人は何故変われないのか

人は何故変われないのか


monkey_banana.jpg外部環境は大きく変化しているのにどうして人間は変われないのか。”Thinkertoys: a handbook of creative-thinking techniques (Michael Michalko著)”に「なるほど!」と思う、ストーリーを発見。これはある科学者が行った5匹の猿を使った実験です。

5匹の猿をある檻に閉じ込め、天井にバナナを吊るすとともに、その下に階段を設置します。するとすぐに一匹の猿がバナナに気づき、階段に向かって走り出す。しかし階段を上ろうとした瞬間に科学者はその猿に氷水を浴びせる。非情にもバナナを取ろうとした猿のみならず、残りの猿達にも氷水を浴びせます。

当然別の猿も挑戦します。しかし同様にその猿も仲間達も氷水をかけられる。何度かこれが繰り返されるうちに猿たちはバナナを諦めます。実験はここから面白くなります。

科学者はまず猿を一匹入れ替えます。新入部員は当然バナナに向かって走り出します。すると、(興味深いことに)他の四匹の猿が新しい仲間を捕まえ、殴りかかります。新入部員は氷水については全く知りませんが、メッセージだけはしっかりと享受します。「バナナを取りに階段は上ってはならぬ」と。

科学者はその後2匹目の猿を入れ替えます。すると二匹目の新しい猿も同じようにバナナに向かって走り出し、仲間に殴られ、同じようにメッセージを享受する。科学者は同様に三匹目、四匹目と入れ替え、ついに唯一氷水を浴びた経験を持つ最後の猿を入れ替えます。これで氷水を実際に浴びた、バナナを取りにいき直接罰せられた猿は全ていなくなりました。しかし、最後に入れ替わった5匹目の猿が同じようにバナナを取りに階段を上ろうとした途端、残りの四匹の猿達は新入りを捕まえ、同じように殴り、やめさせたそうです。

A Whack on the Side of the Head“の著者でCreativity研究で有名なRoger von Oech氏によると、外部環境が変化しても人間は変われないか要因として

  1. 我々は何かその時の世の中の流れ、常識に応じてルールを作る
  2. そしてそのルールを守る
  3. 時がたち、当初ルールを作った前提条件が変わっていく
  4. しかしルールだけが残り、我々はそれを守り続ける

世界ではいま大きなパラダイムシフトが起きています。自分は実験の猿になっていないか。常に自問自答していないとあっという間に時代に取り残されていかれてしまいそうで、恐怖すら感じてしまいます。

参考記事:
時代の変化に気づこう!
日本人のグローバル化を阻む3大マインドセット


Posted by Masafumi Otsuka

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comments

    May 06
    2010

    宗像 淳

    Seth GordinのLinchpinにあった爬虫類脳の話を連想しました。
    1 個人レベルで爬虫類脳の働きにより、リスクに過剰に敏感になっている。
    2 集団レベルでも同質化・保守化のピアプレッシャーが働く。
    という事ですよね。
    、人間社会がこれだけ豊かになって、生命の危険がなくなってきたのは、ここ100年~200年の事ですから、人間の脳や習慣もまだまだ追いついていないという事なんだと感じます。
    意識して新しい事に挑戦していく事が必要なんでしょうね。

    Reply
    May 06
    2010

    Masafumi Otsuka

    グローバル人材の育成に携わっていると、サービス提供者(英会話や企業研修などの提供側)も受ける側(実際の企業)もこの”The Monkey Trap(猿の罠)”にハマって入るように見えてならない。
    主戦市場が欧米から新興国に変わった中で英語という国際化された言語でのコミュニケーション。コミュニケーションの定義(取り方)が一気に変わったように私は見えます。
    これについては次回書きたいと思います。ちょっと関係ないかもしれませんが、Linchpinの話でSteve Jobsがいった”Innovation is usually the result of connections of past experience. But if you have the same experiences as everybody else, you’re unlikely to look in a different direction”を何故か思い出しました(笑)。

    Reply
    May 07
    2010

    早津俊秀

    大塚さん。こんにちは。
    これってアーキテクトとしての思考で考えると当たり前なんですよ。
    基本的に物事というのは「イベント」で駆動されるか、「定時処理」で駆動されるかのどちらかしかないのです。
    このお猿さんたちは「バナナをつるされた」「氷水を掛けられた」「仲間に殴られた」といったイベント駆動によって物事を学習していっているわけです。最後のお猿さんは「氷水」を知らなくても「仲間に殴られた」というイベントを学習しているのです。
    じゃあ、変わるためにどうするか?
    「新しいイベントを受信する」or「自らイベントを起こす」ですね。
    世界で起こっているパラダイムシフトをセンス良く受信し、自らイベントを起こすということが大切なのですね。
    お猿さんにも状況が変わったことをイベントとして通知するところまで実験してあげてほしかったな。

    Reply
    May 07
    2010

    nao

    がっくりするぐらい恐ろしい話。会社組織において、その会社のカルチャーというか人を覆っている雰囲気をつぶすには一気に30%の人間を変えるしかないそうです。猿さんの実験も30%投入してたら違っていたかもしれません。組織を変えるのはいかに大変か、いやあるいは不可能に近いのか・・・。

