性: 「(舞台裏からドアを開け)Welcome! どう?」
私: 「 広い部屋だね。素晴らしい(←こんなことしか言えない・笑)。」
女性: 「ありがとう。何か飲む?」
私: 「じゃー、ワインでも」
ここでいきなりKeithが入って来る。
Keith: 「ワインはダメ、ウィスキーと言いなさい!ウィスキーの方がこの先、何か起こるんじゃないかと聴衆は感じる。」
(なんだそれは。。。と思いながら)
私: 「じゃー、ウィスキーをお願い。」
女性: 「ではソファーに座って待ってて。」
(ウィスキーを持って戻ってくる)
女性: 「乾杯!映画楽しかったね。」
私: 「そうだね。……(ここで会話が続かず間が出来る)」
Keith: 「はい。乾杯のところからやり直し。乾杯してからMasa(私)が飲んだのを確認した後に、女性は『ちょっとこのウィスキー、味が変だと思わない』といいなさい。」
女性: 「乾杯!(私が飲んだのを確認)ちょっとこのウィスキー味が変だと思わない?」
(何か提案を受けたらとりあえずAcceptするというのは即興芝居のルールと聞いていたので)
私: 「そういえばちょっと変な味がする。」
Keith: 「本気の顔で15秒後にあなたは意識を失うといいなさい。」
女性: 「15秒後にあなたは意識を失います。」
(どんなリアクションとったら良いか全く思いつかず、ビビりだす)
私: 「えっ、どういう意味。なんでそんなことをするの?何が目的?」
Keith: 「Stop! 本当にそんなシチュエーションに立たされたら、冷静にそんなこと言うはずない。だってあと15秒で気を失うんだよ。普通だったら何をする?」
(え〜、「そんなシチュエーションに巻き込まれたことないよー」と思いながら)
私: 「 うーん。I have no idea…」
Keith: 「舞台に立っているあなたは知らないかと思うが、見ている私たちは全員知っている。(聴衆というか後ろで見ている参加者に向かって)何?」
聴衆: 「家から飛び出して助けを求めようとするんじゃない?」
Keith: 「その通り。でも本当に飛び出てしまってもいいの?」
聴衆: 「いや、ドアの前で力尽きる姿が見たい。」
Keith: 「そう!こちら(聴衆)側で見ていると誰でも分かることが、舞台に立つとそれが分からなくなる。これ、面白いと思わない?このギャップは何度も舞台に立つうちに縮まったきます。ではシーンを続けよう!」
私: 「Someone! Help me!(とドアに向かって突進するもドアの前であえなく力尽きる)」
その後、女性は私の財布を奪い、次の展開へと進んでいく。
なるほど。こうやって即興芝居の演技スキルや発想方法・展開力を学んでいくんだとおもいきや、どうやらそれだけではないらしい。自分が舞台に立っている時は気づかなかったが、他の人のシーンでもKeithは何度も演技を中断させ、アドバイスを入れる。そのたびに、私を含め、見ている他の参加者(聴衆)は大笑いしている。
インプロというのは、舞台にあがっている人たちだけでやるのではなく、Director(この場合Keith)を含めた、いや、もっと踏み込んで言えば聴衆を巻き込んだ全員参加型のショーになっている。失敗自体を聴衆がEnjoyさせる仕掛けになっている。
Keithは冒頭の言葉通り、舞台に誰かをあげたらKeith自身、全ての責任を本当に負ってやっている。この安心感があるから参加者は舞台で大きくリスクを取れる。こうやって発想力、展開力、演技力を学んでいき、シーンをinterestingに進めていくためにはどうしたら良いか学んでいく。「何というCreativeで斬新な学びの場なんだ!」と鳥肌が立ちました。
Keith曰く:
舞台の上で失敗してもハッピーでいなさい。「あー、やってしまった。最悪」というPunished faceが全てを台無しにしてしまう。失敗してハッピーでいれば、the audience will like you. インプロバイザー(即興の舞台に立つ人)は常にgood nature(ポジティブ)でいなさい。
と。そして、
Succeed and you learn nothing. The only time you learn is when you fail. 安全策をとらず、大きくチャレンジしなさい。失敗は全て私のせいだから。。。
と。失敗自体が自分を含め、周りをHappyにさせる。そうしながら学べるよう設計されているこの即興芝居という不思議なジャンル。今後のセミナーやワークショップを設計する際の大きなヒントになりそうです。
※ 写真は一緒にワークショップに参加したShuji Matsuzawaさんが撮ったもので、許可なく使用させていただいています(笑)。
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