ブレストではなくクエスト(Question-storming)とは?

ブレストではなくクエスト(Question-storming)とは?


question storming前回記事「アイディアを出すのではなく、引き出すスキル」の続きです。ある程度英語でDiscussionが出来るようになると、コメント/アイディアは出せるようになるが、余程Creativeな人でない限り、常にアイディアは出て来ない。

特に難しい、よりCreativeな解決法が求められるミーティングで貢献していくには、人からアイディアを引き出すような質問が出来るスキルが求められます。では、どうやってこうしたスキルを開発するのか。

色々と調べると、ちょっと試してみたいと思わせるトレーニング方法を探しました。QFT (Question Formation Teaching)という手法で、実際にやってみた私の感覚で説明すると、 ブレストの質問版、Question-Storming、略してクエスト(←私が勝手に命名・何だか冒険っぽくていい感じ・笑)に近い。

ブレストは一つの問題に対し、可能な限りアイディアを出していく手法なのに対し、クエストは一つのアイディアに対し、可能な限り質問を出していく手法。方法は以下のとおり。

STEP 1: 一つのアイディアを提示し、可能な限り質問を出してもらう
1グループ3-4名に分け、一つのアイディアを与え、10分間で可能な限り質問を出してもらう。例えば製薬会社で新規ビジネスアイディアを出そうとする。そこで、一つのアイディアdrug consuming experience(薬を摂取する体験)を提示する。

アイディアが決まったら、グループ別に分ける前に、守ってもらうルールを説明:

  1. 可能な限り質問を出すこと。
  2. 出た質問をDiscussしたり、良し悪しを判断したり、答えようとしないこと。とにかく質問を出し続ける。立ち止まってはダメ。
  3. 質問は一切直さず、一文字一句正確に記録に残すこと(板書係をアサインする)。
  4. 質問ではなく、文章(Statement)が出てきたらそれを必ず質問に直させること。

ブレスト同様、とにかく質より量。質を考え出すと質問が出てこない。良し悪しを判断されたりすると質問を出すのを躊躇してしまう。議論を始めようとすると質問を出すプロセスが止まってしまう。”Good question!”なんて言っては絶対ダメ。これ、思いの外実際にやってみると難しい。

出てきた質問は正確に記録に残すというルールは意外でした。ただブレストはアイディアですので一言二言の板書で済むが、質問は少し長い。「こういうことをいいたいの?」とちょっとでもmake senseしようとして言葉を直そうとすると、微妙なエッセンスが変わってしまう。変わってしまうと出した人の質問ではなくなってしまう。

こうして質問を出して行ってもらいます。20個出すようにとかはプレッシャーをかけない。はじめる前に例も出さない。数は少なくても必ず本人たちに考えさせて出させるのが大切らしい。

STEP 2: Closed- and open-ended questionのコンセプトを紹介する
Closed-ended questionとは答えがYesかNoか一言で答えられるもの。Open-ended questionはそれ以上の説明が求められるもの。

各グループ、自ら出した質問を一つずつ精査してもらい、それがClosed-endedかOpen-endedか判断し、印をつけてもらう。終わった後にClosed-ended questionの長所と短所、続けてOpen-ended questionの長所、短所について議論する。自分たちの作った質問が例として目の前にあるので意外と議論しやすい。

私は常に「Open-ended questionを出して欲しい!」といってきたので、これをはじめてやった時、でてきた、Closed-ended questionのメリットをみて、とても新鮮に感じました。

一度それぞれメリットとデメリットを議論した後に、各グループ自ら出した質問の中から一つか二つ、Closed-ended questionをOpen-ended questionに、Open-ended questionをClosed ended questionに変えてもらう。

ここで意外なことがわかる。質問のちょっとしたwordingを変えると、引き出される答えが微妙に変わってくること。そして、closed-ended questionをopen-ended questionに変える方が簡単なので、逆にもっとopen-ended questionをグループとして出したかったらあえて出す必要のないようなclosed-ended questionを出す大切さに気づく。

STEP 3: 出た質問に優先順位をつける
新たにopen-ended, close-endedで追記した質問を含め、また同じグループで、出た質問の優先順をつけてもらいます。解決したい問題(これはこちらで指定する)を最も手助けするようなTOP 3の質問を選んでもらう。時間は10分。ルールは以下の通り。

  1. まず自ら全て質問をもう一度読んでみてどれが良さそうか選び、どれが一番promisingか議論をする。その過程で新しい質問が出てきたら追記しても構わない。
  2. 必ず3つに合意すること。話し合いでも、投票でも、合意方法はなんでも良い。
  3. 何故この3つなのか、ちゃんと理由を話し合い、選んだ3つの質問と共にその理由をみんなの前で発表できるようにしておくこと

この合意プロセスをみていると非常に面白い。どうやって3つ選ぶか、さらに色々な質問が出てきたり、絞り込む過程で、2−3の組み合わせて新しい質問が出てきたりする。そして、この質問を通じて何を解決したいのかを想定して選ぶので、3つの質問にストーリー性を持たせないといけない。また3つの質問の中でも、プレゼンする際、どれを一番初めに持ってくるか、色々と質問が出てきては議論をする。

STEP 4: Reflection(振り返り)
最後に実際に解決したい問題をその3つの質問を使って、Discussionしてもらう。そして、クエストをやらずに直接Discussionをしたのと(これをまず体験させる)、クエストをやった後にDiscussionするのと、どちらの方がやりやすいか。その理由とともに全員でReflectionをしてみる。

このReflection、人によって学びが違うと思いますが、私が見ている限り、STEP 3の優先順位をつけるプロセスの大切さ、ここが鍵になるように思えます。というのもこの後に実際にその3つの質問を使って、実際の問題解決のDiscussionをしてもらうのですが、3つの質問の設計が良くないと面白い解決案が出てこない。

この気づきが大きな学びになる。すると、もう一回このクエストをはじめからやってもらうと、その後の議論のことを考えながらやるので、この優先順位をつけるプロセスでより深い質問を選んでくるようになる。

実際にやってみた感想
まだ2回しか試していませんが、私のイメージではまずクエストをやり、次にその質問に沿ってブレストをさせた後に、Discussionをさせると、クエストで質問スキルが身につくので、ブレスト中も相手から発想を引き出す質問を出来るようになるので、もっとアイディアが出てきやすくなる。またDiscussion中にも質問を意識して出来るようになるのではないかと、この手法ひそかに期待しています。

ちょうど先週から始まった8週間のGlobal Discussion Courseにはこのクエストを入れていき、「答えの全く思いつかない問題に対し、人からアイディアを引き出したり、議論を前進させるための質問」するスキルを意識的に開発していきたいと思います。ちょっと楽しみが増えました。

Make Just One Changeたった一つを変えるだけ尚、QFT (Question Forming Technique)の詳しい手法に興味のある方は“たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」”(原書:Make Just One Change: Teach Students to Ask Their Own Questions)に詳しく書いてありますので是非お読みください。またはこちらのウェブサイトにも書いてあります。

あっ、この記事、「Creativeな発想を引き出す方法 #5」にします。1回で終わってしまう連載モノ(←連載になっていない)が多い中、5回続くとは奇跡です(笑)。

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Posted by Masafumi Otsuka

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