    Reply
    May 07
    2010

    Masafumi Otsuka

    面白い!確かにそうですね。殴られるという明確な理由がある限りは仰るとおり変われません。「そもそもどうして殴られなければならないのか(ここは早津さんの専門分野ですね・笑)」考える能力がお猿さんたちにあるかどうかは置いておいて、お猿さんたちに何らかの形で「状況が変わったよ」って(どうやってやるかは想像がつきませんが)伝えるところまで実験して欲しかったですね。でも考えれば考えるほどこの実験は深い。
    自分が猿で状況が変わったと知ったとして(まずはここが重要)、それを周りにどう知らせるか。知らせても信じてもらえなければ意味がありません。ここはCommunicationですね。一人一人説得して抱きこんでいくのか。プレゼンで一気に聴衆をInspireするのか。Inspireしても行動に移してもらえなければ意味がありません(ありがちなパターン・笑)。
    4匹に対してではなく300匹だったらどうするか。または殴られずにバナナを取るCreativeな方法を考えるというのも手かもしれませんね。一気に状況が変わったよと見せることが出来ますので。。。
    ただいくら頭では理解できても昔のやり方を変えたくない、変えられないという人がリアルの世界には多い。
    改めて考えると、いろいろなメッセージを発している実験ですね。

    Reply
    May 07
    2010

    Masafumi Otsuka

    3割ですか。でも日産の例を見ても今回のギリシャの例を見ても、本当に「ヤバイ」状況に追い込まれるまで人は変われないんですね。自分の過去を振り返っても思い当たることがいくつもあります。日本の財政状況もギリシャまでいかないと改善はしないものと、Naoさんのコメントを読んでいて感じました。

    Reply
    May 14
    2010

    cafe emporio

    こんばんは。そういえば、大塚さんが一番嫌いな食べ物、バナナでしたよね!?
    もし、大塚さんみたいにバナナを見るのも嫌なお猿さんがこの中に混じっていて、違う意味で仲間を殴っていたら。。って考えると面白いです!
    大塚さんがお猿さんだったら当然殴ってますもんね?(笑)

    Reply
    May 15
    2010

    Masafumi Otsuka

    うっ。痛いところを突かれてしまった(笑)。仰る通り、私は超がつくほどのバナナ嫌い。8歳頃までは猿以上に食べまくっていたらしいが、涙なしでは語れないある事件をきっかけに大嫌いになってしまいました。確かに私が檻の中にいたら絶対に殴ったでしょうね。階段には近づかせません。あの匂いすら許せないわけですから(笑)。。。

    Reply
    May 18
    2010

    makino

    遅くなってしまったけど・・・すごく興味深い話でした。ありがとう。
    私は途上国の農村や日本の過疎の村の社会調査研究をやっているのですが、全く同じ問題だな~と思いました。農村では長い時間をかけてコミュニティにとって適切なルールが作られてきたのだけど、グローバル化や過疎化などコミュニティの内部・外部環境が急速に変化したのにルールは同じというところに大きな問題があると感じてきました。
    じゃ、どうやってそのルールを変えていくのかということだと思うのだけど、内部にいる人だけでは非常に難しいし、ルールを破ってくれるbraveな猿の登場を待つのも時間がかかる(過疎化の村だとその前に村がなくなっちゃうかも!)。我々の研究では、外部の人間がその役割をうまく果たすことができるのではないか?と考えていて、過疎の村に日本の大学生を、途上国の農村に私たちのような研究者を入れて、住民と一緒にワークショップをしながら、問題認識や新しい発見に気づくことを起爆剤にしようとしています。
    じいちゃんも起爆剤なのね、期待してます!

    Reply
    May 18
    2010

    Masafumi Otsuka

    makinoさん、すんごい久しぶりですね!Facebookの写真の正体、ようやく分かりました。とても意義のある研究されているのですね。日本の過疎の農村の問題は根深そうですね。そうやってHands onで研究されているのには頭が下がります。最近読んだ本でSwitch(Chip & Dan Heath著)という本があります。この本はどうやってお猿さんのような状況の中、Changeを起こしていくかについて様々な面白い例を用いて解説しています。まだ翻訳されていませんが興味があったら是非読んでください。
    そういった住民とのワークショップの話、ブログとかで書いていませんか?なかったら絶対に書くべきだと思います。少なくても私はすごく興味があります。じいちゃん(私の中学の頃のあだ名・しわが多いということでついたらしい・笑)、起爆剤として頑張りますよ!makinoさんも頑張って!

    Reply
    May 22
    2010

    makino

    本の紹介感謝。おもしろそうなので、さっそくみてみようと思います。変化とか、インセンティブ、モチベーションなどは、農村開発でも重要なのにあまりうまく活用されていないのが現実で、勉強しなくてはと思っていたところです。
    そうか、ワークショップの話とかブログにすればいいのか。私にはブログネタがないわ~と思っていたので、これからやってみようと思いました。

    Reply
    May 26
    2010

    Masafumi Otsuka

    ブログ、絶対にやるべきです!私も昨年7月にはじめましたが、ブログを通じていろいろな人と繋がり、いろいろなことを教わり、本当にやって良かったと思います。常にアンテナを張っていないと次の記事がかけないため、普段の生活の中でも大きな気づきがいろいろとみえてきます。毎回大変ですけど、it’s totally worth it!

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